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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第四話 謎の巨大艦艇
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第四話 2 謎の超巨大軍艦

当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。


この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。


 忘却の川は相も変わらず静寂に包まれている。川の流れは緩慢(かんまん)に流れ、夕焼けの太陽が、二四時間川を照らし続ける。


「伊〇一水域。次元強度は安定。航路幅も十分だな。」


 吾輩(わがはい)船務長(せんむちょう)からの報告に目を通す。板型端末に表示された数値は、水域を安全に通行できる数値だった。


「しかし(けが)れの数値が高いね。注意喚起は必要かな。」


「そうだな。とにかく一度、本隊と合流するかな。」


「そうだね。第一探査艦隊。これより帰還するよ。」


 艦隊は反転して、本隊に帰投しようとしたまさにその時、突然穢れの反応が強くなる。


「穢れの反応、一点に集中。ものすごい量の穢れが、後方に顕在化(けんざいか)します。」


 船務長の報告の通り、大量の穢れが顕在化を始める。


「艦長。急速離脱。(あま)()も最大船速。穢れは無視して、すぐに離脱するよ。」


 軍医殿は即座に反応する。普段の口調だが、気迫だけは全く違った。


「全艦。第一種戦闘配備。全速前進。この海域から離脱するぞ。」


 吾輩の命令で艦は急加速する。慣性制御が効いている艦に、急加速の衝撃が響く。


 艦内に警報が鳴り響き、慌ただしくなる。各々が急いで持ち場に着く。


 吾輩は艦外知覚装置で、穢れを確認する。


 紅くどす黒い穢れが、艦後方に集まる。それも尋常じゃ無い量だ。その塊は艦の大きさ、いや、それ以上の大きさだ。まるで島のような大きさにまで肥大化する。


 大きく肥大した穢れが顕在化する。


 顕在化した姿を見た時、吾輩は驚きを隠せなかった。


「これはとんでもない物だな。」


 観測している観測員からも、一斉に報告が入る。


「穢れが顕在化。これは、軍艦です。島のように大きな軍艦です。」



◇◇◇



 大量の穢れは巨大な軍艦へと姿を変える。報告に合った通りの巨大な軍艦だ。


「船務長。超巨大艦の穢れの規模は分かるか。」


 吾輩は船務長に確認を取る。逃げの一手とは言え、唯尻尾を巻いて逃げてきましたでは困るからだ。せめて情報だけでも持ち帰る必要がある。


「穢れの規模は六個師団です。その穢れが一隻の軍艦に姿を変えています。」


 六個師団の穢れ。第一探査艦隊では、逆立ちしてもかないっこない規模だ。


「船務長。穢れの速度はどうだ。」


「穢れは停滞しています。おそらく忘却の川の流れに乗って、下流に下ると思われます。」


 追ってこないところを見ると、顕在化したばかりで速力が出ないのだろう。ならば、そのまま距離を放して、逃げ切ってしまおう。


「天の火より、水域離脱の連絡がありました。」


 通信士からの一報。速力の早い天の火は、一足先に水域に離脱したようだ。別の水域に移れば、別空間だから追撃を完全に振り切る事ができる。


「天の火には、本隊に合流するように言って。艦長。天の火は海域を離脱したようだね。後はこの艦だけだよ。」


「我々も一刻も早く、当水域を離脱するぞ。」


 吾輩は、摩訶不思議(まかふしぎ)装置で、“穢れ除け”の術を行使する。穢れに対しての防御力を付与する。


 続けて“二回行動の秘術”を行使する。吾輩が開発した術の一つで、対象の反応速度、反射速度が格段に上昇する。これでより的確に、より手早く誘導弾を迎撃する事ができる。


 吾輩は艦外を知覚する。超巨大艦は、先ほどより遠くにいる。このまま行けば逃げ切れるだろう。


 吾輩が安堵した直後、超巨大艦からおびただしい噴煙が立ち上った。


「レーダーより確認。敵誘導弾多数。本艦に向かってきています。」


「全対空砲火。誘導弾を撃墜せよ。」



◇◇◇



 超巨大艦から放たれる、無数の誘導弾。銀山の艦尾に食らいつく。


 後部副砲が理力(りりょく)砲で、片っ端から誘導弾を迎撃する。


 多目的誘導弾発射装置が、接近してくる誘導弾に向かって誘導弾を発射する。しかし数多(あまた)の誘導弾に対して、あっという間に誘導弾を使い切る。次弾装填(そうてん)している間にも、敵誘導弾が迫ってくる。


 そして機銃が破壊光線を発射して、撃墜しきれていない誘導弾を撃墜する。


「敵誘導弾。多すぎます。」


「艦尾誘導弾。全て発射しろ。」


 艦尾から多目的誘導弾が発射され、敵誘導弾を撃墜する。しかしそれでもまだ足りなかった。


「敵誘導弾の直撃、来ます。」


 吾輩は摩訶不思議発生装置を使って、艦尾に氷の壁を出現させようとするが、装置の反応がない。どうやら“二回行動の秘術”を使った時に、摩訶不思議装置を壊したようだ。


 突然、猛烈(もうれつ)眩暈(めまい)と吐き気に襲われる。気力がごっそり抜けて、体のバランスが崩れ片膝(かたひざ)をつく。術を使いすぎて、理力が尽きかけた時の現象だ。どうやら“二回行動の秘術”を使った反動が、今になってきたようだ。


「総員、衝撃に備えろ。」


 命令した直後、誘導弾が直撃する。爆発の衝撃が、念力防壁を二割ほど削る。二発、三発と次々と命中する。そのたびに艦を激しく揺さぶる。


「あともう少しで、水域を抜けます。」


 航海長の報告。しかしまだ気は抜けない。そんな事を考えていると、七発目の誘導弾が命中する。壁が崩れる嫌な感覚を、艦外知覚を通して感じた。


「念力防壁、消滅しました。」


 船務長からの凶報だ。念力防壁の修復が追い付かず、ついに念力防壁が崩壊した。


 しかし、真の凶報はこの直後だった。水域を離脱する直前に、八発目の誘導弾が命中する。


「誘導弾艦尾に命中。」


「被害状況を知らせろ。」


「後部艦橋より報告。第八機銃座が吹き飛びました。」


「ダメージコントロール班。至急、第八機銃座にむかえ。」


 機銃座には一名、機銃座で迎撃する人員が配置されている。当然第八機銃座も例外ではない。


「水域を離脱。超巨大艦を振り切りました。」


 航海長の報告が、危機を去ったことを告げた。


「ボクも行ってくるよ。艦長。指揮を任せた。」


 そう言うと軍医は戦闘指揮所を離れる。第八機銃座にいる怪我人の手当てに当たるのだろう。



◇◇◇



 ダメージコロール班が見たのは、左半身が吹き飛んだ同胞の姿だった。


 軍医殿もその場に駆け付けた。しかしできた事と言えば、死亡の確認だけだった。


 帰還作戦での初の戦死者。それを吾輩の艦で出してしまった。吾輩は悔しさのあまり舌打ちをする。


「船務長。艦尾の状況はどうだ。」


「第八機銃座があった艦尾左側甲板が損失しています。」


 吾輩は船務長が作成した資料に目を通す。ちょうど第八機銃座があった場所が、削れて無くなっていた。


「航海長。艦の航行に支障はあるか。」


「航行には支障はありません。」


 吾輩は深い深いため息をつく。胸に溜まったわだかまりを一斉に吐き出して、気持ちを整理する。


「これより本隊に合流する。」


 吾輩はそう言うと、艦長席に深くもたれ掛かった。



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は巨大艦についての会議ですが・・・。


 それではまたお会いしましょう。 

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