第二話 11 初めの世界沖海戦の結果
当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
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「敵艦殲滅。穢れの反応はありません。」
靖國大佐は唯乃副長の報告を聞きながら、船外探知装置を使っても駆使する。唯乃副長の報告通り、敵艦の姿はない。念のために“穢れ探知”の術を行使するが、穢れの反応は消滅していた。
「第一種戦闘配備を解除。警戒態勢で初めの世界を脱出する。それと唯乃副長。」
「はい。」
靖國大佐は艦長席を立ちあがる。そして一瞬だけ動作を止める。その瞬間に思考した後、命令を下す。
「他の艦艇の損害が知りたい。他の艦隊と連絡を取って、確認を行ってくれ。」
「了解。損害の確認を行います。」
「頼んだぞ。」
靖國大佐はそう言うと、艦長席に再び座る。そして背もたれを倒すと、横になって目を閉じた。
◇◇◇
靖國大佐は目を閉じて思案する。
魔訶不思議装置の件についてだ。
摩訶不思議装置の性能は、靖國大佐の期待を、良い意味で裏切っていた。
術を増幅させる装置。その効果は期待以上で、使い方によっては応用が利く。それが靖國大佐の評価だ。
この装置は、八坂中佐が開発した装置だった。その効果は先ほど示した通り、個艦規模に術を増幅させる。
八坂中佐が残留派を黙らせる代わりに、この装置の搭載を強行した時は、どうした物かと靖國大佐は思った。
それだけに反省点がある。簡単に言えば、己の艦の性能を十分把握していなかった点だ。もし実力を発揮できずに轟沈しようものなら、目も当てられない。
摩訶不思議装置は調整の連続だった。そのため、とても実用に耐えうるものではなかった。
しかし調整が済んだ後、試験動作を行っただけで、何ら実戦での使用を考えていなかった。後回しにしていたのは事実だが、時間はあった。
そう言った意味で、艦の実力を十分に発揮しないまま、戦闘をしていたのだ。
足枷をして戦をする愚か者が、どこにいるというのだろうか。
◇◇◇
「艦長。各艦隊の報告、まとめました。」
唯乃副長の報告によって、靖國大佐の思考は内から外へと向かう。
「唯乃副官か。で、どうだったのだ。」
「沈没した艦はありません。大破一。小破が二〇です。」
懸念が当たってしまったな。靖國大佐は心の中でつぶやく。しかし小破が二〇と言う数値に、内心驚いている。
「詳細を聞きたい。どの艦が大破したのだ。」
「輸送艦隊の双胴駆逐艇二二〇一号艇です。敵艦の砲撃で、右艦首が吹き飛んだそうです。それ以外の船体は無事で、現在工作艦で修理中です」
靖國大佐は駆逐艦の損傷を想像する。工作艦泊地富士で修理する場合、最短で五日くらいだろうと計算する。
「乗員の状態はどうだ。」
「近くの機銃座の射撃手が重傷を負いましたが、戦死者はいません。不幸中の幸いです。」
「まったくだ。で、小破二〇の損害はどうなのだ。」
靖國大佐は、頭が重くなる錯覚を覚える。内容によっては、大規模な対策が必要だからだ。
「小破の全ては、摩訶不思議装置の損傷です。銀山と同様、過負荷で損傷させてしまったようです。」
靖國大佐はため息をつく。ある意味安心したからだ。乗員の練度や艦の欠陥によるものではなかったからだ。
「対策が必要だな。さし当たっては、修復を済ませておくように伝えてくれ。確か予備の装置の在庫があったな。それで修復するように伝えてくれ。」
「了解しました。」
靖國大佐は腹の底でつぶやく。対策は過負荷を掛けない事だろうと。試作兵装の域を出ない装置だ。実用化には時間が必要だと。
「摩訶不思議装置自体は、それほど大掛かりな装置では無かったな。修復しながらの航行は、可能だったと思うがどうだろうか。」
「予備の装置さえあれば、十分可能かと思います。」
「では、装置の受け渡しが済み次第、帰還を再開する。」
靖國大佐は軽く深呼吸をして、気持ちに一区切りつける。
「しばらく休む。唯乃副長、艦の指揮をしてくれ。」
「了解しました。」
そう言うと、靖國大佐は戦闘指揮所を後にした。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は、第二話の締めになります。
それではまたお会いしましょう。




