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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第六話 過去との遭遇
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第六話 1 時間の流れが違う水域

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。


 靖國(やすくに)大佐の航海日誌


 三二日目。当初の慌ただしさが嘘のように、その後の航海は順調だった。いくつかの小規模の(けが)れとの遭遇はあったが、全て浄化して今に至る。


 この間、思念妨害と穢れ除けの改装を、各艦に施した。それと輸送艦隊に装備した、艦隊規模の穢れ除けの装置。これも装備が終わり、順調に稼働している。


 泊地島(はくちとう)の件については、穢れの量が増加していた。そして二日前、穢れが著しく減少した。その穢れの行方は現在も分かっていない。


 昨日、進路上に閉じた世界を発見した。そこは時間の流れは非常に遅く、そして不安定な空間だ。観測の結果、“結界破り”の術で解除は可能のため、術で空間を正常に戻してから侵入する事にした。


 そしてその中で、過去に遭遇する事になった。



◇◇◇



「最後に問題の閉じた世界だ。このまま侵入すると、閉じた世界に囚われてしまうだろう。理由は極端に遅い時間の流れにある。」


 靖國大佐は艦長室の椅子に腰かけて、珈琲(コーヒー)片手に板型携帯端末で情報を見る。情報を見ながら物思いに老けているように見えるが、思考無線で会議を開いている。


「結論から言う。進路上の水域の件だが、観測の結果、“結界破り”の術で空間を正常化できることが判明した。迂回する航路が見つからない以上、“結界破り”の術を行使する。」


「要は侵入可能という事ですね。ですが靖國大佐。観測結果では、微弱な信号と穢れの反応がありました。規模は二個師団。密度は薄いため、以前のような巨大艦の可能性はありません。しかし規模が規模のため、護衛艦隊を派遣する必要があります。」


 諏訪中佐は紅茶を一口(すす)る。この男は何時も紅茶を啜っているのかと、靖國大佐は腹の底でつぶやいた。


「おまけに、閉じた世界の奥の回廊にも穢れの反応があるぜ。こっちの規模は六個師団。増援の事も視野に入れておいた方が良いぜ。それにこの量、泊地島から消失した穢れの量と、一致しているぜ。」


 八坂中佐はカロリーバーを(かじ)る。以前、常に頭が回転しているため、糖分を消費すると言いながら板チョコレートを齧る。そんな姿を靖國大佐は目撃していた。


「泊地島の穢れの可能性もあるかの。それなら今回は、儂の艦隊で行くかの。その規模なら儂の艦隊の出番じゃの。」


 浅間中佐は急須(きゅうす)を持ちながら答える。そのお茶の中には茶柱が立っていた。


 第一護衛艦隊。最新鋭の試験戦艦『(さき)(みさき)』を旗艦として、他に戦艦一、巡洋艦四からなる、帰還艦隊最大の打撃艦隊である。


 この艦隊を重要な局面で投入する事が、以前から決まっていた。今回、増援込みで八個師団の穢れに直面して、初めての実戦投入を提案した。


「爺さん。観測機器や対空防御の最適化は、どうなってるんだ。」


「それはもう少しで完了じゃが、今回は間に合わんの。」


 第一護衛艦隊に限らず、巡洋艦と戦艦は希望同様、厳密な意味では完成していない。現在、対空火器と観測装置の最適化がおこなわれている。それが済んで、初めて完成されたものとなる。


「そこでじゃ。第一探査艦隊を同行させれば、探査能力とデータリンクとやらで、威力偵察もできて問題が解決じゃて。」


「ペプーリア殿達には悪いが、今回も敵観測に役に立ってもらう。」


 軍医や靖國上級大尉辺りが何か言いそうだが、当面は目を(つむ)るしかないと靖國大佐は思った。


「天の火は武装輸送艦だ。巡洋艦や戦艦の中に、一隻編入するわけにもいかない。同行させるのは銀山だけで良いだろう。」


「分かった。艦隊編成は儂の方で済ませる。ところで靖國大佐。お前さんはどうするかの。戦艦希望が参戦してくれれば、その分楽じゃがの。」


 浅間中佐の要望に、靖國大佐は首を横に振るう。


「今回は無理だな。艦の理力を総動員して“結界破り”の術を行使する。理力が無い状態だと念力防壁の発生はおろか、移動すらままならない。」


 帰還艦には理力を溜めておく装置も備え付けられている。そして攻撃、防御、移動の全てに、理力を使用する設計になっていて、理力が尽きるという事は動力が尽きるのと同義語だ。


 悪魔機関で大量の理力を発生させることはできる。しかし理力を溜めておかないと、戦闘時に支障をきたす。


「そんなに理力を消耗するのですか。ギリギリの量じゃないですか。」


「そう言う事だ。穢れに対しては、第一護衛艦隊に対処してもらう事になる。第二護衛艦隊は万が一の後詰として、司令部直営艦隊の希望と共に待機だ。輸送艦隊は後方に待機してくれ。天の火と第二、第三探査艦隊は、輸送艦隊の護衛だ。」


 各々の艦隊の方針は決まった。諏訪中佐は紅茶を一気に飲みこみ、浅間中佐はお茶を飲み終えて立ち上がる。靖國大佐は冷めた珈琲を机に置いた。


「方針は決まったな。探査艦隊の方には俺の方から連絡するぜ。靖國は“結界破り”の準備だな。」


「分かった。そうしてくれ。会議は以上だ。各々準備を進めてくれ。」


 靖國大佐がそう言うと各々は思考無線を切る。


「さてと、術は大掛かりになるな。」


 靖國大佐は虚空に向かって独り言を言った。





 まず謝罪を。前回予告していた本作投稿日ですが、こちらの勘違いで8月31日と記載してしまいました。申し訳ございません。


 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は、結界破りの術の準備です。


 それではまたお会いしましょう。

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