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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第四話 謎の巨大艦艇
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第四話 11 アルビノの囮

当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。


この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。

「なるほど。(たた)り神か。」


 吾輩と軍医殿、そして淺糟(あさかす)軍曹の三人で一つのテーブルを囲んでいる。これから晩飯を食べるところだ。


「上級大尉。チミ、あれから体調はどうだね。」


 軍医殿は“二回行動の秘術(ひじゅつ)”の後遺症について訊ねる。


「あまり良くないな。霊薬で誤魔化している。もし酷いようなら、改めて言う。

「分かったにょ。あまり無理しちゃだめだよ。」


 “二回行動の秘術”は副作用の出る術だ。開発者本人である吾輩も、その点は自覚している。


 副作用の話はこのくらいにして、晩飯に戻るか。


 今日の晩飯は戦闘糧食三〇号 フィッシュチップス・サンドセットだ。


 フィッシュチップス・サンドだ。パンズ、白身魚、パンズ、白身魚、そしてパンズ。白身魚を揚げた物が二枚挟まっている、豪華なサンドだ。それにコールスローサラダとポテト、それに粉末珈琲が付く。


『ナウなヤングのハートをズキューン』が宣伝文句だが、今、若い心にズキューン。ズキューンは銃声の擬音語だから撃ち抜くか。そう考えるとハートは心臓の事だろうか。


 意味不明な宣伝文句を考察しながら、サンドとポテトを、“湯沸かし”の術で温める。


 サンドの封を開けて取り出すと、揚げ物とタルタルソースの香りがあふれ出した。手に取ってみようかと思ったが、“湯沸かし”の術のせいで熱かった。


「あの。僕はここで聞いても良いのでしょうか。」


 淺糟軍曹は居心地が悪そうにしている。吾輩と軍医殿とは違って、一人だけ下士官だ。余計な気を使っているのだろう。


「それなら問題無いにょ。祟り神については公にするよ。」


「そうですか。」


 ポテトをガツガツと食べながら、軍医殿は答える。一方淺糟軍曹は、コールスローサラダに口を付けずに話を聞く。


 吾輩は二人のやり取りを横目に、サンドを一口(かじ)る。タルタルソースの香りが舌と鼻を刺激する。白身魚に合うその味は上々だ。だが、パンズも温めたのは失敗だったようだ。


「ところで軍医殿。一つ確認したい。」


「何じゃらほい。」


 吾輩の問いかけに、軍医殿は口にしかけたコールスローサラダを、ひとまず置く。


「軍医殿。お前さん、穢れとのやり取りがあったようだな。」


「そう言えばあったかにゃ。」


「とぼけるな。艦外知覚装置で、しっかり聞いていたぞ。」


 軍医殿はとぼけると、コールスローサラダサラダを一口頬張る。淺糟軍曹は吾輩達を見守りながら、コールスローサラダを黙々と食べる。


「穢れとのやり取りで、泊地島の住民を新天地に連れて行くと、挑発していただろう。どういう意味だ。」


 そう言うと吾輩は、ポテトを一本齧る。ふむ。確かにジャガイモの味だ。塩加減がジャガイモの味を引き立てる。


「もへへ。その話は難しい話かにゃ。」


 そう言うと軍医殿は、サンドを一口齧る。


「淺糟君。心理戦って知っている。」


「言葉の意味は分かります。」


 淺糟軍曹は、サンドを食べようとした手を止めて、軍医の質問に答える。


「そ。それで十分だよ。で、ボクは祟り神に対して、心理戦を仕掛けたんだよ。」


 心理戦はどういう事だろうか。吾輩はコールスローサラダを一口食べる。新鮮な野菜が噛み砕かれて、シャキシャキと音をたてる。ドレッシングが少し甘いのは、砂糖でも入っているからだろうか。


「具体的には、祟り神の信じたい事を確信に変えた、と言った所だねぇ。」


「信じたい事、ですか。」


 半分欠けたサンドを片手に、淺糟軍曹は相槌(あいづち)を打つ。


「ま、早い話。ボクが(おとり)役だね。」


「囮役だと。それはどういう事だ。」



◇◇◇



「ボク達。正確には第一探査艦隊だね。過去に三回穢れとの戦闘に参加したね。その時、『ボクが乗っている艦』が集中砲火に合っていたんだよね。」


 吾輩は軍医殿に言われて思い出した。言われてみると確かに軍医殿の言っているとおりだ。


「多分、ボクは祟り神の殺害名簿の中では一番目だろうね。天の火じゃなくて『ボクが乗った艦』に攻撃が集中した理由も、そのあたりだろうね。


「なるほど。それが『祟り神の信じたい事』という訳だな。囮役を軍医殿一人で背負い込むのは、荷が重いと思うぞ。」


「ま、そのあたりは、チミ達の力を借りたいね。そしてここからが重要だけどねぇ。」


 そこまで言うと、軍医殿は粉末珈琲を一口飲む。


「できる限り、ボクが悪役と言う事にしようと思うんだ。」


「その理由はなんだ。」


 吾輩は、食べ終えたポテトの空袋を握りつぶす。


「簡単に言うとね。泊地島の同胞に、敵意が向かわないようにするためだね。短い会話だっだけど、ボクが泊地島の住人を惑わしていると、誤解しているみたいだからね。」


 軍医殿はコールスローサラダを一気の口に流し込む。それを珈琲で流し込んで話を続ける。


「とりあえず当面は、そのシナリオで行くよ。少しでも泊地島出身者の被害を、抑えるためにね。そう言う事だから、第一探査艦隊の危険度は大幅に上昇するね。だから有事の際は、一段と気を引き締めてね。」


「軍医様。それはあまりにも危険です。」


 淺糟軍曹は心配そうに軍医を見ている。


 軍医殿はポテトの袋を掴んで、一言付け加える。


「確かに危険だね。けどこの件は艦隊会議でも承認済みだよ。」


 祟り神に対して矢面に立つ。アルビノの軍医殿は、さぞ目立つ事だろう。


 そんな悪い冗談を頭の(すみ)に追いやり、自身を危険にさらす軍医殿に対して、吾輩はある種の危うさを感じた。


 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は一話分お休みを頂き、7月28日の投稿になります。


 次回から新しい章に移ります。さっそく上層部が、囮役の軍医に頭を悩ましています。


 それではまたお会いしましょう。

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