第五話 5 人形劇『悪のペプーリアをやっつけろ』
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
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「泊地島物語。悪いペプーリアをやっつけろ。」
動画を再生して、始めに目に飛び込んできた字幕がこれだ。その字幕も、古い映像記録のそれだ。その直後に、複数の子供と女子らしき合成音声で、字幕が読み上げられる。
吾輩は何を見せられているのか、この時点では想像ができなかった。
「もへへ。内容に期待していいのかにゃ。」
「軍医殿は何を期待しているのだ。」
軍医殿はとても楽しそうだ。ペプーリアとは、おそらく軍医殿の事だ。自身が題材になっているから、そんなに楽しそうにしているのだろうか。
◇◇◇
「忘却の楽園、泊地島。そこは忘却の川に浮かぶ、実り豊かな楽園でした。」
泊地島を上空からの映像が、動画に映し出される。泊地島全体を映し、旋回する映像だ。
「そこの住人はとても善良で、幸せに暮らしていました。」
画面は変わり、人形劇に切り替わる。稲作に従事する場面。活気のある街並みを映した場面。樵が木を切る場面。漁師が漁をする場面などが映し出された。
「この人形劇に出ている人形などの小道具、使いまわしだな。幼い頃、見世物小屋で見たことがある。」
「ほへ。そうなんだ。そんな娯楽があったんだ。」
そんな無駄口を叩く間にも、人形劇は続く。
「ある日、一隻の船が楽園にやってきました。そしてその船には、なんと人を騙す極悪人が乗っていました。」
場面はさらに変わる。海賊船が海原を移動している場面が映し出される。どんぶらこ。どんぶらこ。そんな言葉が合う動作だ。
そして船から真っ白な人形が、ぴょんと飛び出す。軍医殿を模した人形だ。
「ぼくの名前はペプーリア。とっても悪い極悪人。ここ連中を騙してね。悪い国に連れてっちゃう。」
テンポよく歌いながら踊り出す。吾輩が見た人形劇も、こんな感じだったのを思い出す。
場面は泊地島の住人が、ペプーリアを取り囲む場面に切り替わる。
「島の住民の皆さんに、とっても色よいお知らせだ。ここより素敵な楽園に、みぃんなまとめてご案内。」
踊りながら歌う、ペプーリアの人形。周りを取り囲む住民も、次第につられて踊り出す。
「素敵な楽園どんなとこ。」
「とっても美味しい物がある。」
「素敵な楽園どんなとこ。」
「暖かくて住みやすい。」
住民の問いにペプーリアが答える場面が、しばし流れる。このノリも、過去に見た人形劇そのものだと、吾輩は思った。
「素敵な楽園行きたいな。素敵な所に連れてって。」
「みんなで船に乗っかって、みんなで行こう楽園に。」
そう歌うと住民は、海賊船に一斉に船に乗り込む。乗船が終わると、海賊船は画面外に移動する。
「もへへ。結構出来は良いみたいだねぇ。はてさてこの後、どうなるんだろうねぇ。」
吾輩が意味を測りかねているのをよそに、軍医殿はこの動画を楽しんでいるようだ。自分が悪役なのを、楽しんでいるのだろうか。
◇◇◇
場面は変わり、艦長室の中。ペプーリアの人形が、偉そうに椅子座っている。そしてよく見ると、住民の一人が窓から覗いている。
「もへへへへ。馬鹿な住民騙したぞ。お馬鹿な連中連れ去って、悪い国に連れてっちゃえ。」
そこまで言うと、住民達が一斉に艦長室になだれ込む。そのうちの一人は、よく見ると剣を持っている。
「ペプーリア。良くも僕達騙したな。僕達みんな今すぐに、泊地島に返してくれ。」
「もへへへへ。ばれてしまったら仕方がない。お前ら全員牢獄行きだ。」
そう言うとペプーリアが剣を取り出す。そして住民達が取り囲む中、剣を持った住民との一騎打ちが、繰り広げられる。
チャンバラでドタバタ劇をする中で場面は変わり、ペプーリアは艦尾に追い込まれる。そして剣を持った住民が、ペプーリアの剣を薙ぎ払い、剣は海に落ちる。
「しまったぁ。」
ペプーリアが剣を落とした次の瞬間。
「覚悟だ。悪のペプーリア。」
そう言って住民の一人が、ペプーリアに向かって剣を振り下ろす。
「ぎゃー。やられたぁ。」
安っぽい断末魔の悲鳴を上げて、海に落ちるペプーリア。そして次の瞬間、なぜか女神の人形が現れて、こう言うのだ。
「悪のペプーリアの脅威は去りました。さあ住民よ。泊地島に帰りましょう。」
女神の掛け声と共に住民達は歌いながら、元居た場所に帰っていく。これがこの動画の内容だ。
◇◇◇
「何だったのだ。これは。」
吾輩は意味を測りかねていた。ペプーリアを悪役にした勧善批悪の物語のように見えるが、これは一体どのような意味があるのだろうか。
「エンターテインメントの才能、あるんじゃない。結構楽しめたよ。」
「吾輩には理解できなかったな。」
「それにしても一つだけ分かった事があるけど。」
「どんな事だ。」
あの人形劇に何の意味があったのだろうか。軍医殿は何か分かったのか。その答えを知りたかった。
「ボクはあんな悪人顔じゃないよ。この美形を見てもまだ言えるのかな。」
軍医殿は椅子から立ち上がり、意味不明なポーズをとる。
「は?」
今更の話だが、軍医殿はヴィガージャの中では飛び切りの美形だ。容姿と相まってカリスマ医と呼ばれていると、聞いた事がある。その軍医がとる意味不明なポーズ。その言動と容姿に釣り合わない姿勢に、吾輩の思考は一瞬硬直した。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回はこの動画について、いつもの思考無線会議が行われます。
それではまたお会いしましょう。




