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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第二話 初めの世界への訪問
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第二話 12 吾輩が修理するのは、壊したからではない

 当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。


この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。


「さてと。摩訶不思議(まかふしぎ)装置の部材は、これで全てだな。」


 先の戦闘から一日経過した。


 輸送艦隊から予備の摩訶不思議装置を受け取り、壊れた装置を受け渡した。装置の取り付けはそれほど難しくない。非番だった淺糟(あさかす)軍曹も駆り出して、装置の取り付けを手伝ってもらっている。整備の腕を買っての事だ。


 で、艦長である吾輩(わがはい)が、なぜここに居るのか。無論、吾輩が壊したと言うつまらない理由ではない。


 理由はもっと深刻だ。吾輩より理力(りりょく)工学に習熟した人員がいない。一言で言うと人材不足だ。


 いや、輸送艦隊の工作艦には、吾輩より理力工学に習熟した人員は沢山いる。そういった連中は、いざという時の艦の修復や、部品の製造や修復を行っている。今頃、摩訶不思議装置の修理に追われているだろう。


 ちなみに、理力工学と言うのは、術と機械工学の融合(ゆうごう)と考えると良い。


「この部品、調整が面倒なのだがな。」


 吾輩はそう言うと、直径五〇ミリの円柱の部品を手に取る。この部品が最も調整が大変な物だ。


 吾輩は蓄音機(ちくおんき)のような調整器に円柱を取り付ける。蝋管(ろうかん)に魔法の杖を差し込んで、回しながら理力を送る仕組みになっている。


 吾輩は不意に、微かな気配を感じる。気配を殺したような気配だ。


「もへへ。この蓄音機は何じゃらほい。」


 殺した気配の正体は軍医殿のようだ。


「円柱部品調整器だ。理力工学絡みの部品を、調整する装置だ。」


 吾輩は、魔法の杖替わりの功労勲位杖(こうろうくんいじょう)を、蝋管に差し込む。


 この功労勲位杖。一言で言うとありがたい錫杖だ。吾輩はそれを鈍器代わりにしている。


 杖に理力を送り込みながら、取手(とって)を回して筒状の部品を回転させる。理力を均等に流し込み、部品の微調整を行う。


「そうそう。この装置、過負荷に気をつけて使えって、通達が来たよ。」


「まあ、そうなるだろうな。」


 吾輩は相槌をつく。急に仕様変更はできないから、当然の通達だろう。


 今後は摩訶不思議装置と相談する形で、どの程度無理が効くか、見極める必要がある。


「それと装置のフィードバックの件。さっそく考慮するみたいだね。貴重な資料だと、八坂中佐直々の礼が来ていたよ。」


「発案者直々の礼は良いが、あの人、護衛艦隊の司令官だろう。職務放棄して、改善に取り組まなければ良いがな。」


 吾輩は冗談半分で軽口を叩く。しかし、八坂中佐はやりかねないと、腹の底で思っているのは、ここだけの話だ。


「八坂中佐って、マッドサイエンティストかなぁ。」


「違うだろう。そんな人が分艦隊司令になったら、別の意味で問題だがな。」


 とりあえずこういう事にしておこう。


「艦長。装置の取り付け、完了しました。」


「ご苦労。淺糟軍曹。」


 淺糟軍曹が装置の取り付けを完了させる。装置自体はあまり複雑ではない。今、吾輩が調整している部品。この円柱部品の調整が難しいのが欠点だ。


「この装置の調整が難しいのは、この部品の調整かな。」


 軍医殿は、淺糟軍曹が組み立てた装置を眺めて言う。


「いや。正確には、この部品の製作する時。製造過程での調整が難しいようだ。」


「それじゃあ、チミのやっている調整はどうなのかなぁ。」


「吾輩が使用するための調整だ。部品の精度の問題ではない。」


 そんな雑談をしている間に調整が終わる。吾輩は軽く理力を流す。筒状(つつじょう)の部品の表面に理力が流れ、均等に発散した。調整がうまくいった証拠だ。


「これで良し。」


 吾輩は円柱部品調整器から円柱部品を取り出す。この部品が装置の中核となる部品だ。円柱を装置に組み込み、動力を入れる。低い振動音を発して、装置が正常に起動したのを確認する。


「これで良し。淺糟軍曹。この装置の微調整を行う。手伝ってくれ。」


「了解しました。」


「それじゃあ、ボクは先に戻っているから。」


 戦闘指揮所に向かう軍医を見送る。吾輩は淺糟軍曹と共に、装置の微調整に取り掛かった。



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回からは第三話。双胴巡洋艦銀山の遭難の話になります。


 それではまたお会いしましょう。 

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