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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第五話 泊地島の意思
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第四話 8 女神は帰還を願う

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。


 八坂中佐の提案が採用され、第一護衛艦隊から二隻の祇原(しはら)型巡洋艦が派遣された。そして入れ替わりになる形で、第一探査艦隊は穢れの元から離れる。


「もへへ。こっちは配置に着いたよ。動きがあれば、何時でも急行できるよ。」


 銀山の後部甲板には、ペプーリアの力の一つ、“第十六代ペプーリアの力の戦闘機”が、いつでも離艦できる体制でいる。無論、軍医殿はその操縦席に座っている。


 靖國(やすくに)大佐の付けた条件は、(けが)れが顕在化したら、軍医を現場に派遣する。当面の間は、軍医に憎まれ役を行ってもらうという方針だ。



◇◇◇



「軍医殿。くれぐれにも高度には気をつけてくれ。」


吾輩(わがはい)は念を押すように注意を促す。理屈は分からないが、忘却の川では航空機の運用は難しい。川の高さの空間が狭く、少しでも高度が上がると、対象は忘却の彼方に消え去ってしまう。


「もへへ。もちろん気をつけるよ。超低空飛行で駆け付ける準備が整っているよ。」


 吾輩達がそんな会話をしていると、船務長から報告が入る。


「穢れに変化が発生。」


「軍医殿。穢れに変化が発生したぞ。」


 吾輩が軍医殿に声をかけるのと同時に、分霊戦闘機のノズルに火が入る。


「もへへ。動きがあったね。と、いう訳で、出撃するよ。」


 軍医殿がそう言うと、戦闘機を急発進させる。


 戦闘機は斥力を発生させ、水面すれすれを、音速の半分の速度で飛翔(ひしょう)する。そして、戦闘機を押し出した力が水面にぶつかり、激しい水しぶきを残していった。




◇◇◇




「皆さん。あなた方はペプーリアに騙されているのです。」


 女神の形をした穢れは、目の前の軍艦に必死に訴えかけている。あなた達はペプーリアに騙されていて、泊地島(はくととう)に戻る事が幸せだと。そう訴えながら、軍艦に近づいてくる。


 軍艦の主砲は、女神に標準を合わせている。しかし上層部の命令により、砲撃は行っていない。


 軍艦は女神の訴えを無視して逃げる。僅かだが女神の方が速く、その距離は徐々に狭まってくる。


 そこに超低空飛行で戦闘機が迫ってくる。軍医が乗る戦闘機だ。


「ちょっとまったぁ。」


 戦闘機は女神と軍艦の間に、水しぶきを上げて、横滑りしながら割って入る。航空力学を無視した挙動。戦闘機の皮を被ったUFO。しかしその実態は、あまり知られていない。


「もへへへへ。女神さん。わざわざご足労、ご苦労様。」


「ペプーリア。」


 女神の表情が急激に歪む。憎悪に満ちたその表情は、鬼や悪魔がふさわしいと、軍医は思った。


「表情が怖いよ。そんな事だと泊地島の住人、怖がって帰ってこないよ。」


「五月蠅い。」


 そう叫ぶと、女神は何かの構えをとる。子供向けアニメの魔法を繰り出すのだろうか。そんなものを連想させる動作だった。


「もへへ。いいのかな。今、僕を攻撃すると、後ろの艦隊が火を噴くよ。泊地島の住民が、チミに対して牙を向けるよ。」


 軍医の言葉に女神の動きが止まる。泊地島の住人が牙を向ける。この言葉に強く反応したと、軍医は一瞬で見抜いた。


「泊地島の住人は、ボクの味方だよ。」


「卑怯だぞ。我が民をたぶらかしおって。」


 女神は歯ぎしりをし、わなわなと拳を震わせる。


「別に騙していないよ。泊地島だって、数年後には住めなくなるからね。」


「嘘をつくな。」


 別に嘘じゃないよ。あくまでも可能性の話だけど。軍医は腹の中でつぶやく。


 本国の観測結果で今から三年後に、泊地島は完全に閉じた世界になる。泊地島からあらゆるものが出入りできなくなり、太陽光でさえ遮断されるかもしれないという観測結果だ。


「それに現在の泊地島は安全じゃない。」


「嘘をつくな。我が民の安全は確保されていた。」


「泊地島は穢れまみれじゃないか。」


 軍医は多数の穢れ溜まりを思い出す。帰還作戦開始半年前、多数の穢れ溜まりが発見された事件を思い出す。


 穢れ溜まりから穢れが湧き出て害をなす。それは黄泉軍にとっては常識だった。


「それに泊地島には怖い人がいるよ。」


「そんなものはいない。」


「チミだよ。現に怖い顔しているよ。」


「我だと。」


 我ながら低俗、あるいは頭の悪い会話をしているかな。軍医はそう自問自答をする。

軍医は泊地島の行動を思い出す。


 泊地島に帰ってこいと言う信号と安っぽい動画。時には穢れで実力行使。そして説得とは言えない、帰ってこいと言う願望を垂れ流す言動。


 話術も無く、説得材料も無く、ただ騙されていると訴えるしかない女神。そんな愚かな女神に、軍医は深くため息をつく。


「戯言を。我は泊地島。我の元で住民は幸せだったはずだ。ペプーリア。貴様が我が民を騙したのだ。」


 女神は叫びながら、穢れた破壊光線を戦闘機に発射する。軍医が乗る戦闘機は横滑りしてそれをかわす。


 会話は通じないね。だけど目的は達した。ペプーリアは腹の底でつぶやく。


 軍医はワザとらしく指を鳴らす。戦闘機の六ヶ所のハードポイントに、ロケット弾発射装置が召喚される。


「チミの妄想には付き合っていられないねぇ。そう言う事で、ごきげんよう。」


 ロケット弾発射装置から、一〇〇発以上のロケット弾が発射される。穢れ払いのロケット弾が女神を浄化する。女神の形をした穢れは、ロケット弾の炎に燃やされ、大きな灰に姿を変える。


「もへへ。硬い核のような穢れは無かったから、今回は穢れを全て浄化できたね。」


 軍医は灰になった穢れを見て言葉をこぼす。灰は水面に広がり、水面下に沈んで行った。


 軍医は軽く深呼吸をすると、宣言する。


「穢れの除去を確認。女神様は退治したよ。」


「了解しました。直ちに帰投してください。」


 戦闘機が機首を返して急発進する。僅かに残った灰の上澄み液は、戦闘機が発した推進力に吹き飛ばされた。


 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は当面の対策について会議します。


 それではまたお会いしましょう。

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