第四話 1 士官会食”寿司”
当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
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靖國上級大尉の航海日誌
一三日目。数日前から穢れた集まる兆候が確認された。そして穢れが一点に集中した時に、巨大な艦影に姿を変え襲い掛かる。
「もへへ。ちょっといいかな。二つ三つ、確認したい事がるんだ。」
吾輩と軍医は、食堂の一角で昼食を取っている。吾輩達は時折、食事をとりながら現状を確認している。
吾輩達が食べている戦闘糧食は、『戦闘糧食二三号 寿司』だ。寿司ネタを一つ一つ梱包して、それをひとまとめにする。甘味は無く、粉末の緑茶が二つ付く。
飴玉の感覚で袋を開けて食べる。戦闘糧食のため、“保存”の術で味と鮮度は保証されているが、風情は全くない戦闘糧食だ。
「どうしたのだ。」
吾輩は玉子の封を開けて口に運ぶ。玉子がある時は、一個目は玉子と決めている。玉子は少し甘めの味付けがしてある。酢飯と卵の組み合わせを、吾輩は受け入れて飲み込む。
「最初に穢れについてかな。この数日、穢れの反応が出たり消えたりの繰り返しだよ。」
続いては揚げ茄子だ。一口で食べると、確かに茄子だ。わさびが茄子の味を引き締めている。海鮮の代わりに茄子をネタにする。これはこれで面白いと思った。
「僕の意見だけど、穢れが一か所に集合する時の反応だよ。何か良からぬことが起こらなければいいけどね。」
「よからぬことか。どういう意味で良くないのだ。」
「穢れが過度に集まる場合、誰かが穢れを集めている場合がほとんどだよ。」
中トロを頬張る。赤みの旨さとトロの油が重なり合う。その味の良さは、まさに寿司を代表すると言っても過言ではない。
「だが、誰か分からなければ、対応は後手に回るしかないだろう。」
「うん。けど、頭の片隅に入れてほしいよ。この航海、未知の事が多々起こると思うんだ。」
赤貝を一口齧る。歯ごたえのある触感と後からジワリと出てくる貝の旨味。実に美味い。
「次の件だけど、八坂中佐についてかな。あの人とはあまり面識が無くてね。チミは面識があると聞いたよ。」
「八坂中佐か。確かに世話になったな。」
「チミの視点で構わないから、八坂中佐について教えてほしいね。」
次は大トロだ。脂がのって美味しそうだ。大トロを一口食べる。トロの油の旨味があふれ出す。美味い油が口いっぱいに広がる味は、もうたまらない。
「また唐突だな。」
「人心を知る事も軍医の務めだよ。簡単で構わないよ。」
「そうだな。親父よりも人心の掌握が上手いと思うな。」
吾輩の目の前にはまだいが鎮座する。真鯛を食べた瞬間、偶然にもわさびが舌を刺激した。しかしこれはこれで、真鯛の旨味を引き出している。
「と言うと、どゆこと。」
「親父は成績を評価基準にする節があってな。適材適所が苦手な節があったな。」
「なるほどねぇ。」
えびを食べ終えて、いくらの軍艦の攻略を開始する。噛むごとにいくらが潰れて、中身が舌に飛び出す。いくらの味は吾輩好みでは無いが、これはこれで悪くない。
「それに比べて八坂中佐は、実際に人が何をやっているかを見ていたな。そのためか人心掌握は親父よりはるかにましだな。」
吾輩は大きな口を開け、ホタテを一口で食べる。ホタテの旨味とかすかな甘味が、口いっぱいに広がる。シャリがうまみをさらに引き立たせる。
「技術者らしくない性格だねぇ。先の選挙で負けたのが、信じられないくらいだ。」
「あれは穢れ溜まりの件があったからな。冷徹な理詰めの論争の場合、親父に軍配が上がる。」
ネタを取り出すと、カニと書かれていた。何とカニまであるのかと、吾輩は驚く。
いざネタの先端を齧ると、確かにカニの味がする。カニの汁が口の中に広がる。カニはあまり好きでは無いが、カニとシャリの不思議な組み合わせに、斬新さを覚えた。
「それと先見性もあるみたいだねぇ。この間の摩訶不思議発生装置の件を見ても、そう思ったね。」
「吾輩の黄金石炭鋼の時にも、とても世話になったな。」
「八坂中佐に関しては多少分かったね。」
副将に鮭が控えている。艶のある旨そうな鮭だ。レモンの味がする。レモンをかけてあるようだ。そして鮭の味が舌に転がり、レモンと鮭の組み合わせに、吾輩は満足する。
「最後だけど個人的な事かな。チミ、銀山艦長職の人選。靖國大佐の人選みたいだね。」
「やはりそうだったか。」
そしてついにウニだ。吾輩の好物だ。ウニ軍艦は、とても美味しそうだ。一口で食べるのはもったいない。吾輩は軍艦の半分を齧る。
ウニの独特の旨味が吾輩の下を刺激する。そして噛み砕いた汁には、確かな甘味が存在し、口全体に広がる。そして一拍置いて、ウニの濃い味が舌全体に広がる。吾輩はこの瞬間が大好きだ。
「やはりという事は、予感はしていたみたいだね。」
「そうだな。親父はどうも、吾輩を手ゴマにしようとした節があるからな。」
「で、チミ自身はどうなのかな。」
「馬鹿げていると思うな。」
そして最後にお茶を一口すする。実に良い戦闘糧食だった。人気があるのも頷ける話だ。戦闘糧食で美味い寿司を食らう。これこそ贅沢と言う物だろう。
「おや。一刀両断だねぇ。」
「だが事実だからしょうがない。派閥争いの類は実にくだらない事だ。」
そう言うと吾輩は、もう一度お茶を啜る。今度は一人でゆっくりと味わいたいものだと思った。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は水域探査中に穢れと遭遇します。
それではまたお会いしましょう。




