第五話 9 泊地島に対する当面の課題
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
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中佐以上の思考無線艦隊会議に、軍医が参加している。先の女神の件で、考えをすり合わせている最中だ。
「そうか。泊地島の意思を退けたか。」
靖國大佐は顎に手を当てて言う。
「あれから泊地島の反応はどうじゃ。」
靖國大佐を一瞥した浅間中佐は、軍医に尋ねる。
「ちょっとまって。」
軍医はそう言うと、誰かと会話をする。思考無線越しでは相手は分からないが、靖國上級大尉かもしれないと、靖國大佐は思った。
「音沙汰がないね。信号や電波の類も一切ないね。」
「艦隊の進路上にも、穢れの類は見当たりません。」
諏訪中佐は、他の探査艦隊の報告を確認する。
「とりあえず、当面の危機は去ったという事じゃねえか。」
八坂中佐が一同の意見を聞いて、総合的な判断を下す。他の佐官もうなずいて同意する。
泊地島の意思を一旦は退けた。それ以来、泊地島からの信号は途絶えている。静まり返っているが、はるか遠くの泊地島は観測できる。それはそれで不気味だった。
「八坂中佐。確か思念妨害については、改造中だな。」
「ああ。予定通り、小型艦艇の改造を行っているぜ。」
小型艦艇で動作を確認して、問題が無ければ他の艦艇も改造を行う手はずになっている。
「そうか。それと他の改造もできそうか。」
「それは物によるぜ。靖國。あまり大規模な改造はできないぜ。それに改造は時間が必要だぜ。」
八坂中佐は手に持った資料を見ながら答える。その資料には、艦隊の資材について記されている。
「もへへ。いったいどんな改造をするのかにゃ。」
軍医は横から資料をのぞき込む仕草をする。無論思考無線越しなので、八坂中佐が手に持っている物を確認することはできない。
「穢れ除けを艦に付与したい。術の増幅では無くて、常時効果のある物だ。」
「それは可能だぜ。」
八坂中佐は即答する。
「穢れ除けなら、作戦開始前に艦を清めたはずです。重ね掛けはあまり効果が無いのでは。」
諏訪中佐は即座に発言する。それに対して靖國大佐は首を横に振るう。
「泊地島の意思は、穢れを用いて我々を妨害するだろう。そうなると穢れとの連戦が予想される。艦
を清めた効果も薄くなるはずだ。」
「それなら先の穢れた巨大艦のような例もある。個艦防衛では無くて、艦隊全体を防御するものじゃ。各々の旗艦に装備するのはどうじゃろうか。」
「無茶言うな。そんな大掛かりなもん、簡単にはできねえぞ。念力防壁はあくまで個艦用だぜ。」
浅間中佐の提案に、八坂中佐は即座に反論する。それでも浅間中佐は、簡単にはひかない。
「それなら、摩訶不思議装置に組み込むことはできんかの。最低限、輸送艦隊には必要じゃろう。非戦闘員がおるからの。」
「けどよぉ。核になる部品がねえぞ。今から作ると数ヶ月必要だぜ。」
「核になる部品ならあるぞ。ちょっとまってくれ。」
二人の会話を聞いていた靖國大佐は、席を外して何やら探す。しばらくして、木の板をまとめた物を持って戻ってくる。その量は多く、物置くとどさりという音が聞こえてきた。
「穢れ払いの木簡をまとめた物がある。いざという時に取っておいたのだが、それが使えるだろう。」
木の板の束は木簡だった。木の板に呪文が書いてある。それに糸を通して、巻物のようにひとまとめにしたものだった。その太さは、ドラム缶ほどの太さがあった。
「分かった。後で現物を見せてくれ。」
八坂中佐はため息をつく。これからの面倒な作業を想像して、気疲れを起こしているようにも見えた。
「それでは確認したいのですが。」
話が纏まったのを見計らって、諏訪中佐が話に入り込む。
「泊地島の意思。正確には、その穢れに対する対応として、個艦用の穢れ除けの対策。輸送艦隊には、艦隊防御規模の穢れ除けの装置。とりあえずはそれでよいのですね。」
諏訪中佐は今までの話を簡単にまとめる。この場合、確認を取っていると言った方が正しい。
「それで問題無い。追々必要な物が追加されるかもしれないが、この話はここまでだな。さて次の議題だが・・・。」
次の議題の話に移る中、八坂中佐だけが頭を抱えていた。その表情は真剣で、目はどこか遠くを見ている。頭の中では頭脳を総動員して、課題に取り組んでいた。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は一話分お休みを頂き、8月31日の投稿になります。
次回は場面は移り、時間の流れの違う海域に遭遇します。
それではまたお会いしましょう。




