第四話 5 未知の巨大艦への対処
当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
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「いやな予感が的中したぜ。」
思念無線の会議で、八坂中佐が毒づく。
「まさか泊地島が、こちらを迫っているというのか。」
諏訪中佐も動揺を隠せないでいる。
「しかし、帰ってこいと言う声。儂には聞こえなかったの。」
「それはどういう事だ。」
浅間中佐の意見に、靖國大佐は不思議に思う。そう言えば、軍医や天の火の乗員も、この声が聞こえなかったという報告を思い出す。
「これは儂の憶測じゃが。泊地島生まれの同胞にしか、聞こえないのではないかの。その証拠に、儂は本国生まれじゃ。」
「つまり『我が民』は、泊地島生まれを指すという事ですか。」
そこまで言うと、諏訪中佐は考え込むが、すぐに考えるのを止める。
「泊地島の事は、予期しない懸念材料です。だが、我々の当面の問題は、巨大戦闘艦です。逃げ回るにせよ、迎撃するにせよ、対処が必要になります。」
そこまで言うと、諏訪中佐は資料を提示する。それは巨大戦闘艦の穢れの量を示す物だった。
「この資料に目を通して下さい。巨大戦闘艦の穢れの量です。先の戦闘で観測された物ですが、明らかに穢れの量が減っています。」
諏訪中佐が示した資料には、巨大戦闘艦の穢れの量が、少し減っている事が示されていた。
「ふむ。これはどういう事じゃ。」
「それって誘導弾の原料が、穢れって意味じゃねえか。」
「そうです。誘導弾に対処できれば、敵艦の穢れの総量が減ります。そうすれば勝機も見えてくるでしょう。」
「ちょっと良いかの。一つ確認したいのじゃが。」
浅間中佐が手を挙げて質問する。
「浅間中佐。どうしましたか。」
「その巨大戦闘艦。主兵装は誘導弾で良いのじゃな。」
浅間中佐の疑問は当然だった。諏訪中佐の考えは、相手の主兵装が誘導弾である事が前提だ。
大量の誘導弾に対応している隙をついて、大口径の砲撃を食らっては、致命傷になりかねない。
「それなら問題ありません。第一探査艦隊の戦闘により、敵艦の兵装は誘導弾が中心と判っています。」
そう言うと、先の戦闘時の映像と、観測結果を示す。敵艦の甲板から誘導弾が昇り、すぐさま向きを変えて向かってくる。垂直発射装置を装備しているのだろう。
他にも一目でわかる誘導弾発射装置。砲塔は見当たらない所を見るに、武装は誘導弾一辺倒だ。観測された情報もそれを裏付けている。間違っても、変形してロボットになる様な代物ではないようだ。
「なるほど、諏訪中佐の言いたい事は分かった。問題は、どの艦隊が相手するかだ。」
靖國大佐は念を押すように、様式美と言える台詞を諏訪中佐につきつける。
「我が第二護衛艦隊が、その任に適切と思います。それと戦艦希望にも参戦していただけると、敵艦に対しての打撃力になります。」
当然のごとく、間髪入れず名乗り出たのは諏訪中佐だった。
諏訪中佐が指揮する第二護衛艦隊は、旗艦に小型揚陸艦『峯島』を筆頭に、巡洋艦一、駆逐艦七で構成された艦隊だ。小型艦艇や戦闘機など、小さな敵の対処を念頭に置いた、小回りの利く艦隊だ。
配属されている駆逐艦の主砲は、速射性が高く射程も長い。おまけに命中精度も良好で、誘導弾の迎撃には一番うってつけだ。
そして対空砲火も最適化されている。そのため現在の帰還艦隊の中では、一番の防空能力を備えている。
「それと、第一探査艦隊の天の火をお貸しください。天の火の探知能力を、誘導弾迎撃に生かしたいです。」
「わかった。天の火を組み込むことを許可する。」
天の火の情報処理能力は、艦隊の中で一、二を争うほどの物だ。相手の実力が不明なため、誘導弾迎撃の効率を、少しでも上げておきたいと、諏訪中佐は考えていた。
「希望はどうする。真っ先に行って矢面に立つと、第二護衛艦隊の意味がなくなるぜ。」
「対空迎撃の最適化が終わっていない。今矢面に出しても、誘導弾は捌ききれないだろう。第二護衛艦隊の後をついて行く形になる。」
旗艦希望は厳密には完成していない。巨艦で数多の対空砲を装備しているため、対空迎撃の最適化が済んでいない。さらに摩訶不思議装置の件もある。
そして損傷についても、小型艦艇なら工作艦に収容して修理が可能だ。しかし双胴の巨大な戦艦だ。それなりの損傷を受けると、修理はまず無理だろう。
「ふむ。後からついて行くと言うと、航路とは別の回廊を使うのじゃな。」
浅間中佐は何かを察して、近海の航路図を確認する。
「今の航路だと、穢れとの会敵距離が遠すぎるぜ。その別の航路なら、敵との会敵距離は、戦艦希望の主砲射程内だぜ。」
八坂中佐の発言は、靖國大佐の思案を代弁する物だった。
「そういう事だ。しかし狭い水域を経由するため、希望到着まで第二護衛艦隊で戦線を支えてくれ。」
「了解しました。」
巨大戦闘艦に対する対応は決まった。次は細部を煮詰めるが、その前に靖國大佐から提案が上がる。
「第一護衛艦隊は、輸送艦隊の護衛に当たってくれ。他の穢れが狙ってくるとも限らない。」
「了解した。」
「戦闘はこちらから仕掛ける。それに先立ち、巨大艦に名前を付ける。」
名前を付ける事は呪術を行う時に有効だ。名称があれば、その分術に指向性を持たせることができる。
「で、案が無ければ、私が名前を付ける。」
そう言って靖國大佐が発表した名前は『海百足』。数多にある百足の足を、誘導弾に例えた物だ。この名前は代案も無かったため、すんなりと決まった。
「それではムカデ退治の詳細を煮詰めよう。」
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は、場面が武装輸送艦天の火に移ります。
それではまたお会いしましょう。




