第四話 8 遅れてきた打撃力
当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
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夕焼けの真水の海原が波立ち、空間が僅かに歪む。何かが弾ける音が響く。当たりの水面が凹み、水が押しのけられる。出現した凹みに合わせて、双胴の戦艦が出現する。そして戦艦は、何事も無かったかのように、力強く水をかき分けて進む。
出現地点は第二護衛艦隊の後方二キロ地点。作戦通りの位置で、すぐにでも合流できる位置だった。
「伊〇一水域に到着。第二護衛艦隊は現在戦闘中。艦内各部署、異常ありません。」
唯乃副長の報告受け、靖國大佐は指示を飛ばす。
「作戦の第二段階だ。本艦を所定の位置に移動させるぞ。」
◇◇◇
「もへへ。陣形変更の指示が出たね。艦長。手はず通り機関後進にしてね。」
「了解しました。機関後進。面舵一杯。」
天の火は急速に減速しながら、右に船体を進める。他の艦も作戦に従って所定の位置につく。
その艦隊運動は輪形陣の尻が割れるように見える。誘導弾を迎撃しながら、艦隊はその腹に、双胴戦艦を抱える。
そして再び輪形陣が完成する。希望の前後を天の火、峯島で固め、巡洋艦と駆逐艦が外周を守る形になる。
「陣形の再編ができました。」
「諏訪中佐。ご苦労。」
「ようやく反撃開始です。手はず通りお願いします。」
靖國大佐は軽く深呼吸をして一拍置く。
「砲術長。副砲、高角砲。機銃は誘導弾迎撃。理力弾垂直発射装置も迎撃に使え。」
「了解しました。」
靖國大佐は敵艦を知覚する。敵の穢れは今でも濃厚で、いまだ健在だが、確実に穢れの量は減っている。
続けて思考無線で情報を集める。敵艦との距離は三五キロ。主砲の射程内で射撃体勢は整っている。
靖國大佐は艦内を知覚する。副砲、高角砲の同胞は一心不乱に誘導弾の迎撃に努める。機銃要員の射撃手は、本艦に向かってくる誘導弾に目を光らしている。ダメージコントロール要員は緊張して待機して、主砲の人員は命令を今か今かと待ち構えている。
靖國大佐は再び一拍置いて、部下に指示を下す。
「主砲、一番、二番、三番。撃て。」
四六〇ミリの主砲が一斉に火を噴く。九発の穢れ払いの曳光弾が、主砲から一斉に放たれる。砲弾は輝きながら弧を描き、巨大艦に向かって飛翔する。
続けて摩訶不思議装置で、“穢れ払い”の術を行使する。靖國上級大尉が行使した“穢れ払い”の術を上書きする。
装置によって拡大された穢れ払いの術が、さらに巨大艦の穢れを払う。放たれた誘導弾は支離滅裂な方向に四散し、その攻撃は一時中断される。
そこに主砲砲弾が敵巨大艦に直撃する。砲弾は穢れた巨大艦の内部で炸裂する。爆発は巨大艦の内部を穢れ払いの炎で焼く。炎が穢れの中を浄化し、その量を減らしていく。
巨大艦がのたうち回っているように、靖國大佐には見えた。穢れは依然大量に残っているが、確かな有効打に思えた。
◇◇◇
こうして戦艦希望も戦列に加わり、第二回戦が開始される。
穢れた巨大艦は、穢れた誘導弾を吐き続ける。その量は徐々に増し、弾幕合戦はさらに盛大になる。
そこに戦艦の艦砲射撃が加わり、徐々に敵巨大艦の穢れを削っていく。
形勢は徐々に傾きつつあるが、一つだけ予想には無かった事態が発生した。
「ほへ。また来たよ。上級大尉。」
「またか。誘導弾の迎撃をする。」
吾輩は穢れ払いの炎を摩訶不思議装置で増幅させ、穢れた誘導弾を真っ二つにする。これでもう三度目だ。
摩訶不思議装置は健在だ。二基同時で使用しているためか、装置の破損には至っていない。
「こうも何度も来られると気力が持たないぞ。」
吾輩はそう言うと、気力回復薬を一気飲みする。思考が研ぎ澄まされ、集中力が戻ってくる。薬の多用はできないが、当面は場をしのげるだろう。
「それにしても、なぜ天の火に集中するのだ。」
「そんなことボクが聞きたいよ。」
「理由が分からん。本当に軍医殿の二枚目が理由でも、吾輩は疑わんぞ。」
◇◇◇
形勢は次第に決定的になる。
双胴戦艦希望が戦列に加わり、巨砲により艦砲射撃が行われる。四六○ミリの曳光弾は、巨大艦の穢れを確実に削り、次第に姿が希薄になる。そして穢れの量が残り二割になった時に、新たな異変が起きる。
「海百足。形を崩して球形になりました。」
靖國大佐は艦外を知覚する。巨大艦の形が崩れ、凝縮される。
次の瞬間、圧縮された穢れは一気に破裂して、穢れが一斉に艦隊に向かってくる。
「穢れが破裂して、こちらに向かってきます。」
「各艦。穢れ払いの曳光弾を装填。残った穢れが一斉に降り注ぐぞ。」
靖國大佐は注意喚起を終えると、再び艦外を知覚する。
大小穢れの破片がこちらに飛翔してくる。穢れはそれぞれ形を変える。
小さな破片は魔法少女に姿を変える。また別の破片は漆黒の猛犬に姿を変える。少し大きい塊は、流行の巨大ロボットに姿を変え、また別の塊は巨大な大鷲に姿を変える。
各艦が穢れ払いの曳光弾を発射する。青白い光跡を描いて、穢れに飛来する。
七六ミリ弾が爆散し、巨大ロボットを浄化する。巡洋艦の主砲、一四〇ミリ砲弾が、巨大な一つ目の化け物を消し炭にする。希望の主砲が、魔法少女の団体客を丸焼きにする。その中に巫女姿が混じっているのは、些細な事だった。
大小さまざまな穢れを浄化する。その浄化劇をかいくぐり、数体の巨体が天の火に迫ってくる。
◇◇◇
「一分の六魔法少女。天の火に接近してくるよ。迎撃して。」
「一分の六。六分の一じゃないのか。」
吾輩はつまらないツッコミを入れると当時に、摩訶不思議装置で穢れ払いの炎を行使する。
吾輩は一体、二体と穢れ払いの炎で、可憐な姿を丸焼きにする。三体目に攻撃を仕掛けようとした時、摩訶不思議装置が壊れ視界が傾く。床が視界の半分を占める。足に力が入らない。
吾輩は倒れたのを知覚するのに、一、二秒かかった。気力を振り絞り立ち上がる。気力回復薬に手をかけた時瞬間、艦に振動が走る。
「もへへ。天の火に巨大な魔法少女が着艦したね。」
そう言うと軍医殿は駆け足で扉に向かう。
「上級大尉。着艦した穢れ、僕が退治に向かうよ。チミは少し休んでいて。」
軍医殿が早口で言うと出すと、一〇〇メートル七秒台の俊足で、甲板に向かった。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は穢れは叫びます。「ペプーリアは何所だ」と。
それではまたお会いしましょう。




