第五話 6 泊地島は知恵を持つ
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。
「この動画にどのような意味があるか、と言う点だ。」
「動画の内容だけはありません。動画を配信する意味も、考えないといけません。」
先ほどから、靖國大佐と諏訪中佐が論議をしている。
中佐以上の思考無線会議。議題は、泊地島が送信した動画についてだ。
送信施設は、泊地島にあるラジオ局と結論がすぐに出た。本国からの支援物資で設備の拡充をした施設がある。本国とは繋がっていないが、動画配信サイトも運営していた。
使われていた資材についても、複数の聴衆から見世物小屋の物と判別している。
それ以外にも、泊地島の意思がどのようにして動画を作成し、どのように放送施設を使って動画を送信したか。
だがこの際、それは置くことにした。
「ここで重要な事は、何故この動画が送信されたか。その内容の意味する事は何か。なぜこのような動画を配信するか。帰還を促すように、モールス信号を打たれていた意味も、考慮してのぉ。」
「んで、爺さん。そこまで突き詰めて言うからには、何か分かったのか。」
浅間中佐の意見に、八坂中佐が問いただす。この二人は、議論していた二人とは対照的に、今まで沈黙を守っていた。
「八坂中佐。お主も何か感づいたかの。」
「俺の方は結論が出てねえがな。」
それまで議論をしていた二人は、黙っていた二人に注目する。自分達が議論をすり合わせていたのとは対照的に、この二人は己の理論を、コツコツと積み重ねていたようだ。
「それじゃあ、儂の方からかの。」
この一言で、三人の意識は浅間中佐に釘付けになる。
「そうじゃのぉ。泊地島の意思の目的じゃ。皆も分かっている通り、儂ら帰還民を泊地島に戻したいという事じゃろう。ここまでは良いかな。」
「だろうな。モールス信号にしろ、動画にしろ、帰ってこいって内容だったぜ。」
「そこまでは問題ない。」
「そうですね。」
一同は了解した。浅間中佐の言った通りの内容が、泊地島から送信され続けている。
「そしてもう一つ。動画の内容から分かるのは、一七代ことペプーリアを、目の敵にしているという事じゃ。」
そこまで言うと、浅間中佐は軽く緑茶に口を付ける。
「おそらく以前から、快く思ってなかった。じゃがさすがに、島民のほぼ全てが、帰還作戦に従事するとは思わなかったじゃろう。」
「そうでしょうか。」
諏訪中佐の相槌を背に、浅間中佐は好々爺のように考察を続ける。
「もし帰還作戦を理解しておれば、出向前に妨害されるじゃろう。それが無かったのは、帰還作戦が開始されるまで、分からなかったという事じゃろう。」
「それではペプーリア殿が、目の敵にされている理由は…。」
靖國大佐の発言に、浅間中佐が間を置くように頷く。
「もちろん泊地島で起こった事は、一通り見ておるはずじゃ。一七代が派手な演説をしたくらいじゃからの。そこで島民のほぼ全てが帰還するのじゃ。泊地島の意思は相当焦ったじゃろう。」
そこまで言うと、浅間中佐は再び緑茶に口を付ける。他の三人は、軍医の行った演説を思い出す。
一番印象的だったのは、ペプーリアの力を示した場面だ。豪雨と晴天の天候操作を行い、戦闘機を召喚して飛ばしたからだ。
「ここで儂の結論じゃ。泊地島の意思は儂らを連れ戻そうとするじゃろう。そしてそれを阻害しているのは、ペプーリアこと一七代じゃ。初めから目の敵にしておったのじゃろう。」
「それでは、ペプーリア様が泊地島の意思を挑発したのは、意味が無かったのですか。」
諏訪中佐の意見に対して、浅間中佐は二回首を横に振るう。
「儂はあったと思うがの。一七代の挑発で、儂の言ったことが事実になったのじゃろう。そして念話やモールス符号で呼びかけたが、呼びかけには応じなかった。じゃから別の手で動いたのじゃろうて。それが例の動画じゃ。」
そこまで言うと、浅間中佐は三度お茶を啜ろうとするが、その直前で手を止める。そして、まるで何かを思い出したかのようにつぶやく。
「今後儂らが相手にする敵意は、儂らを惑わす。少なくともその意思があるという事じゃ。その対策が必要じゃろうな。」
そう言うと、浅間中佐はお茶を啜る。
自分達を惑わす悪意。浅間中佐のその言葉は、残りの三人をしばし無言にするには十分だった。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は挙動のおかしい穢れが出現します。
それではまたお会いしましょう。




