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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第三話 銀山遭難
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第三話 1 落とし穴型時空歪み

 当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。


この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。

 靖國(やすくに)上級大尉の航海日誌


 六日目。回廊の一角に不安定な個所があった。観測役として我が艦が不安定な個所を観測する。当初は順調に通行していたが、予期せぬ事態が発生する。



◇◇◇



次元震(じげんしん)発生。また発生しました。」


 船務長の報告に軍医殿は眉をひそめる。


「この支流の一角。避けて通っているけど、はてさて。」


 吾輩(わがはい)達は忘却の川の支流の一角に、不安定な個所を発見した。帰還艦隊は現在、この不安定な一角を避けて、川上に航行している。


 第一探査艦隊は念のため、不安定な個所を警戒している。警戒してどうなる物かと、内心思っているのは、腹の内の話だ。


「この次元震の反応。落とし穴型の次元歪(じげんゆが)みだね。」


「確かにそうだな。」


 吾輩は軍医殿の方を見る。いつものように、火の付いていない黄金の葉巻を咥えている。


 落とし穴型の次元歪み。忘却の川には、まれに時空が不安定な場所がある。その中の一つに、落とし穴型の次元歪みと言う物がある。


 時空の歪みに巻き込まれると、狭い閉じた空間に閉じ込められる。彼方に落ちていく感覚に襲われて、狭い空間に閉じ込められることから、落とし穴型と命名されているようだ。


 艦を小刻みに揺らす振動が発生する。頭に響く不快な振動だ。


「次元震発生。」


「さっきのより大きいね。」


 先ほどから度々起こる次元震。これが先ほどから不定期に発生している。


「で、この次元歪み。これを避ける案は無かったのか。」


 吾輩は今まで黙っていた事を口にする。命令に不満が無いと言えば(うそ)になるが、もっと安全策があったのではと、思ったからだ。


「あったけど、この航路が一番の近道だからね。多少の危険を払ってでも、通る価値があると判断されたんだよ。」


 吾輩は小さくため息をつく。そして、ため息だけでは吐ききれなかった不満を口にする。


「近道という事は、遠回りの道もあったという事だな。そっちは考慮しなかったのか。」


「そっちは二週間余計にかかるって、観測結果が出たみたいだよ。あちこち遠回りしていたら、食料が持たないって判断したようだね。」


「そうか。それなら仕方ないようだな。」


 吾輩は再び、軽くため息をつく。腹の底に残ったわだかまりを、ため息とともに吐き出した。



◇◇◇



 靖國大佐は艦外知覚装置を使って、帰還艦が安全に航行しているか確認している。


 最後の一隻の輸送艦が、不安定な区画を通り過ぎて、無事に渡り終える。


「輸送艦隊は通過を終えました。」


「そうか。後は第一探査艦隊のみだな。」


 輸送艦隊の無事な通過に、靖國大佐は安堵(あんど)する。ここまでは問題なく事が進んだ。


唯乃(ただの)副長。第一探査艦隊に通過するように伝えてくれ。」


「了解しました。」


 靖國大佐は板型端末の数値の一つを確認する。次元安定係数〇・五。この数値は、空間が不安定である事を示す数値だった。



◇◇◇



「旗艦から通過命令が来ました。」


 船務長の報告に、吾輩は内心安心する。念のため、艦外知覚装置を用いて、最後の一隻が上流に向かっていくのを確認した。


「それじゃあボク達も後に続こう。」


「次元震発生。今までよりも大きい物です。」


 その直後、艦全体に振動が走る。まるで地震のような揺れが響き渡り、艦が右側に傾く。そして何かに落ち込んでいくような錯覚を感じる。


 吾輩は酷い眩暈(めまい)倦怠感(けんたいかん)に襲われた。次元の境界線を通った時の感覚にそっくりだった。



◇◇◇



「大変です。巨大な次元震が発生。銀山が水面に沈み込んでいきます。」


「なんだと。」


 靖國大佐は、とっさに艦外知覚装置を用いて銀山を知覚する。銀山は右に三〇度ほど傾いた状態で、急速に水面下に沈み込んでいく。


「唯乃副長。時空測定の結果を報告。」


「了解。時空測定の結果は、落とし穴型の時空歪みです。銀山は次元の狭間に引きずり込まれています。」


 唯乃副長が報告している間にも、銀山は水面に没していく。あれよあれよという間に、銀山は忘却の川の水面に没していった。



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は現状確認になります。


 それではまたお会いしましょう。 

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