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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第三話 銀山遭難
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第三話 2 落とし穴の底

 当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。


この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。


 吾輩(わがはい)は振動が収まったのを確認すると、戦闘指揮所を見回す。全員無事のようだ。


 続けて艦外知覚装置を用いて、艦の外を知覚する。


 空は青く、空は快晴だ。先ほどまでいた忘却の川とは違い、太陽の光が頭上から差し込む。この間訪問した初めの世界と同じ、閉じた世界のようだ。


「総員、状況を確認。通信士。他の艦との連絡はとれるか。」


「少々お待ちください。」


 吾輩は通信士の返答を待つ間、艦内の思考無線のやり取りを確認する。半分は混乱を報じる内容だ。だが次第に現状を報告する内容が増えていく。結論からすると、大きな問題は無い様だ。


 改めて艦外を知覚すると、小さな島を発見した。それも近い距離だ。


「艦長。他の艦との通信は可能です。ただし思考無線のみです。」


「それは良かった。船務長。艦の損害はどうだ。」


「艦に損害はありません。」


 船務長はすぐに回答を出す。どうやら航行するのに問題無いようだ。


「落とし穴に落っこちたねぇ。」


 軍医殿は指揮官席で足を組んでいる。そして黄金の葉巻懐から出し咥えた。


「ここは閉じた世界のようだね。」


「そのようだな。」


 軍医殿は黄金の葉巻を取り出して咥える。


「ところで天の火も一緒かなぁ。」


 天の火も同じ艦隊に配属されていた。艦外を知覚したが、天の火の姿は見当たらない。


「船務長。友軍の反応はどうだ。」


「ありません。この海域には本艦しかいません。」


「天の火より入電。本艦の安否を尋ねてきています。」


 安否を尋ねているという事は、天の火は忘却の川にいるという事だろうか。


「それと天の火は、忘却の川にいるようです。艦の損害は一切ないとのことです。」


「それは良かった。」


 とりあえず、自分達の心配だけをすればよい事が分かった。それだけでも事態は多少ましだ。


「上級大尉。あの小さな島。艦の装置を使って、ちょっと調べてみて。」


「了解した。船務長。あの島を観測装置で探査してくれ。」


 吾輩は軍医殿の命令を実行させる。目印になる物がある場合。最初に調べるのは当然だろう。


 吾輩は観測結果が出るまでの間、脱出方法を模索する。思考無線で次元航行についての資料を検索する。


 そもそも帰還艦は忘却の川を遡る。実はこれ自体、異次元を航行する船である事を示している。当然異次元を航行する船なら、この次元断層を脱出する術はあるはずだ。


 吾輩は軍医殿を見る。一見火の付いていない葉巻を吹かしているが、思考無線で次元航行の資料を、ものすごい勢いで漁っているのが確認できる。


「軍医殿。何か良い知恵はあるか。」


「うーん。どうだろう。今のところは何も言えないねぇ。」


そんな会話をしていると、船務長からの報告が上がる。


「探査終了しました。結果をご覧ください。」


 船務長からの報告に、吾輩と軍医殿は食らいつく。思考無線で報告書を確認すると、軍医殿が早々に口を開く。


「チミ。この島、やっぱり特異点だったみたいだね。」


「特異点だと。」


「そう。『次元断層と断層を形成する核』っていう資料を見てよ。」


 軍医殿は一つの資料を提示する。吾輩は思考無線でその資料を開く。


「その資料の中に『次元歪み係数と、次元固定係数の関係の矛盾』の項目。これ今回の件に該当するよ。」


 軍医殿が示した項目と、実際の観測結果を照らし合わせる。次元歪み係数は高め。この数値が高いと、次元が歪んでいる事になる。次は次元固定係数も高め。これはその空間が安定して存在している事になる。


 空間が歪んでいるのに、空間が安定している。一見矛盾しているこの観測結果を、整合させる状況が存在すると、資料には書かれている。


「つまり、どこかに歪みの特異点があり、その特異点にと周囲の空間を切り離せば、周囲の空間は正常化するという事だよ。」


「理屈は分かったが、どうやって特異点を切り離すのだ。」


 吾輩の質問に、軍医殿は頭を掻いて答える。


「それに関しては島を調べてみたいと分からないね。」


「分かった。さっそく上陸班を編成する。“飛翔(ひしょう)”の術が使える者を中心に、人員を集めよう。」


「上空から観察するんだね。理力は持つかにゃ。」


「大丈夫だろう。幸い、それほど大きい島では無いからな。」


 吾輩はそう言いながら席を立った。



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は島の探索を行います。


 それではまたお会いしましょう。 

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