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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第六話 過去との遭遇
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第六話 8 軍医の実力と威厳

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


 一方軍医は、(けが)れた艦隊に向かって飛んでいる。


「空対地誘導爆弾装填(そうてん)。弾種、穢れ払いの曳光弾(えいこうだん)。」


 軍医がそうつぶやくと、戦闘機のハードポイントに、虚空から現れた一八発の爆弾が装填される。


 軍医の操縦する戦闘機は音速の速さで、敵艦隊に対して弧を描く。そして敵艦側面から高度を上げて突っ込んでいく。


 敵艦隊には直掩機(ちょくえんき)は無く、がら空きの状態だ。航空機に対して全く警戒していない証拠だ。


 直掩機の無い中、敵艦が対空攻撃を開始する。しかしその黒い破壊光線は、戦闘機の快速を補足できず、虚空を貫くばかりだ。


 軍医はすれ違いざまに、爆弾を投下する。その数一二個。投下されば爆弾は、戦闘機からえた慣性を利用して、自身で目標に誘導する。


 結果、誘導爆弾は全弾、敵空母甲板に命中した。空母は青白い炎が立ち上り、徐々に全身に広がっていく。


 戦闘機は身をひるがえして、再び敵艦に向かう。今度は海面すれすれだ。


 音速に近い速度で、敵艦の破壊光線をかいくぐる。海面すれすれ飛来する戦闘機を、敵の艦砲射撃はまったく捉えていない。


 今度はすれ違いざまに三発の誘導爆弾を投下。これも全弾敵艦側面に命中する。胴体中央部が青白い炎に包まれる艦を飛び越して、軍医は高度を急激に上げ宙返りをする。


 今度は上空からもう一隻の駆逐艦めがけて急降下爆撃を敢行する。残りの三発の爆弾を投下。戦闘機は機首を思いっきり上げて、海面すれすれを飛ぶ。爆弾のうち一発は艦橋付近に着弾する。艦橋は爆撃により吹き飛び、残りの二発も甲板に命中する。


 一八発の誘導爆弾を全弾命中。無論、無論これは軍医の技術だけでなく、一六代ペプーリアの戦闘機の加護のおかげでもある。その証拠に、敵弾は全く当たっていない。


 軍医は旋回して戦果を確認する。


 空母は艦上部が燃え上がり、飛行甲板は崩れている。なお炎の勢いは止まらず、火は艦全体に回っている。


 駆逐艦の一隻は、艦中央部で二つ割れている。穢れ払いの炎が艦全体を焼くのに時間はかからないだろう。


 もう一隻の駆逐艦も、艦の前半分が炎に包まれている。残り半分にも徐々に火の手が回っている。


「もへへ。こちらペプーリア。敵艦隊の戦力を無力化したよ。これより銀山に向かうよ。」


 そう言うと軍医は戦場を後にする。穢れを浄化する青白い炎は、さらに勢いを増していた。



◇◇◇



 靖國(やすくに)上級大尉は一人だけ早送りで動いている。“二回行動の秘術(ひじゅつ)”を行使したためだ。


 他の者が甲板に上がってきた亡者を相手にしている中、百人力の働きを見せる。


 穢れた大蛸(おおたこ)が水面に顔を出すと、五二口径拳銃弾を数発叩きこみ黙らせる。“炎の壁”の術を行使して、炎の壁を亡者の乗った内火艇(ないかてい)に飛ばす。青白い穢れを祓う炎の壁が、亡者たちの乗った内火艇に混乱をもたらす。近づいてきた落ち武者には、穢れ払いの炎の一撃で灰塵にする。数人がかりで対峙する牛鬼に対し加勢し、強力な(まさかり)の一撃を加える。


 当然、艦の乗員も負けてはいない。


 三八式小銃で大鷲(おおわし)を打ち落とす。たった一台の連装機銃は、一糸乱れぬ連携を見せ、穢れたレシプロ機を確実に落としていく。


 乗員の戦闘能力も捨てた物では無く、亡者に刀の斬撃を加え、確実に数を減らしている。


 そうこうしているうちに、戦局は黄泉軍側に大きく傾き、穢れ達は問題無く駆除された。



◇◇◇



 吾輩(わがはい)は穢れを殲滅(せんめつ)した事を確認すると、強面の男が近づいてくる。階級章を見ると曹長だ。顔に酷い切り傷が入っていて、傷が重い事を示している。


「大尉殿・・・でしょうか。救援感謝します。」


 強面の男は一瞬言葉が詰まった。吾輩は上級大尉だが、この階級は泊地島特有の物だ。見慣れない階級に戸惑ったのだろう。


「まあ、大尉でも構わない。ところで乗員の状態はどうだ。」


 そう言いながら、吾輩は“傷治し”の術を行使する。額の出血は止まり、傷がいくらか軽くなる。


 基本的に“傷治し”の術はあまりあてにはならない。漫画やゲームのように怪我を治すことはできない。もっぱら応急処置に使われる術だ。


「ありがとうございます。詳しくは分かりませんが、かなりひどいです。」


 そんなやり取りをしていると、ジェット機特有の轟音が近づいてくる。この状況でジェット機と言えば一つしかない。軍医殿が戻ってきたのだろう。


「もへへ。そっちも終わったみたいだねぇ。」


 ジェット機は友軍艦の上空で並走する。次の瞬間、煙が四散するように戦闘機が消える。そして搭乗していた軍医殿は、自由落下で甲板に着地する。医療箱と薬箱を片手ずつに持っている。何時の間に取り出したのだろうか。


 吾輩は曹長の傷を確認しようと見ると、曹長は目を見開き、顎が外れんばかりに開いている。軍医殿を見て驚いているようだ。


「少佐殿は、ペ、ペプーリア様ですか。」


 曹長は驚く中、かろうじて声を絞り出す。


 吾輩はペプーリアという言葉を聞いて、ようやく納得した。


「そうだよ。ボクが一七代ペプーリアだよ。」


 そう言うと軍医殿は意味不明…としか形容できない姿勢をとる。倒れそうと言えば良いのだろうか。


 そんな軍医を見た曹長は、直立不動で敬礼をする。はたから見て明らかに体が硬直している。周りにいた連中も、曹長と同じように敬礼する。


 黄泉軍の象徴のペプーリアが目の前にいる。教養のある黄泉軍なら、ペプーリアの存在は神聖な存在だ。


「ペプーリアのボクが、チミ達の救援に来たよ。総員退艦を急がせたまえ。」


「りょ、了解しました。みんな。ペプーリア様が来られたぞ。総員退艦準備だ。」


 曹長は一目散にその場から離れる。軍医殿言った通り、皆に知らせて回る。


「さてと、上級大尉。そう言う事だから、重傷者の応急処置、手伝ってね。」


 そう言うと軍医殿は俊足(しゅんそく)で走り、手近な重傷者の応急処置を始める。


「了解した。ちょうど銀山も到着したようだな。」


 吾輩は遠くに見える銀山を確認する。戦闘に夢中になっていたが、かなり近くまで来ていたようだ。


 銀山に搭載されている内火艇が、ふわりと浮かび上がる。黄金石炭鋼(おうごんせきたんこう)でできているため、斥力で浮かぶことができる。


 艦の乗員はそれを見て、驚きを隠せないでいる。黄金石炭鋼を知らなければ、まさか船が空を飛ぶとは思わないだろう。


 宙に浮かぶ内火艇。ペプーリアの来訪。友軍艦の乗員にとって、驚きの連続だったようだ。




 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は穢れのお代わりが、そろそろ参戦しそうな話です。


 それではまたお会いしましょう。

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