第三話 9 決戦のバトルフィールド
当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
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吾輩は三階に足踏み入れる。ここが最後の階だ。
コンクリートの柱と中央に黄金色の魔方陣。そして広い空間が広がっている。
「ここが決戦のバトルフィールドだぁ。」
「そうか。それにしても力作ぞろいだな。」
吾輩は三階を見回した。壁際には様々な形の像が立てかけられている。
その大きさも様々だ。全長三〇〇ミリほど小犬の置物から、床と天井を支える巨人アトラスを連想させる、天井を支える巨像まで様々だ。
「靖國上級大尉。この艦の乗員、何故か木の扱いが上手なのが多いねぇ。」
「艦の建造に携わっていたからだろう。」
「艦ねぇ。ああ。黄金石炭鋼の木造艦か。」
泊地島の住人の内、半数以上が艦の建造に携わっていた。そして艦の原材料は木材。そのため木材の扱いに長けた人材が多かった。
「粘土人形。調整完了しました。」
部屋の中央に淺糟軍曹がいた。人形の調整作業に苦労したのか、見るからに疲れた様子だった。
「その様子だと、ずいぶん苦戦したようだな。ご苦労。」
「ご苦労様だねぇ。」
吾輩は淺糟軍曹から、呪文集大書を受け取る。
「少し試運転をしてみるか。」
そう言うと、吾輩自身を攻撃するように命令する。人形は吾輩に襲い掛かる。その動作は淺糟軍曹を連想させる。
吾輩は人形の拳を難なく回避する。思った通り鈍重だが、素人には危険な一撃だ。
二発、三発と、人形は拳を繰り出してくる。吾輩は人形の出来栄えを見ながら、これらも難なく回避する。
少しの間、人形の性能を確認した後、攻撃に移る。
吾輩は鉄拳の一撃を叩きこむ。人形の鈍重な動きではかわしきれず、拳はわき腹に命中する。
拳は予想通り、粘土の塊に打ち込んだ感触だ。それ以上でもそれ以下でもない。
「止まれ。」
吾輩は人形を停止させ、拳を打ち込んだところを、“修復”の術で修復する。
「この人形、意外といい動きをしていたね。ボク達の足元には及ばないけど。」
「この動きは、淺糟軍曹が調整したものだ。淺糟軍曹の動きを手本になっているのだろう。」
吾輩は人形を元の位置に配置させる。
「それじゃあ、この人形。淺糟君並みの強さがあるのかな。」
淺糟軍曹をまじまじと見ながら、軍医殿は言う。
「吾輩が教えた方法では、そこまでは無理だ。本人の動作を元にしているからな。もっともそれ以外の方法なら、話は別だが。」
「そうなんだ。」
吾輩は人形を元の場所に戻す。そして軍医殿の方に向き直り、質問する。
「呪文集大書を安置する台座はまだのようだな。」
「それなら今日中に完成する予定だね。ここに配置する予定だよ。」
軍医殿は配置予定場所を指さす。そこは分かりやすく、黒塗りで示されている。
「分かった。それでは、この本を軍医殿に預ける。台座を設置次第、機関科一同に仕上げ作業を行うように、指示してくれ。」
「わかったよ。それともう一ついいかな。」
「どうしたのだ。」
吾輩は身構えた。この迷宮を、さらに手の込んだものにするのかと思ったからだ。
「そんなに身構えないでいいよ。ちょっと木材を補充しようと思うんだ。艦の資材用にね。」
「ああ、そういう事か。」
「そ。手の空いた人員で、木を伐採しようと思うんだ。」
吾輩は内心安堵した。至極まっとうな考えだったからだ。
「わかった。細かい事は軍医殿に任せる。吾輩はこいつの相方を作らないといけないからな。」
そう言って人形を見やる。粘土の人形は普通の像のように、佇んでいる。
「わかった。明日以降、伐採の方にも人員を割くよ。」
「そうしてくれ。ただし、森の物の怪などには注意してくれ。」
「それなら大丈夫だよ。既にドリアードを二体、退治しているよ。」
吾輩はため息をつく。どうやら注意が遅かったようだ。ひょっとして、軍医殿自らが退治したのだろうか。
「できれば、あまり事を荒立てないでくれ。」
「善処ちよう。」
軍医は大威張りで言う。その姿に一抹の不安を覚えた。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は、迷宮改造の大詰めになります。
それではまたお会いしましょう。




