第三話 11 迷宮の完成。そして帰還。
当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
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迷宮起動日当日。吾輩は迷宮の三階、迷宮の中枢の部屋にいる。
他の人員はすでに艦に乗艦済みだ。軍医殿が吾輩を運ぶために、迷宮の入り口で戦闘機に乗って待機している。
「軍医殿。これから迷宮を起動させる。」
「こちらペプーリア。これから迷宮を起動させるよ。」
「了解しました。本艦は離脱準備ができています。」
吾輩は拳銃を構え精神を集中させる。
銃に理力を込め、理力を装填している弾薬に注ぎ込む。
理力の注入を終えると、呪文集大書に向かって、引き金を引く。
フリントロックガンの火打石が、鉄の部品とぶつかって火花を放つ。火花が黒色火薬に火をつけ、銃身内の火薬に火をつける。銃身内の火薬が爆発し、銃弾を押し出す。押し出された銃弾は粉々になり、理力を一方向に放射する。
白い煙が視界を遮る。黒色火薬の燃焼によるものだ。火薬が燃焼する心地良い匂いが、吾輩の鼻を刺激する。
その直後、迷宮の魔方陣が光り輝く。そして島全体が揺れ始める。
吾輩は“飛翔”の術を行使して、窓に飛び出す。空中に飛び出すと、戦闘機はホバリングして待機していた。
「上級大尉。早く乗るんだ。」
吾輩は、副座式の戦闘機の後部座席に乗る。吾輩が乗ったのを確認すると、戦闘機は急上昇する。そして信じられない加速度で、銀山に向けて飛んでいく。
殺人的な加速に体を押さえつけられること一分。島の沖合に停泊している銀山の後部甲板に着艦する。
「ボク達は到着したよ。離脱を開始して。」
吾輩と軍医殿は急いで艦の中に入る。艦は島とは反対側に航行する。
海が荒れ、波が大きくなる。吾輩達が艦の中に入ると、艦全体に結界が張り巡らされる。
「特異点の状況はどうだ。」
吾輩は戦闘指揮所に入るなり確認する。その足で艦長席に座る。軍医殿も一緒で、吾輩と同じように司令官席に座る。
「特異点。不安定になっています。崩壊まで残り三〇秒。」
船務長が答える。若干悲鳴のようにも聞こえる。
「全艦。衝撃に備えろ。」
艦全体に振動が伝わる。波と振動が、銀山を揺さぶる。
「残り一〇秒。」
振動がさらに強まる。吾輩が艦外知覚装置で艦の外を確認すると、島があった場所は巨大な穴になって、周りの水を飲み込んでいる。
「三、二、一、特異点崩壊。」
まるで爆発のような衝撃が艦に走る。そして次の瞬間、まるで何事もなかったかのように、静けさが訪れる。
「レーダーに反応アリ。友軍です。」
戦闘指揮所に安堵の声が広がる。
吾輩は艦外を知覚する。そこには天の火と一隻の駆逐艦の姿がある。忘却の川に帰還した実感が湧いてきた。
◇◇◇
「どうやら無事に帰還したみてぇだな。」
「手間をかけちゃったね。」
八坂中佐は艦隊の思考無線で、第一探査艦隊の無事を確認する。
「一六時間。こちらでの時間だ。俺達は低速で忘却の川を遡っているぞ。第一探査艦隊も、至急合流しろ。」
第一探査艦隊に航路の資料が転送される。軍医はそれを受け取り、航路を確認する。
「航路を送ったぜ。それに沿って忘却の川を遡ってくれ。」
「了解したよ。」
返答した軍医は、何かを思い出したように、疑問をぶつける。
「八坂中佐。一つ質問。ボク達が作った迷宮。あれどうなっちゃったんだろうね。」
「どうなんだろうな。島ごと消滅したんじゃねえか。」
八坂中佐はそっけなく言う。忘却の川の研究はあまり進んでいないため、どうなったか分からなかった。
「そうなんだ。結構な力作だからちょっと残念だなぁ。」
軍医はそう言うと頭を掻く。その表情は、確かに残念そうにしている。
「ところでよぉ。軍医。おめえから見て、靖國上級大尉。あいつ艦長としてどう思う。」
「もへ。唐突だね。艦長よりも術師の方が向いているかな。」
軍医は一瞬だけ思案して言葉を続ける。
「艦長としては及第点。能力は平凡かな。けど、とっさの判断力は悪くないと思うよ。摩訶不思議発生装置の件を見て、そう思ったね。」
「いや、それならいいんだ。変な事を聞いたな。」
軍医は黄金の葉巻をとりだして咥える。歯切れの悪さから、悩みがある事を瞬時に見抜く。
「僕で良ければ話を聞くよ。カウンセリングも軍医の仕事だよ。」
八坂中佐は少し迷って答える。
「まあ、気が向いたらな。」
そう言うと、八坂中佐は思考無線を閉じる。
「もへへ。何か私的な事情がありそうだねぇ。」
軍医は閉じた思考無線に、独り言を送信した。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は一話分お休みを頂き、6月16日の投稿になります。
いよいよ明確な敵が出現しますが、次回は食事中の会話から始まります。
それではまたお会いしましょう。




