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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第六話 過去との遭遇
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第六話 9 横槍の予兆

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


 銀山で救援活動が行われている時、第一護衛艦隊は艦隊を停止させ、増援の(けが)れに備えていた。


「艦長。総旗艦希望から通信が入っています。」


「む。変わるかの。繋いでくれ。」


 戦闘中の通信。戦闘中に通信を入れるとは、面倒な事が起きたのか。浅間中佐はそう考えながら通信に出る。


靖國(やすくに)大佐か。今戦闘中じゃぞ。」


「すまないな。だがこちらで面倒な現象を観測した。たった今、泊地島(はくちとう)の方角から、強力な思念波が穢れに対して送信された。」


 浅間中佐は予感が当たった事に眉をひそめる。


「そして現在でも観測しているが、穢れは巨大な塊になっている。数は三つだ。注意してくれ。」


「行方不明だった泊地島の穢れ。それで間違いないかの。さて、巨大な穢れの塊。この間の巨大艦みたいのが出てくるかの。」


 先日遭遇した、不気味な巨大艦。艦隊規模の穢れを宿し、軍医に対して明確な悪意を示す存在だ。


「その可能性がある。戦力比だとそちらに分があるが、十分に気をつけてくれ。」


「了解した。何かあったら、また連絡するのじゃぞ。」


 通信を切ると、浅間中佐は顎髭をいじる。数秒思案した後、通信士に師事を送る。


「通信士。銀山に連絡。救助作業を急がせるようにとな。それと一七代との通信を繋げてくれ。」


「了解。」


 そう言うと浅間中佐は、精神的な疲れをほぐすように首を鳴らした。



◇◇◇



「ペプーリア様。浅間中佐から通信が入っています。」


 総員退艦の作業の中、重傷者の応急処置をしている軍医に思考無線が入る。


「もへ。わかったよ。繋げて。」


 軍医は内心忙しいのにと思いながら、通信に出る。現在も重傷者に傷薬を塗っている。


「一七代じゃな。面倒な事が起きたぞ。」


「どちたの。そう言えば穢れのおかわりがまだだったね。そっち方面の話かにゃ。」


 軍医は重傷者に手早く包帯を巻きながら、特に深く考えるわけでもなく、たった今思い出したことを口にする。


「察しが良いの。たった今、泊地島の思念波が穢れに向けられた。穢れは巨大な塊になっておるようじゃ。数は三つじゃ。」


 軍医は軽くため息をつく。ちょうど応急措置を終えたところだ。


「やっぱり泊地島絡みねぇ。僕目当てかにゃ。ここに居るとまずいねぇ。」


 一見すると、先ほどから軍医は独り言を言っている。はたから見て理解できていない同胞に対して、靖國上級大尉は邪魔しないように言う。


「そうじゃ。今からでも戦艦崎の岬(さきのみさき)に来るかの。戦艦の中なら安全じゃぞ。」


「うんにゃ。多分それよりもいいのがあるよ。」


 軍医は対話をしながら、水面の上に戦闘機を召喚する。戦闘機は水面すれすれに浮遊する。不思議な事に直下の水面は、波一つ立てていない。


「ボクは釣り具の疑似餌だよ。ちょうど対艦誘導弾をケチっていたからね。ちょっと叩き込んでくるよ。」


 そう返答すると、戦闘機の翼に飛び移る。翼を伝って駆け足に操縦席に移る。


「一七代。穢れを引き付けるだけで良いぞ。こちらの艦砲射撃で、一気に蹴散らす。」


「分かったよ。一撃離脱でずらかるよ。そういう事だから、通信を切るよ。」


「一七代。くれぐれも無理をするでないぞ。」


 軍医は戦闘機の高度を上げる。次第にエンジンの音が大きくなり、何もないハードポイントに対艦誘導弾が装填される。四発の対艦誘導弾が装填されたその姿に、同胞達は歓声を上げる。


「どこからともなく、魚雷が出てきたぞ。」


「あの攻撃機は魚雷を四発も積めるのか。」


「けどあの魚雷、金色の翼が付いているぞ。本当に魚雷なのか。」


 魚雷と言う表現に、靖國上級大尉は妙に納得していた。空飛ぶ誘導弾を知らなければ、魚雷と表現するのが一番しっくりくる。


「あの魚雷、空を飛んで目標にぶつかって爆発するぞ。」


「え。」


 靖國上級大尉の話を聞いていた同胞が、驚いた表情で靖國上級大尉を見る。その表情を見て、良い反応をすると靖國上級大尉は思った。


「上級大尉。後の事を任せたよ。」


「穢れの規模は大きい。無理をするんじゃないぞ。」


 そう言うと戦闘機は急発進をする。当然、靖國上級大尉の声は聞こえていない。強い推進力は強風となって、艦上の同胞の間を強く吹いて行った。


 軍医の戦闘機が立ち去る。靖國上級大尉は、軍医を見送る同胞達をみて声を張り上げる。


「ペプーリア殿は新たな穢れに向かっていった。我々も総員退艦を急ぐぞ。」


「はい。」


 靖國上級大尉は、重傷者を担架に乗せて、担架に術を行使する。担架はまるで透明人間が担ぐように浮かび上がり、靖國上級大尉の横に付き従った。





 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は穢れに対して、軍医が戦端を開きます。


 それではまたお会いしましょう。

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