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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第四話 謎の巨大艦艇
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第四話 8 遅れてきた打撃力

当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。


この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。


 夕焼けの真水の海原が波立ち、空間が僅かに歪む。何かが弾ける音が響く。当たりの水面が(へこ)み、水が押しのけられる。出現した凹みに合わせて、双胴の戦艦が出現する。そして戦艦は、何事も無かったかのように、力強く水をかき分けて進む。


 出現地点は第二護衛艦隊の後方二キロ地点。作戦通りの位置で、すぐにでも合流できる位置だった。


「伊〇一水域に到着。第二護衛艦隊は現在戦闘中。艦内各部署、異常ありません。」


 唯乃(ただの)副長の報告受け、靖國大佐は指示を飛ばす。


「作戦の第二段階だ。本艦を所定の位置に移動させるぞ。」



◇◇◇



「もへへ。陣形変更の指示が出たね。艦長。手はず通り機関後進にしてね。」


「了解しました。機関後進。面舵一杯。」


 天の火(あまのひ)は急速に減速しながら、右に船体を進める。他の艦も作戦に従って所定の位置につく。


 その艦隊運動は輪形陣の尻が割れるように見える。誘導弾を迎撃しながら、艦隊はその腹に、双胴戦艦を抱える。


 そして再び輪形陣が完成する。希望の前後を天の火、峯島(みねしま)で固め、巡洋艦と駆逐艦が外周を守る形になる。


「陣形の再編ができました。」


「諏訪中佐。ご苦労。」


「ようやく反撃開始です。手はず通りお願いします。」


 靖國(やすくに)大佐は軽く深呼吸をして一拍置く。


「砲術長。副砲、高角砲。機銃は誘導弾迎撃。理力弾垂直発射装置も迎撃に使え。」


「了解しました。」


 靖國大佐は敵艦を知覚する。敵の穢れは今でも濃厚で、いまだ健在だが、確実に穢れの量は減っている。


 続けて思考無線で情報を集める。敵艦との距離は三五キロ。主砲の射程内で射撃体勢は整っている。


 靖國大佐は艦内を知覚する。副砲、高角砲の同胞は一心不乱に誘導弾の迎撃に努める。機銃要員の射撃手は、本艦に向かってくる誘導弾に目を光らしている。ダメージコントロール要員は緊張して待機して、主砲の人員は命令を今か今かと待ち構えている。


 靖國大佐は再び一拍置いて、部下に指示を下す。


「主砲、一番、二番、三番。撃て。」


 四六〇ミリの主砲が一斉に火を噴く。九発の(けが)れ払いの曳光弾(えいこうだん)が、主砲から一斉に放たれる。砲弾は輝きながら弧を描き、巨大艦に向かって飛翔(ひしょう)する。


 続けて摩訶不思議(まかふしぎ)装置で、“穢れ払い”の術を行使する。靖國上級大尉が行使した“穢れ払い”の術を上書きする。


 装置によって拡大された穢れ払いの術が、さらに巨大艦の穢れを払う。放たれた誘導弾は支離滅裂(しりめつれつ)な方向に四散し、その攻撃は一時中断される。


 そこに主砲砲弾が敵巨大艦に直撃する。砲弾は穢れた巨大艦の内部で炸裂する。爆発は巨大艦の内部を穢れ払いの炎で焼く。炎が穢れの中を浄化し、その量を減らしていく。


 巨大艦がのたうち回っているように、靖國大佐には見えた。穢れは依然大量に残っているが、確かな有効打に思えた。



◇◇◇



 こうして戦艦希望も戦列に加わり、第二回戦が開始される。


 穢れた巨大艦は、穢れた誘導弾を吐き続ける。その量は徐々に増し、弾幕合戦はさらに盛大になる。


 そこに戦艦の艦砲射撃が加わり、徐々に敵巨大艦の穢れを削っていく。


 形勢は徐々に傾きつつあるが、一つだけ予想には無かった事態が発生した。


「ほへ。また来たよ。上級大尉。」


「またか。誘導弾の迎撃をする。」


 吾輩(わがはい)は穢れ払いの炎を摩訶不思議装置で増幅させ、穢れた誘導弾を真っ二つにする。これでもう三度目だ。


 摩訶不思議装置は健在だ。二基同時で使用しているためか、装置の破損には至っていない。


「こうも何度も来られると気力が持たないぞ。」


 吾輩はそう言うと、気力回復薬を一気飲みする。思考が研ぎ澄まされ、集中力が戻ってくる。薬の多用はできないが、当面は場をしのげるだろう。


「それにしても、なぜ天の火に集中するのだ。」


「そんなことボクが聞きたいよ。」


「理由が分からん。本当に軍医殿の二枚目が理由でも、吾輩は疑わんぞ。」



◇◇◇



 形勢は次第に決定的になる。


 双胴戦艦希望が戦列に加わり、巨砲により艦砲射撃が行われる。四六○ミリの曳光弾は、巨大艦の穢れを確実に削り、次第に姿が希薄になる。そして穢れの量が残り二割になった時に、新たな異変が起きる。


海百足(うみむかで)。形を崩して球形になりました。」


 靖國大佐は艦外を知覚する。巨大艦の形が崩れ、凝縮される。


 次の瞬間、圧縮された穢れは一気に破裂して、穢れが一斉に艦隊に向かってくる。


「穢れが破裂して、こちらに向かってきます。」


「各艦。穢れ払いの曳光弾を装填。残った穢れが一斉に降り注ぐぞ。」


 靖國大佐は注意喚起を終えると、再び艦外を知覚する。


 大小穢れの破片がこちらに飛翔してくる。穢れはそれぞれ形を変える。


 小さな破片は魔法少女に姿を変える。また別の破片は漆黒の猛犬に姿を変える。少し大きい塊は、流行の巨大ロボットに姿を変え、また別の塊は巨大な大鷲に姿を変える。


 各艦が穢れ払いの曳光弾を発射する。青白い光跡を描いて、穢れに飛来する。


 七六ミリ弾が爆散し、巨大ロボットを浄化する。巡洋艦の主砲、一四〇ミリ砲弾が、巨大な一つ目の化け物を消し炭にする。希望の主砲が、魔法少女の団体客を丸焼きにする。その中に巫女姿が混じっているのは、些細な事だった。


 大小さまざまな穢れを浄化する。その浄化劇をかいくぐり、数体の巨体が天の火に迫ってくる。



◇◇◇



「一分の六魔法少女。天の火に接近してくるよ。迎撃して。」


「一分の六。六分の一じゃないのか。」


 吾輩はつまらないツッコミを入れると当時に、摩訶不思議装置で穢れ払いの炎を行使する。


 吾輩は一体、二体と穢れ払いの炎で、可憐(かれん)な姿を丸焼きにする。三体目に攻撃を仕掛けようとした時、摩訶不思議装置が壊れ視界が傾く。床が視界の半分を占める。足に力が入らない。


 吾輩は倒れたのを知覚するのに、一、二秒かかった。気力を振り絞り立ち上がる。気力回復薬に手をかけた時瞬間、艦に振動が走る。


「もへへ。天の火に巨大な魔法少女が着艦したね。」


 そう言うと軍医殿は駆け足で扉に向かう。


「上級大尉。着艦した穢れ、僕が退治に向かうよ。チミは少し休んでいて。」


 軍医殿が早口で言うと出すと、一〇〇メートル七秒台の俊足(しゅんそく)で、甲板に向かった。



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は穢れは叫びます。「ペプーリアは何所だ」と。


 それではまたお会いしましょう。

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