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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第六話 過去との遭遇
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第六話 6 福座型戦闘機の中

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。

「まったく。突然の救援活動か。予想が外れて混乱しそうになったぞ。」


 吾輩(わがはい)は加速が続く後部座席で、思わず愚痴をこぼす。


「もへ。上級大尉。予想外の事が起こると、思考が停止するのかにゃ。チミには一歩引いた視点が必要かもしれないねぇ。」


「参考にしよう。」

 吾輩は痛いところを突かれた気がして、あまり良い気分ではない。しかし、軍医殿の意見も一理あるため、その点では納得せざるをえなかった。


「そんな上級大尉に状況整理。現在の状況をすり合わせようね。到着まで少しあるからね。」


 現状を整理した方が、次の活動にも支障が少ない。どうせ友軍艦と接触するまで、やる事が無い。


「その様子だと、今も情報が入っているのか。」


「そ。友軍の現状も分かってきたね。」


 それはありがたい。必要最低限の情報だけで、戦闘指揮所を飛び出して来た。この判断は軽率だったかもしれない。


「そうだな。最初は友軍艦艇だ。燃料が残りわずかだな。」


「そうだね。現状、穢れに追われながら応戦中だね。白兵戦も始まっているみたいだねぇ。」


 穢れとの白兵戦が始まっているのか。そこに吾輩達が先行して救援に行く。吾輩はともかく、軍医殿の戦闘機の参戦は時間稼ぎになるだろう。


「あ、そうそう。穢れだけどね、チミ達の知っている物とは少し違うかもね。」


「どういう事だ。」


 軍医殿の引っかかる言い方。何か厄介事でなければ良いが。


「穢れの形がね、古いんだよねぇ。レシプロ機や死霊の乗った内火艇。それと海坊主や牛鬼、大鷲や大蛸(おおたこ)なども確認されているね。その一方で、流行のロボットや魔法少女の類は一切ないね。」


 最近の穢れは、魔法少女や人型ロボットなどが含まれる。中津国の人間の流行と聞いている。それらが一切ないのは、言われてみれば確かに奇妙だ。


「それとこの閉じた世界。時空の歪みによって、極端に時間の流れが遅かったみたいだね。だとすると、過去に遭遇する可能性もあるね。」


「浅間中佐はそう判断しているようだな。」


 そうでなければ、即座に救援活動には移らない。生命力観測で生存者ありと判断した。いまだに信じられないが、今は命令に従うだけだ。


「あ、たった今情報が更新されたね。友軍艦の後方に、穢れた空母を確認したみたいだね。空母一隻と駆逐艦二隻。この規模なら、僕だけでも十分だろうね。」


 おそらく対艦ミサイルで一撃なのだろう。第一六代ペプーリアの戦闘機は本当に頼もしい存在だ。


 吾輩がそんな事を思っていると加速が終わり、徐々に減速していく。目的地に近づいてきたのだろう。


「上級大尉。そろそろ到着するね。チミには下りてもらうけど、その前にちょっと援護射撃をするね。上級大尉は艦外知覚装置で、周りの状況を観測してね。」


「分かった。」


 吾輩は精神集中して艦外知覚装置を使用する。“飛翔”の術よりもはるかに早く、空を飛んでいる事が分かる。


 前方には友軍艦らしき駆逐艦と、数隻の内火艇が高速で駆逐艦に急接近している。


 次の瞬間両翼から十数発の小型噴進弾が発射される。穢れ払い弾掃射装置のロケット弾だろう。


 無誘導弾は器用にも内火艇に数発ずつ飛来する。気のせいか無誘導のはずの噴進弾が、僅かに軌道修正しているようにも見えた。


 小型噴進弾は全弾内火艇に命中する。内火艇は穢れを浄化する炎が、激しく燃え上がる。よく見ると死霊の兵は、内火艇から離脱して水面飛び込む。溺れている様子は無いが、これでは友軍艦に追いつく事はできないだろう。


 続けて減速しながら機首を上げる。僅かに機体が上昇すると、機首に取り付けられた機銃が火を噴く。


 吾輩が前方を確認すると、穢れたレシプロ機が火を噴いて墜落してく。よく見ると翼に、米軍機を表す星印が付いている。一瞬目を離した合間に、レシプロ機を撃墜したようだ。


 そしてさらに減速しながら、友軍艦の上空を旋回する。


 さらに減速すると、青白い破壊光線が一本、曲線を描きながら友軍艦に向かう。破壊光線は穢れ払いの炎で、友軍の甲板上に居た牛鬼を灰に変える。


 吾輩は甲板上の人影を見る。見たところ服は時代が古い。大東亜戦線時の物だろう。その中にはヴィガージャ種の姿も見える。“生命探索”の術を行使するが、その反応は我々黄泉軍を示していた。


「この破壊光線。摩訶不思議装置か。」


「そうだよ。けど一回使っただけで壊れちゃった。で、どんな感じだった。」


「“生命探索”の結果は黄泉軍。友軍の可能性大だな。」


 そんな会話をしていると減速が終わり、天蓋が開く。吾輩は“飛翔”の術を行使して、後部座席から飛び出す。眼下には、先ほどまで牛鬼と対峙していた同胞らしき姿が、吾輩を驚きの表情で見上げている。


「上級大尉。ボクは敵艦隊にミサイルぶち込んだら戻るよ。それまで面倒を見てあげて。」


「了解した。」


 吾輩は返事をして戦闘機から離れる。高度を急激に下げながら、ホルスターからどの拳銃よりも一回り大きい、黄金色の拳銃を取り出す。五十二口径回転式拳銃だ。


 戦闘機は急発進をして去っていく。吾輩は死霊の一体に、五十二口径弾を叩きこむ。


 死霊は一撃で全身に青白い炎に包まれる。そしてのたうち回る暇もなく、灰陣と化し崩れ去った。


 吾輩は友軍艦の甲板にふわりと着艦すると、警戒する同胞に名乗った。


「吾輩は黄泉軍帰還艦隊、巡洋艦銀山艦長、靖國(やすくに) 曽根康(そねやす)。貴艦の援護に来た。」


 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は場面が変わり、第一護衛艦隊の浅間中佐の視点になります。


 それではまたお会いしましょう。

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