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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第四話 謎の巨大艦艇
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第四話 7 海百足対第二護衛艦隊

当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。


この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。


 永遠の夕焼けに水面に浮かぶ、赤銅色(しゃくどういろ)の巨体。瘴気(しょうき)を放って、否応なしに不気味さが増してくる。仮に誰かが排水量を目測で観測したならば、二〇〇万トンを超える巨大な船体だ。


 船体には、数多くの大小誘導弾発射機が、船体を覆っている。甲板にも垂直発射装置が、所狭しと()き詰められている。合理性を無視した、過剰な兵装配置。敵意をむき出し。この一言に尽きる。


 そして、巨体を装飾するのは数多の人魂。何かを求めるように艦の周りを漂う。


 一言で言うならば、幽霊船。しかしその敵意と大きさは、それをはるかに凌駕(りょうが)していた。


 そしてはるか遠くに、艦影が出現する。合計一〇隻。巨大な幽霊船に比べると、はるかに小ぶりな艦影だった。

 揚陸艦峯島(みねしま)を筆頭に、武装輸送艦天の火(あまのひ)、双胴巡洋艦一隻、双胴艦を含む駆逐艦七隻からなる艦艇が、円を描くように輪形陣を描く。第二護衛艦隊だ。


 第二護衛艦隊対巨大艦海百足(うみむかで)。推定総排水量で比べると二〇○対一〇。一見勝ち目がない戦が、今始まる。



◇◇◇



「伊〇一水域に突入。敵、巨大艦。敵艦より三五キロ地点に出現しました。」


 船務長からの報告が入る。敵艦から三五キロか。戦艦の主砲なら射程圏内か。そう悪い位置でもない。


「艦長。総員に戦闘配置についているね。」


「はい。総員配置に就いています。」


「もへへ。それは重畳(ちょうじょう)。それじゃあ作戦通り、速力一〇ノットで敵艦に向かうね。」


 第二護衛艦隊は敵艦に対して、三時方向に転舵しながら移動する。希望が水域に侵入した、邪魔にならないようにするためだ。


「敵艦。誘導弾を発射しました。」


 船務長の報告に、戦闘指揮所の緊張が一気に増した。吾輩も艦外知覚装置で敵艦を確認する。


 吾輩(わがはい)は敵艦を知覚する。誘導弾発射装置から誘導弾が発射され、甲板からも煙が上がる。垂直発射装置からも、誘導弾が発射されているようだ。


「艦長。諏訪中佐より迎撃命令が出たよ。主砲の射程に入り次第、迎撃を開始して。」


「了解しました。」


「上級大尉。穢れ払いの術を行使して。範囲は海百足。」


「了解した。」


 吾輩は軍医殿の命令通り、穢れ払いの術を行使する。穢れ払いの術が海百足を覆う。吾輩の術の効果は上々だ。巨大艦は苦しんでいるようで、誘導弾の幾つかが、乱軌道をえがいて、明後日の方向に飛んでいく。多少の効果はあるようだ。


 発射された誘導弾は艦隊に向かって、水面から二メートルほどの高度で飛来してくる。


 その誘導弾を駆逐艦の破壊光線が、片っ端から撃ち落としていく。天の火とのデータリンクとやらは、上手くいっているようだ。


 第二艦隊の駆逐艦の主砲は、理式一〇〇口径七六ミリ砲だ。この方は長口径で命中精度を高めている砲だ。破壊光線の射程距離は三〇キロで、実弾の射程距離は一八キロの理力砲だ。観測機器さえ十分に整っていれば、長射程の迎撃が可能だと、吾輩は記憶している。


 弾幕対弾幕。誘導弾を破壊光線が片っ端から撃ち落とす。


 しばらく拮抗した戦闘が繰り広げられていたが、弾幕の隙間を切り抜けてくる誘導弾が、艦隊に飛来する。


「誘導弾。主砲射程内に侵入。」


「迎撃を開始せよ。」


 天の火の一二〇ミリ単装高角砲も、破壊光線を発射する。弾幕の荒い目から抜け出た誘導弾を、確実に狙い撃ちにする。確かこの砲。泊地島に寄港した時に、改修を行った砲だと、吾輩は思い出す。


 二、三分の間、一進一退の攻防が続く。時折打ち漏らして天の火に向かってくる誘導弾飛んでくる。その都度天の火の射程の短い主砲が、確実に撃墜してくる。


 そう。誘導弾が天の火に向かってくる。それも全てだ。その報告は他の艦からも上がっている。


「もへ。諏訪中佐からの報告だね。どうやら天の火が目の敵にされているようだねぇ。」


「我々は何かやらかしたかな。」


 吾輩は冗談めかして軍医殿に尋ねる。無論、そんな物に心当たりはない。


「さぁねぇ。ボクが美男子の二枚目だから目の敵にしてるかにゃ。」


「自意識過剰だな。軍医殿。」


「そうだと良いんだけどねぇ。」


 軍医殿は火の付いていない葉巻を咥える。その時、穢れの量の増加を、艦外知覚装置を通じて感じた。


「海百足表面。穢れが増大しています。」


 吾輩は再び艦外知覚装置で確認する。敵艦の攻撃が止んだかと思うと、表面の穢れが増大して、誘導弾の形で、一気に噴き出した。


 数多の誘導弾を光線が撃墜していく。一気に噴き出した誘導弾は、艦隊の迎撃網を抜けて、四発の誘導弾が天の火に向かっていく。


「砲術長。」


「ダメです。間に合いません。」


「上級大尉。迎撃できる。」


「やってみる。」


 吾輩は摩訶不思議(まかふしぎ)装置を用いて、穢れ払いの炎を発生させる。青白い光線が、天の火の艦自体から発せられる。


 一発、二発、三発。誘導弾を次々と、穢れ払いの炎で溶断する。しかし残り一発が至近距離まで近づいてくる。


 吾輩はとっさに”氷の壁”の術を行使する。艦と誘導弾の間に氷の壁が出現する。突っ込んできた誘導弾は、氷の壁に衝突して大爆発を起こす。氷の壁は四散して、破片の幾つかは船体に当たる。


「この艦の摩訶不思議装置は頑丈だな。立て続けに術を使用しても、壊れる気配が無いな。」


「天の火には予備の摩訶不思議装置も積んでいます。それも稼働させているためでしょう。」


「摩訶不思議装置の二基稼働か。そんな手もあるのだな。」


 吾輩と艦長が会話をしていると、突然の振動が艦を揺らす。誘導弾の衝撃では無く、腹に響く低音の振動だ。


「もへへ。ようやく真打の登場だね。戦艦希望が到着したよ。」


 どうやら希望がこの海域に到着したようだ。吾輩が艦外を知覚すると、艦隊の後方に、双胴戦艦の巨体を確認できた。



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は戦艦希望が参戦した、第二回戦です。


 それではまたお会いしましょう。 

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