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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第五話 泊地島の意思
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第五話 4 “二回行動の秘術”と副作用

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。

「チミの調合した霊薬(れいやく)。血管にぷすっと行っといたよ。」


「すまない。軍医殿。」


「にしても“二回行動の秘術”。術の後遺症がここまで響くのは、本当に珍しい事だよ。」


 軍医殿に霊薬を血管に打ってもらう。栄養剤と疲労回復薬を混ぜたものだ。眩暈(めまい)と吐き気が収まり、いささか体が楽になったように感じる。


 本来、霊薬を血管に直接注入する行為は危険行為で、細心の注意を払う必要がある。


「艦にあの術を付与するのは初めてだからな。理力面で、相当負荷がかかったのだろうな。」


 吾輩(わがはい)はこの数日、体調不良を起こしている。理力不均衡症と、継続する疲労だ。


 原因は“二回行動の秘術”の術を、巡洋艦に付与した弊害だ。


 “二回行動の秘術“。吾輩の開発した術で、身体の思考速度と反応速度を、過度に上げる術だ。


 体が軽くなり、時間が遅く流れるように感じる。体は俊敏(しゅんびん)に動き、思考も鮮明になり、結果としてとても素早く思考したり、体を動かすことができる。


 これを術者以外が観測すると、まるで早送りで動いているように映る。そしてそれは(まぼろし)でもまやかしでもない、現実の起きている現象だ。


 術の名前の由来はコンピューターゲームで、敵が二回行動する現象に例えたものだ。この名前は的を射ていると自負している。


 ただしこの手の術には、副作用も存在する。当然だ。体に過度の負担をかけているからだ。


 この“二回行動の秘術”の術の副作用は、極度の疲労に襲われる事だ。それも当然だ。通常の倍の速度で体を動かして、それで何も起こらないわけがない。


 ただし今回は、それだけではすまなかった。軍艦に付与する暴挙を行ったからだ。


 術の効果で誘導弾の迎撃率が向上したが、それに伴う副作用も出ている。


 その副作用は、数日たった今でも、疲労感が回復しない。さらに吐き気と眩暈のおまけつきだ。


 普通なら、疲労感は一日だけだが、今回はそうはならなかったようだ。


「理力不均衡症は厄介だね。霊薬の効きが悪いよ。ま、後二、三日は、術の仕様はやめた方が良いね。」


 そう言うと軍医殿は、注射針を捨てる。少しもったいない気もするが、衛生上の問題と言う話だ。


「それと摩訶不思議(まかふしぎ)装置。あの装置、こわれやすいのかなぁ。」


「どうだろうな。“二回行動の秘術”は複雑な術だ。そのせいだろう。」


 摩訶不思議装置は壊れやすいかもしれない。頻繁に壊すなと言う誰かの愚痴を、聞いた事がある。


「二回行動の秘術。結構高度な術みたいだねぇ。論文出して発表すれば、特許料がウハウハだよ。」


「そうか。それは考えておかないとな。」


“二回行動の秘術”はいくつもの術がその根底にある。論文を発表すれば、注目されるかもしれない。もっとも、軍医殿の言う特許料については、どうなるかは別の話だ。


「それにしてもチミ。“黄金石炭鋼(おうごんせきたんこう)”術と言い、“二回行動の秘術”と言い、

 チミは術の天才だねぇ。普通は、術をいくつも開発できないよ。」


「そうらしいな。ただ術の実力は、特別上では無いがな。」


「チミ。それは嫌味にしか聞こえないよ。」


 軍医のツッコミを受けつつ、しばし思考にふける。


 確かに術の開発は容易ではない。それも複数の術ならなおさらだ。


 吾輩より卓越した術使いは、この帰還艦隊の中でも手足の指では収まらない。


 吾輩は単に、術のセンスの違いだと考えている。


 靖國大佐のように卓越した術師だが、系統立てられた術を、より高度に行使できる人材。吾輩のように新しい術を作る事ができる人材。センス以外の差は、全くないと吾輩は考えている。


「あ、ちょっと待って。思考無線だね。ちょっと無線に出るよ。」


 そう言うと軍医殿は思考無線に意識を傾ける。時折独り言を言っているようで、周りから見ると、少し気味が悪い。


 短い応対の後に、軍医殿は吾輩に向き直る。どうやら思考無線でのやり取りは、終わったようだ。


「さっきの思考無線だけど、ひとつ面白い事があったよ。」


「面白い事?」


 軍医殿の言った面白い事。おそらくろくでもない事だと、吾輩の本能が(ささや)いている。


「泊地島から電波が発信されたんだって。そしてその電波だけど、動画を送信してきたんだって。」


「動画だど。電波で送信してきたのか。」


 泊地島から動画の送信。これも泊地島の意思の仕業だろうか。


「上級大尉。中身、気になるよね。」


「それ以前に、不気味さが先に出るな。」


「そんな不気味な動画。ここにあるパソコンから見る事ができるって。」


 そんな事を話しながら、軍医殿は問題の動画ファイルにアクセスする。楽しそうに見えるのは、気のせいだろうか。


「この動画ファイルだね。再生するけど、良いかにゃ。」


「よろしく頼む。」


 吾輩は怪奇小説のような不気味さを、頭の隅に追いやる。そして問題の動画の視聴を開始した。


 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は二人と読者の方々は、奇妙な物を目撃する事になるでしょう。


 それではまたお会いしましょう。

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