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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第五話 泊地島の意思
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第五話 3 泊地島の呪縛

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。

 靖國(やすくに)上級大尉の航海日誌


 一八日目。泊地島(はくちとう)の意思と言う存在が明るみになって、部下に動揺が走った。今は収まっているが、泊地島の出方を注視する必要がある。


 それと淺糟(あさかす)軍曹の意見を、念のために上層部に意見具申する。


 それと余談だが、“二回行動の秘術の後遺症が、まだ続いている。現在は霊薬(れいやく)で誤魔化して、職務を遂行している。



◇◇◇




 吾輩(わがはい)は艦内を回る。艦内の空気は、今は落ち着いている。乗員は表面上、任務に従事している。何か作業に集中していた方が、落ち着くというだけの話かもしれないが。


 さて発表された事を復習しよう。


 発表内容は二つ。泊地島の意思と、それが操る(けが)れについてだ。


 その発表した瞬間、動揺が走ったのは言うまでもない。だが動揺はあったものの、吾輩は妙に納得していた。


 泊地島には大量の穢れが、浄化されずに残されている。それらの穢れが怨霊(おんりょう)になった場合、悪さをするかもしれない。


 また、泊地島の意思と呼ばれる者が、泊地島に溜まった穢れを使って、害をなしてくる。そう考えると穢れの出所についても合点がいく。


 ただし泊地島の意思については、確証はない。吾輩に限らず、いきなり出てきた何かが、泊地島の意思を名乗っている。そんな風にも思える。いずれにせよ、今後何かしら分かるかもしれない。


 吾輩がそんな事を考えながら、食堂に足を運ぶ。間食用に缶珈琲とポテトチップスの袋を、糧食貨幣(ひょうろうかへい)と交換する。


「軍曹。泊地島の意思って、ひょっとして怖いお化けですか。」


「さすがにお化けじゃないと思うけど。」


 二人のヴィガージャが会話をしている。そのうちの一人は、我が弟子の淺糟軍曹だ。



◇◇◇




 そこには非番らしき淺糟軍曹と、二等兵らしきヴィガージャ種のチビ助をなだめていた。ポテトチップスを(さかな)に、飲み物を飲んでいる最中だろうが、食事の手は止まっている。


 よく見るとポテトチップスと双方の飲み物は、ほとんど減っていない。手を付けていないのが明らかだ。


「二人とも。いったいどうしたのだ。」


「靖國上級大尉。」


 二人は席から立ち上がり敬礼をする。吾輩も敬礼で返し、二人の同じテーブルの席に座る。


 吾輩は二人の会話に入っていく。本来、下士官と兵士の話に、士官が割り込むのはあまり好ましくない。だが、つまらない不審火は消しておく必要がある。


「二等兵。あまりうろたえる物では無い。それでも黄泉軍(よもついくさ)の兵士か。」


「も、申し訳ございません。」


 二等兵はバネが跳ねたように敬礼をする。吾輩は胸のつっかえを、ため息と共に吐き出す。


「ここに吾輩のポテトチップスがある。二等兵。お前さんにこれをやるから、飲み食いして落ち着くのだ。」


「え、でも。」


「良いからそうしろ。」


 吾輩のポテトチップスを二等兵に押し付ける。二等兵は一瞬戸惑ったが、吾輩の命令通り間食を開始した。


「まずは二人とも。結論から行くと、泊地島の意思について、結論は出ていない。祟り神だと言われているがな。」


 吾輩はそこまで言うと、吾輩は缶珈琲(コーヒー)の封を開ける。


「だが、吾輩達のやる事は変わらない。穢れが降りかかれば、それらを振り払う。さし当たって正体は二の次だ。」


 吾輩は多少強引だが、話を結論付ける。この手の不審火は早期に消すことが重要だと判断したからだ。


「靖國上級大尉。意見をよろしいでしょうか。」


 淺糟軍曹が手を挙げて、吾輩に対して発現の許可を求める。


「どうしたのだ。発言を許可しよう。」


「ありがとうございます。」


 淺糟軍曹は一拍置くと話を続ける。


「僕は一つ気になっている事があります。それは、靖國領の、正確には泊地島の呪縛についてです。」


 靖國領か。久しぶりに聞いたな。靖國領は本国側の泊地島の呼称だ。


「泊地島の呪縛か。」


 吾輩はこの言葉の意味を、とっさに思い出すことができなかった。


「靖國領で作られた船は、双胴艦でないと漁にも出れないという話でした。理由は不明ですが、単胴艦では泊地島から一〇〇メートルも離れる事ができません。」


 この事を聞いて、吾輩はようやく思い出した。理由は不明だが、胴体が複数ある船体でなければ、泊地島から離れる事ができない。


 今回の帰還作戦でも、泊地島で作られた艦が双胴艦、または多胴艦である理由がここにある。


「確かな事は言えませんが、ひょっとしたらこの事象が関係しているかもしれないと、僕は睨んでいます。」


「なるほどな。それは盲点だったな。呪縛自体が、悪さをしているという事だな。」


 これは吾輩にとっても盲点だった。泊地島を名乗る何者かの仕業では無くて、泊地島の呪縛そのものが、正体だと言いたいのだろう。


「はい。僕はそう思います。」


「そうか。」


 吾輩は缶珈琲を、一口飲んで一瞬考える。そしてもう一口飲んで、まとめた考えごと喉に流し込む。


「淺糟軍曹。念のためだ。お前さんの意見を、上層部に意見具申しておく。その代わり、この事は他言無用だ。要らぬ憶測を招きたくないからな。」


「了解しました。」


 淺糟軍曹の返事を横に、吾輩は二等兵の様子を見る。ちょうどポテトチップスを食べ終えたところだった。


「こういう訳だ。二等兵。お前さんもここで聞いた事を、他の同胞に話すんじゃないぞ。」


「了解しました。」


 二等兵は慌てて敬礼をする。その手と口には、ポテトチップスの油が付いていた。



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は、靖國上級大尉の体調。術の後遺症で悪いようです。


 それではまたお会いしましょう。

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