第四話 9 穢れの声
当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
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軍医は急いで甲板に向かう。思考無線で状況を確認する。
どうやら巨大少女と白兵戦要員が対峙している。敵は持っている巨大な錫杖から摩訶不思議な雷を放つようだ。白兵戦要員は巨大魔法少女を退治するが、間を置かずもう一体が天の火に着艦する。
魔法少女は奇妙な事に、大声で叫びながら摩訶不思議な雷を放つ。
ペプーリアは何所だと。
◇◇◇
軍医は甲板に出る扉の前にたどり着く。甲板の出入り口には、負傷者が一人手当てを受けている。本来なら軍医が手当てに当たるが、今回は状況が違う。
「ペプーリア様。お下がりください。穢れの目標は、間違いなくペプーリア様です。」
上等兵が軍医の前に立ちふさがる。軍医はため息をつくと言葉を発する。
「そうらしいね。だけどこっちも穢れに用があるんだよねぇ。通してもらうんだなぁ。」
そう言うと軍医は、静止を促す部下を器用に避けて甲板に出る。
甲板では一人の白兵戦要員が対峙している。淺糟軍曹だ。軍医は担ぎ込まれる負傷者を避けて、巨大魔法少女の前に姿を現す。
「ペプーリアは何所だ。ペプーリアを出せ。」
「軍医様。お下がりください。」
淺糟軍曹が軍医の前に、脅威から庇うように立つ。軍医はそれも退けて、魔法少女の目に立ちふさがる。
「けど巨大美少女は、ボクに用があるみたいだねぇ。」
巨大魔法少女は可愛らしい錫杖から、七色の破壊光線を放ち軍医に襲い掛かる。
軍医は難なくかわし、魔法の袋から短かい槍を二本取り出す。投擲用の槍だ。
「もへへ。生温いねぇ。」
そう言うと軍医は、器用に二本の槍を投槍器に取りつけて、全身をもって豪快にやり投げを行う。
槍は勢いよく投げ出され、喉元に向かって飛翔する。二本とも喉元に命中する。まるで釘か細い筆が、喉に刺さったかのような形だ。
魔法少女は苦痛のあまり倒れ、のたうち回る。そして甲板から転げ落ち、海面に落ちて水しぶきを上げる。
「もへへ。水も滴るいい女ってか。ぶざまだにぇえ。」
軍医は片手でやれやれと言った仕草をする。
「軍医様。あまり挑発をなさらないで下さい。」
「もへへ。ボクなら大丈夫だよ。」
「貴様ぁ。」
可憐な魔法少女は水面から浮かび上がり憎悪を吐き出す。甲板から顔を出して、右腕を伸ばす。右手は拳に変わり、軍医に鉄拳を繰り出す。
巻き込まれそうになる淺糟軍曹は、何とかこの拳を回避する。
一方軍医はこれを難なく、しかもアニメか映画のように宙返りをして回避する。おまけにフィギアスケートのように三回転の回転も加えてだ。この男、本当に身軽なもので、華麗に着地する。
「まあまあ。可愛い顔が台無しだよ。お嬢ちゃん。」
そう言うと、今度は南部大型拳銃を二丁取り出す。そして二丁拳銃で、拳に対して穢れ払いの曳光弾を五、六発叩きこむ。
右手の中指が浄化の炎で燃え上がる。中指が燃え尽きて灰の塊になって崩れ落ちる。
「さてと。正式な自己紹介がまだだったねぇ。」
魔法少女は憎悪に歪んだ顔を向けるが、軍医は動じない。突如軍医の頭上にジェット戦闘機が出現する。軍医の召喚した戦闘機だ。戦闘機は軍医の頭上で滞空する。
「察しがついてないから言うけど、ボクが第一七代ペプーリア。チミの言うペプーリアだよ。」
◇◇◇
戦況は決していた。残り少ない穢れも順次排除され、ほぼ全ての穢れが排除された。
「さてと、お嬢さん。何でボクを目の敵にするのかにゃ。」
軍医は魔法少女に向かって問いただす。
「貴様が我が民を惑わせたからだ。我が民が我が地を離れ、我を捨てさせたからだ。」
軍医はふむふむと頷きながら、穢れの話を聞いていた。ここまで明晰な意思を持った穢れは珍しい、と考えながら。
「貴様のせいだ。この悪しき船に乗ってきた貴様が、我が民をたぶらかした。」
どこでどう見ていたか知らないけど、この穢れにはそうゆう風に見えたんだ。軍医はそう考えたが、おそらくそれ以上の情報は引き出せないと思った。
そこで軍医は、一つの情報戦を仕掛けた。
「あ、やっぱり分かっちゃうんだ。賢いねぇ。」
その言葉に、魔法少女が一瞬硬直する。
「チミ達に伝えておくよ。ボクの目的はチミ達の民を、より良い新天地に連れていく事だよ。」
魔法少女は全身を震わせる。何か言おうとするが、まるで言葉になっていない。
「そしてこの船は、そんな素敵な新天地に導く、素敵な箱舟だよ。」
軍医は甲板を指さしながら、魔法少女を煽る。
「新天地はチミ達の泊地島より、はるかに良い場所だ。そう言う事だから…。」
そう言うと軍医の頭上の戦闘機が動き出し、機首を魔法少女に向ける。
「この航海を止めたければ、ボクを倒す事だね。それじゃあご機嫌よう。」
軍医は右手を掲げパチンと指を鳴らす。戦闘機の機首から、大量の穢れ払いの機銃弾が吐き出された。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は、穢れに対しての考察です。
それではまたお会いしましょう。




