第二話 12 吾輩が修理するのは、壊したからではない
当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
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「さてと。摩訶不思議装置の部材は、これで全てだな。」
先の戦闘から一日経過した。
輸送艦隊から予備の摩訶不思議装置を受け取り、壊れた装置を受け渡した。装置の取り付けはそれほど難しくない。非番だった淺糟軍曹も駆り出して、装置の取り付けを手伝ってもらっている。整備の腕を買っての事だ。
で、艦長である吾輩が、なぜここに居るのか。無論、吾輩が壊したと言うつまらない理由ではない。
理由はもっと深刻だ。吾輩より理力工学に習熟した人員がいない。一言で言うと人材不足だ。
いや、輸送艦隊の工作艦には、吾輩より理力工学に習熟した人員は沢山いる。そういった連中は、いざという時の艦の修復や、部品の製造や修復を行っている。今頃、摩訶不思議装置の修理に追われているだろう。
ちなみに、理力工学と言うのは、術と機械工学の融合と考えると良い。
「この部品、調整が面倒なのだがな。」
吾輩はそう言うと、直径五〇ミリの円柱の部品を手に取る。この部品が最も調整が大変な物だ。
吾輩は蓄音機のような調整器に円柱を取り付ける。蝋管に魔法の杖を差し込んで、回しながら理力を送る仕組みになっている。
吾輩は不意に、微かな気配を感じる。気配を殺したような気配だ。
「もへへ。この蓄音機は何じゃらほい。」
殺した気配の正体は軍医殿のようだ。
「円柱部品調整器だ。理力工学絡みの部品を、調整する装置だ。」
吾輩は、魔法の杖替わりの功労勲位杖を、蝋管に差し込む。
この功労勲位杖。一言で言うとありがたい錫杖だ。吾輩はそれを鈍器代わりにしている。
杖に理力を送り込みながら、取手を回して筒状の部品を回転させる。理力を均等に流し込み、部品の微調整を行う。
「そうそう。この装置、過負荷に気をつけて使えって、通達が来たよ。」
「まあ、そうなるだろうな。」
吾輩は相槌をつく。急に仕様変更はできないから、当然の通達だろう。
今後は摩訶不思議装置と相談する形で、どの程度無理が効くか、見極める必要がある。
「それと装置のフィードバックの件。さっそく考慮するみたいだね。貴重な資料だと、八坂中佐直々の礼が来ていたよ。」
「発案者直々の礼は良いが、あの人、護衛艦隊の司令官だろう。職務放棄して、改善に取り組まなければ良いがな。」
吾輩は冗談半分で軽口を叩く。しかし、八坂中佐はやりかねないと、腹の底で思っているのは、ここだけの話だ。
「八坂中佐って、マッドサイエンティストかなぁ。」
「違うだろう。そんな人が分艦隊司令になったら、別の意味で問題だがな。」
とりあえずこういう事にしておこう。
「艦長。装置の取り付け、完了しました。」
「ご苦労。淺糟軍曹。」
淺糟軍曹が装置の取り付けを完了させる。装置自体はあまり複雑ではない。今、吾輩が調整している部品。この円柱部品の調整が難しいのが欠点だ。
「この装置の調整が難しいのは、この部品の調整かな。」
軍医殿は、淺糟軍曹が組み立てた装置を眺めて言う。
「いや。正確には、この部品の製作する時。製造過程での調整が難しいようだ。」
「それじゃあ、チミのやっている調整はどうなのかなぁ。」
「吾輩が使用するための調整だ。部品の精度の問題ではない。」
そんな雑談をしている間に調整が終わる。吾輩は軽く理力を流す。筒状の部品の表面に理力が流れ、均等に発散した。調整がうまくいった証拠だ。
「これで良し。」
吾輩は円柱部品調整器から円柱部品を取り出す。この部品が装置の中核となる部品だ。円柱を装置に組み込み、動力を入れる。低い振動音を発して、装置が正常に起動したのを確認する。
「これで良し。淺糟軍曹。この装置の微調整を行う。手伝ってくれ。」
「了解しました。」
「それじゃあ、ボクは先に戻っているから。」
戦闘指揮所に向かう軍医を見送る。吾輩は淺糟軍曹と共に、装置の微調整に取り掛かった。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回からは第三話。双胴巡洋艦銀山の遭難の話になります。
それではまたお会いしましょう。




