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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第一話 靖國帰還艦隊
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第一話 4 双胴戦艦の実践テスト

 当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。


この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。


「敵巡洋艦、撃沈。」


「姿形は巡洋艦だがやはり(けが)れだな。穢れ払いが有効のようだな。」


 靖國(やすくに)大佐は目を閉じて深呼吸をする。深呼吸をする間に、次の方針を瞬時に整理する。


「取り舵いっぱい。左回りで回頭しつつ、残り二隻の巡洋艦に対峙する。」


 双胴(そうどう)戦艦は、その巨体を反時計回りに旋回させる。水を力強く押し、水をかき分ける。


 双胴戦艦が回頭を終える頃。二隻の巡洋艦は合流し、単縦陣を組んでこちらに向かってくる。敵巡洋艦はこちらに全砲門を向ける。


 並行しての砲撃戦。正面での殴り合いという事だ。強靭な戦艦と巡洋艦との殴り合い。結果は目に見えている。


「巡洋艦対戦艦です。勝ち目は十分です。」


「しかし、主砲を主砲の半分しか使えないのが残念だな。」


 次の瞬間、巡洋艦の一四〇ミリ三連装砲から、黒い破壊光線が吐き出される。その数三〇本。黒い線は一点に収縮し、一本の漆黒の濁流となって、双胴戦艦に命中する。


 しかし命中しただけで、破壊光線は見えない壁に遮られ、四散する。船体を傷つけるには、威力が不足していたようだ。


 巡洋艦の砲撃で沈むようなら、戦艦の名折れだ。唯乃(ただの)副官の予言通りこの海戦は難なく勝利するだろう。


「敵弾命中。念力防壁が吸収。念力防壁、減衰無し。」


「直ちに念動防壁を修復しろ。」


 本国が開発した、摩訶不思議な防壁。我ら泊地島(はくちとう)発祥の理力工学の賜物だ。


「上々だな。一番、二番、三番主砲。一斉射用意。四番、五番、六番主砲もいつでも発砲できるようにしておけ。砲撃後取り舵を行い敵前回頭を行う。」


「左舷主砲発射後、取り舵ですか。このまま射撃を行った方が効率は良いですが。」


「なに、ちょっと思うところがあってな。実戦で試してみたい事がある。」


 唯乃副長の指摘は的確だ。敵の主砲が有効打にならない以上、このまま撃ち合っても勝利は揺るがない。


 しかし靖國大佐は、どうしても実戦で確認したい事があった。勝ち目が揺るがない戦闘で、どうしても実践テストがしたかったのだ。


 左舷の主砲は、装填作業を行う。五〇秒後、全ての砲塔の射撃準備が整う。


「一番、二番、三番。射撃用意できました。」


「撃て。」


 命令を下すと、九問の主砲が一斉に射撃を行う。靖國大佐は着弾を確認せずに、次の命令を下す。


「慣性制御装置最大出力。」


「慣性制御装置最大出力です。」


 靖國大佐は軽く深呼吸をする。その時ちょうど砲弾の着弾の報告が入る。敵巡洋艦の撃沈したとのことだ。


「取り舵いっぱい。」


「了解しました。取りかーじ一杯。」


 航海長が命令を復唱した直後、双胴戦艦は急速に旋回を開始した。その旋回はとても急で、旋回半径はとても小さかった。あまりにも旋回半径が小さいため、左減の船体はその場で旋回するありさまだ。


 当然、艦の中は阿鼻叫喚のあり様になるはずだが…。


「艦は急速に旋回していますが、放り出されるどころか、遠心力をほとんど感じません。」


「SFで言う慣性制御が効いているおかげだ。念力防壁と言い、実戦でも問題なく稼働しているな。」


 艦内は平然としている。むしろ靖國大佐と唯乃副長の驚きの方が騒がしいくらいだ。旋回している途中、敵巡洋艦からの砲撃を受ける。


「敵艦発砲。発砲煙を確認。実弾が飛んできます。」


 その直後、艦にわずかな衝撃が走る。外では艦の念動防壁に砲弾が衝突し、激しい爆発が起きる。


「実弾が五発、着弾したようだな。損害はどうだ。」


「損害無し。念動防壁が防いでいます。」


 実に頼もしい艦だ、と靖國大佐は思った。そして艦の理力の余力を確認する。急旋回と念動防壁の作動。その双方を受けても、八割以上の余力が残っている。


 敵前での無謀な旋回。これ自体が目的では無かった。実戦の空気で艦の余力を確認する。


 更にそれだけではない。双胴戦艦と言う特質上、片舷が損害を受けた場合、反対側で戦闘を続行できるかもしれない。そのような場面を考慮して、実戦で敵前回頭を経験しておきたかったというのが、靖國大佐の本音だ。


 敵艦の砲弾が飛び交う中、一八〇度の旋回を終える。進行方向と逆向きになったため、急速に艦は減速する。


「四番。五番。六番。射撃用意。目標、敵巡洋艦。」


「艦長。標準合わせ、終わりました。」


「早いな。」


 唯乃副長からすぐに報告が上がる。あらかじめ目測を立てていたのだろう。


「撃て。」


 三回目の斉射。九発の砲弾が残り一隻の巡洋艦に向かっていく。穢れ払いの曳光弾が巡洋艦に衝突する寸前で炸裂。青白い爆炎が巡洋艦を包み込み、その全てを焼き尽くした。



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は帰還艦隊の概要です。


 それではまたお会いしましょう。 

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