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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第二話 初めの世界への訪問
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第二話 9 初めの世界沖海戦

 当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。


この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。


「もへへ。そろそろ攻撃がくるかにゃ。艦長。旗艦希望とのデータリンク、終わっているかにゃ。」


 軍医殿は戦闘指揮所に戻ると、司令官席に飛び込むように座る。


「ああ。天の火(あまのひ)との情報機共有も終わっている。」


 吾輩(わがはい)はあらかじめの指示通り、艦隊の情報共有を終えてある。これにより敵誘導弾の迎撃(げいげき)能力は、劇的に上がるだろう。


「誘導弾の迎撃の次に艦隊戦に移る。理力砲の準備は済んでいるな。」


「はい。全砲塔、準備済みです。」


 戦闘準備は万全。何時でも開戦可能だった。


 その時、(けが)れた艦隊に動きがあった。


 旗艦希望と第一探査艦隊の混合艦隊に、敵意むき出しの穢れを纏った誘導弾が、旗艦希望の混成艦隊に襲い掛かる。


「迎撃開始。」


「うちーかた、はじめ。」


 靖國(やすくに)大佐の号令を皮切りに、艦隊から数多の破壊光線が吐き出される。その姿はまるでハリネズミのようだ。


 一発の誘導弾に破壊光線が命中する。誘導弾は弾き飛ばされ、水面に叩きつけられて爆発する。


 別の誘導弾は、破壊光線を受けて弾頭が潰れる。そして急激に速度減らし、水中に没する。


 一つ、また一つ。誘導弾を撃墜する。時間にして一分。全ての誘導弾を撃墜し、まるで鉄壁のごとくの迎撃性能を示した。


 情報共有一つで、迎撃率が格段に向上する。訓練通りの性能に、吾輩は微かな安堵感を感じた。


「うちーかた、やめ。」


「もへへ。今回は全弾撃墜できたね。次は実弾射撃だね。」


「了解。砲雷長。実弾射撃の準備出来ているな。」


「はい。全砲塔、実弾射撃の準備ができています。」


 吾輩のやり取りの横で、軍医殿は懐から木箱を取り出し、中に入っている黄金の葉巻を咥える。


「ところで上級大尉。誘導弾だけど、僕達の艦、銀山を集中的に狙っていたようだけど、気のせいかなぁ。」


「そうか。吾輩はそうは思わなかったが。」


「そっか。それならいいんだ。」


 そう言うと軍医殿は首を傾げて考え込む。


 我が艦に集中攻撃。言われてみればそんな気もする。しかしそれは、確証の持てる話では無かった。



◇◇◇




 迎撃終了の命令が下り、淺糟(あさかす)軍曹の担当する第一砲塔の緊張が解ける。


「ふう。誘導弾全機撃墜。訓練通りですね。」


 二等兵の緊張が解ける。今回はしっかりと観測できたため、気分が高揚していた。


「さて次は、実弾による砲撃戦だ。装填(そうてん)手達。穢れ払いの曳光弾(えいこうだん)の装填は済んでいるな。」


「はい。装填完了しています。」


 第一砲塔の装填手は三人。砲塔真下で装填を行う。砲弾は自動給弾機を用いて砲塔に運び、砲に給弾する仕組みになっている。


 砲弾の口径は一四〇ミリ。質量は二八キログラム。これを三人で手早く装填する。


 人間の場合、二八キログラムは装填には重い重量だ。しかし黄泉軍の装填手は、筋力を増加させる方法がある。筋力を増大させる霊薬(れいやく)や術が存在する。


 そして本来は倍の人員が欲しい。艦に対して人員が不足していた。だがその問題は、どこの艦でも同じだった。


「さっきみたいに訓練通りに行うように。焦らずに装填して。」


 淺糟軍曹はそう言うと、砲撃システムを実弾仕様に変更する。


「実弾射撃用意。」


 戦闘指揮所から指令が飛ぶ。淺糟軍曹を始め、第一主砲砲塔の内部に、再び緊張が走った。



◇◇◇



「実弾砲撃戦用意。」


 吾輩は実弾射撃の号令をかける。いよいよ反撃開始だ。


「希望。砲撃戦を開始しました。」


 船外知覚装置で確認する。希望の主砲が必中の距離で発砲する。一斉射で吐き出された砲弾が弧を描き、左右の巡洋艦に吸い込まれていく。


 敵祇原(しはら)型巡洋艦が、青白い炎に包まれる。続けて旗艦希望の副砲、一四〇ミリ三連装砲が止めを刺す。


「旗艦希望は頼もしいねぇ。あ、ボク達もそろそろだねぇ。」


 軍医殿は黄金の葉巻を咥え、吹かすふりをする。


「主砲射程圏内に入ります。」


 砲雷長の報告が入り次第、吾輩は指示を飛ばす。


「主砲。うちーかた、はじめ」


 各々の主砲から砲弾が撃ち出される。敵巡洋艦からも漆黒(しっこく)の破壊光線が吐き出される。さて、巡洋艦同士の殴り合いの始まりだ。


 本来なら数の暴力でこちらが不利だが、こちらは穢れに対しての装備は万全だ。


「敵破壊光線が着弾し続けています。念力防壁の耐久力が減少していきます。」


 吾輩は携帯型端末で確認する。念力防壁の耐久力を表す数値は、徐々に減っていく。


「副砲。射撃準備。いつでも射撃できるようにしておけ。」


「艦長。左艦首に砲撃が集中しています。」


 あまり良い傾向じゃないな。敵の艦砲射撃が、立て続けに艦首に命中している。念動防壁が()がれて、船体に直接損害が出るかもしれない。


 そんな不安をため息とともに吐き出す。そして気持ちの区切りをつけて、艦の指揮に専念した。



◇◇◇



 砲塔内を揺らす振動と衝撃音が、淺糟軍曹を襲う。念動防壁越しに、敵の破壊光線がぶつかるたびに、衝撃が第一主砲等内に響き渡っていた。


 銀山の左舷艦首。そこから一番近い第一砲塔は、艦内で一番危険にさらされていた。


「二等兵。お前さんの判断で構わない。給弾が終わり次第、片っ端から撃て。」


「りょ、了解しました。」


 二等兵は泣きそうな声で答える。淺糟軍曹は給弾室で、部下と共に給弾作業に従事している。


 砲弾給弾係の一人が負傷した。度重なる衝撃により転倒し、足の上に砲弾を落とし負傷したためだ。現在、衛生兵の手当てを受けている。幸い傷は軽いため、もうすぐ治療が完了する。


「軍曹。このままだと、艦が撃沈されるんじゃないですか。」


 人間型の一等兵が言う。人間型で年齢は十五歳と若輩だが、それでも淺糟軍曹より年上だ。


「泣き言を言うな。そんな事、上の上官が考える事だ。僕達はとにかく、主砲を撃つ事だけを考えろ。」


 泣き言を言う一等兵に叱咤(しった)をするが、淺糟軍曹も一抹の不安を拭えずにいた。


「死にたくなければ、主砲の弾を絶やすな。泣き言言うくらいなら、手を動かすんだ。」


 淺糟軍曹は上官と言う立場上、泣き言を許すことはできなかった。その思いを自身に言い聞かせる、淺糟軍曹であった。


 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は、新兵器のお披露目になります。


 それではまたお会いしましょう。 

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