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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第五話 泊地島の意思
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第四話 7 穢れは付かず離れず

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。


「銀山の修復も終わって、通常運転に戻れたねぇ。」


「工作艦で修復できる損傷だったのが、不幸中の幸いだな。」


 吾輩(わがはい)は今、銀山の戦闘指揮所にいる。


 先の戦闘で損傷した艦尾も、ようやく修理が終わった。今、銀山は艦隊後方の探査に従事している。


 泊地島(はくちとう)の意思が確認されて以来、航路の後方も警戒している。泊地島自体が警戒対象になっためだ。


 同胞の中には、泊地島の存在を不気味に思っている。吾輩自身は、面倒な案件が増えたという意識が強い。

 無論、不気味さもある。だが吾輩の心情はそれには一区切りつけている。今は任務に専念する時だ。


「定時連絡の時間だ。軍医殿。連絡をお願いする。通信士。本隊との通信を繋げろ。」


「もへへ。そうだね。とは言っても、異常が無いからねぇ。異常無しと伝え…。」


「待って下さい。」


 軍医殿が異常無し、と言おうとした時、船務長から報告が入る。


(けが)れを探知しました。位置は航路後方。五〇キロメートルの距離です。」


 船務長の報告で、戦闘指揮所に緊張が走る。


「総員。第一種戦闘配備。」


 吾輩の号令で、艦内は蜂の巣を突いた様に、慌ただしくなる。


「船務長。穢れの規模を測定しろ。」


 吾輩は船務長に状況を促す中、吾輩自身も艦外知覚装置で、穢れの状況を確認する。


 夕焼け空の忘却の川の下流。はるか遠くに、赤銅色の穢れの塊が浮いている。穢れは不定形で形が定まっていないように見える。しかし遠いため、詳しくは分からない。


「穢れの規模は二個旅団です。」


 二個旅団規模か。我が第一探査艦隊だけでも、何とかなる規模だ。


「もへへ。とにかく本体に報告しないとねぇ。」


「了解しました。通信士。本隊に穢れの接近の報を入れてくれ。」


 吾輩は軍医殿を見る。軍医殿はいつの間にか飴を取り出して、それを口に入れて頬張る。


「船務長。穢れは顕在化していないのだな。」


「はい。顕在化の兆候はありません。」


 顕在化していないのであれば、除去自体は簡単だ。反撃は無いから浄化をするだけで事は足りる。だが…。


「軍医殿。穢れの殲滅に向かいますか。」


「もへへ。きな臭いねぇ。本隊と話がしたいかな。」


「了解。通信士。本隊との通信回路を開いてくれ。」




◇◇◇



「んで。この穢れ。顕在化(けんざいか)してねぇんだな。」


 八坂中佐は発生した穢れの現状を、ざっと目を通す。


「そうじゃな。現時点でも、顕在化の報告は上がってきておらんの。ついでに、相対距離も変わらんのぉ。」


 浅間中佐はそう言うと、一つため息をつく。


 現在、艦隊間の思考無線で、航路後方に発生した穢れの対処を検討している。


 軍医はこの穢れの報告を、浅間中佐にした。その理由は、経験豊かな人物に、判断を仰ぎたいと判断したからだ。


 その報告に対して浅間中佐は、距離を取って様子を見るように指示した。しかし不思議な事に穢れの塊は、つかず離れずの距離を保っていた。


「穢れの除去は行わないのですか。」


「穢れの距離はつかず離れず。かえって怪しいのぉ」


 諏訪中佐の問いに、浅間中佐は遠回しに否定する。


「つまり罠だと、浅間中佐は考えるのだな。」


 靖國(やすくに)靖國(やすくに)大佐は顎に手を当てながら、浅間中佐に問う。


「儂が思うに、問題は誰の罠かという事じゃ。もっとも思い当たるのは、現状一つしかないがの。」


「つまり泊地島が次の手を打ってきた、と言いてぇんだな。」


 浅間中佐の遠回しな表現に対し、八坂中佐が直球な表現で表す。


「ですがこのままですと事態が進展しません。かと言って、いつまでも第一探査艦隊で、にらめっこを続けるわけにもいきません。」


 諏訪中佐がそこまで言うと、しばし沈黙が訪れる。だが沈黙は、長くは続かなかった。


「ちょっと試したい事があるぜ。いったん第一探査艦隊を下がらせて、他の奴らに見張らせようぜ。」


 八坂中佐が案を提示する。現状を打破しようと、この男は何か考えたようだ。


「それなら、第二、第三探査艦隊のいずれかで行うか。」


「ちょっとった。」


 靖國大佐の意見に八坂中佐が待ったをかける。


「念には念を入れてだ。浅間中佐。第一護衛艦隊から祇原(しはら)型巡洋艦を二隻借してくれ。そっちの方が荒事になった場合、探査艦隊より防御力があるだろ。」


「お主、何を考えているのじゃ。」


 八坂中佐の提案に、浅間中佐は一瞬躊躇する。八坂中佐の意図が読めなかったからだ。


「俺が思うに、ペプーリアが居るから、状況が膠着しているんじゃねえか。なんとかそれを打破しようと思うんだが、どうだ。」


「その案だが、一つよいか。」


 今度は八坂中佐の意見に対して、靖國大佐が待ったをかける。


「その案を採用しても良い。だが事態が変化した時のために、一つだけ条件がある。」




 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は穢れが顕在化します。しかしその行動は…。


 それではまたお会いしましょう。

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