第二話 8 空対艦攻撃
当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。
軍医を乗せ音速戦闘機、三菱F2黄泉軍仕様が加速し、急激に速度を上げる。藍と碧に塗装された機体が海鳥のように海面を舞い、急激に速度を上げる。
「弾種、穢れ払い。空対艦誘導弾を装填。」
軍医が号令をかける。何もない空間から四発の誘導弾が出現し、戦闘機の両翼のハードポイントに、二発ずつ装填される。
「さて、距離は敵との距離は一〇〇キロ。性能が同じなら三分で敵艦の射程圏内かな。六〇キロで対艦誘導弾を発射する。一分後に射撃体勢に移る。」
そう言うと軍医は、装置を操作して発射体制に移行する。
軍医は念じて、誘導弾を敵艦にロックオンする。誘導弾は四隻の敵艦それぞれ別々の目標を補足する。
「三、二、一、発射。」
軍医は発射ボタンを押す。四発の誘導弾は噴煙を上げながら、各々の標的に向かって急速な加速を行う。
軍医は回避行動をとるため、旋回する。腹を見せるその姿は、碧の鳥のようだった。
◇◇◇
「ペプーリア機。誘導弾を発射。」
船務長の報告が入る。吾輩は艦外知覚装置を使って、誘導弾の軌跡を追う。
敵艦の迎撃範囲に誘導弾が侵入する。敵艦からの迎撃の砲撃が開始された。
だが吐き出された黒い破壊光線は、誘導弾に当たる気配はない。狙いがでたらめだ。まるで見よう見まねで迎撃している、そう思わせるくらいの、精度の甘さだ。
そうこうしている内に、誘導弾が敵艦に命中する。高い青白い爆炎を立て、強い衝撃を発する。一発、また一発と敵艦に命中する。四発全ての敵艦に命中し、敵艦は青白い大火に包まれ、程なく灰の塊になって崩れ去る。
「豊峰型巡洋艦四隻撃沈。」
軍医殿の放った誘導弾の着弾を確認した。戦闘指揮所に歓声が上がる。先制攻撃にしては多大な戦果だ。
「ペプーリア少佐より通信。繋げます。」
「もへへ。戦果は上々かな。あと五分ほどで戻るよ。」
通信が繋がると早々に、軍医殿から連絡が入る。いささか高揚した声で、連絡を入れる。
「了解した。後部甲板に着艦してくれ。」
「分かった。早めに戻るよ。」
◇◇◇
「ペプーリア様の戦果。凄いですね。」
淺糟軍曹は何気なく腕時計を確認する。
ところ変わって、第一主砲砲塔内。そこの観測員である二等兵が、軍医の戦果に感嘆を述べる。
二等兵は淺糟軍曹より幼く、まだ産毛が採れていないヴィガージャ種だ。淺糟軍曹がきいた話だと年齢は七歳で、今年の春、中学校を卒業したばかりだ。
「そうだね。次は艦隊戦だから、僕達の出番だ。」
淺糟軍曹は二等兵の言葉を半分聞き流す。
「淺糟軍曹。こちらからも誘導弾を発射するように、意見具申しましょう。そうすれば敵は一撃ですよ。」
「いや。それは無理だね。」
淺糟軍曹は軽くため息をついてから、二等兵の提案を却下する。
「どうしてですか。」
「艦隊の誘導弾が、穢れに対応していないからだよ。」
淺糟軍曹は出鼻をくじかれた二等兵を、言葉で受け流す。
「どうして対応していないのですか。」
「それは誘導弾の炸薬が、通常の火薬だからだよ。これは艦隊全ての誘導弾に言える事だよ。」
「穢れ払いの弾頭は無いのですか。」
「誘導弾は少ない。次から次へと出てくる穢れより、穢れじゃない敵艦に使った方が良い。そっちの方が強くて厄介だよ。」
淺糟軍曹は二等兵に、分かりやすく簡素に説明する。誘導弾は砲弾と比べて高価で、大量に発生する穢れに対して使用するには、余りにも経済効果が悪い。
そのため穢れに対しては、砲弾や摩訶不思議な破壊光線で対応するのが一般的で、しかも安上がりである。
一応、迎撃用の多目的誘導弾発射装置もある。対潜攻撃も可能な代物だが、それにはあえて触れない。
さらに付け加えるなら、穢れはレーダー、赤外線装置、ソナーなどの機械探知機に映るとは限らない。専門の探知技術が必要になる場合がある。その探知装置も、使い捨ての誘導弾に積むには、大量生産もできないのが現状である。
「そうなんだ。」
「そういう事だよ。さあ、次は僕達の出番だから、観測の方を頼んだよ。」
「はい。」
その時、砲塔内に警報が鳴り響く。続けて戦闘指揮所から指示が入る
「敵誘導弾接近。各砲塔は迎撃態勢に入れ。」
「全員配置に就いているな。理力砲の準備だ。」
砲塔内に緊張が走る。淺糟軍曹は思考無線で、標的になる誘導弾を追尾する。
「そろそろ射程内だ。みんな。気張って行くぞ。」
淺糟軍曹は部下の気を引き締めた。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は、艦隊戦が開始されます。
それではまたお会いしましょう。