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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第二話 初めの世界への訪問
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第二話 6 もう見ないはずの艦影

 当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。


この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。


 帰還艦隊が一通り初めの世界に入り終えた。艦隊は次々と新たな航路に侵入を開始するため、初めの世界を後にする。艦隊の半数が新たな支流に侵入した時、戦艦希望の船務長(せんむちょう)から報告が入る。


(けが)れの反応、微弱ながら観測。位置は新たな支流と、初めの世界外縁部からです。」


 希望の戦闘指揮所に緊張(きんちょう)が走る。靖國(やすくに)大佐は立ち上がって姿勢を正す。


「つまり囲まれているという事だな。」


 靖國大佐は思案する。今は新たな支流に侵入途中。戦力の大半も新たな支流に移してある。輸送艦隊も半数は新たな支流に向け、初めの世界を脱出中だ。


 戦力になる艦隊は希望と、第一探査艦隊のみだった。第一探査艦隊は椿の精霊の件で、最後まで滞在する事になっている。


 戦力を呼び戻す必要があるか。靖國大佐が考えていると、船務長から続報が入る。


「初めの世界の穢れの量が判明しました。新たな支流側は二個師団(しだん)規模。元居た支流に四個師団規模です。新たな支流の方は、輸送艦隊と第一護衛艦隊の中間位置です。」


 靖國大佐は思案する。元居た支流に四個師団規模。前回の倍の数だった。前回は巡洋艦三隻。単純な話、今回は六隻分だった


「穢れの対応に当たる。新たな支流の方は、八坂中佐と浅間中佐とで対応しろ。諏訪(すわ)中佐の第二護衛艦隊は、海域の警戒に当たれ。戦力はこちらが上だ。数の暴力で圧倒するのだ。」


 靖國大佐は新た多な支流の戦力に、指示を出し終える。そして軽く深呼吸をして新たな命令を発する。


「第一探査艦隊は我に続け、と伝えろ。これより穢れの浄化を始める。全艦隊戦闘準備だ。」



◇◇◇



「全艦、第一種戦闘配備。主砲、副砲は、穢れ払いの曳光弾(えいこうだん)を装填しろ。」


 吾輩(わがはい)の号令で、艦全体が(はち)の巣をつついたように慌ただしくなる。 


 船務長は観測機器の情報を統合し、砲雷長は各種兵装の戦闘準備を指示する。


 吾輩は思考無線を起動させる。友軍からの穢れの情報。観測班からの穢れの情報と、情報処理班の情報の更新。各種兵装の起動準備の報告。ダメージコントロール班の配置完了の報告。急速に戦闘準備が整っていく。


「敵は四個師だね。靖國大佐からの新たな指示はまだかなあ。」


「我に続けと言う指示以外は、他の指示は出ていません。」


 穢れが顕在化(けんざいか)していないから、具体的な戦力は不明だな。顕在化しないなら、一方的に穢れ払いができるのだが。


「戦艦希望より報告。穢れが顕在化。祇原(しはら)型巡洋艦八。豊峰(とよみね)型巡洋艦八。我が艦隊の物と瓜二つです。距離は一〇〇キロ。」


 全部で一六隻。穢れの量に対して艦の数が多い。おそらく、一隻一隻の穢れの強さは、それほどでもないだろう。


「ここでも我々の偽物が出てくるのか。」


「いやな予感がするねぇ。これは一体何を意味するんだろうね。」


 気味が悪いな。吾輩は背中に冷や水が落ちてくる錯覚(さっかく)を覚えた。


「この距離で誘導弾が飛んでこないのは、索敵能力が劣っているのか。はたまた、対探知迷彩が効いているのかなあ。」


 吾輩は懸念(けねん)を払い、敵巡洋艦の性能を頭から引っ張り出す。


 祇原型巡洋艦は、旧第四艦隊の巡洋艦だ。主砲は一四〇ミリ三連装砲二基。船体は大きくないが、必要十分な装備が(まと)まった、標準的な巡洋艦だ。


 豊峰型は軽巡洋艦に分類されている。主砲は速射型の一四〇ミリ単装単装砲一基。巡洋艦にしては小型で、巡洋艦としての最低限の戦闘力しか持たない。巡洋艦の能力を持つ駆逐艦と言うのが現状だ。


 吾輩は観測された穢れの情報を確認する。敵艦隊の陣形を確認してある意味(おどろ)く。


 艦の配置がバラバラだ。顕在化に際し、適当な配置になったと言った感じだ。


「もへへ。靖國上級大尉。ずいぶんな艦隊だけど、チミはどう思う。」


 軍医殿が質問してきた。軍医殿の場合、自分自身の考えの確認だろう。吾輩は思うところを意見する。


「先の戦闘で判明した事だが、穢れでできた偽物は明らかに性能が劣化している。しかも編成を見る限り、敵艦隊は烏合の衆。近づいてきた艦から対処しても良だろう。」


「ボクも同意見だね。我が艦隊は旗艦と連携して対応しないとね。靖國上級大尉。旗艦と思考無線を繋げて。意見をすり合わせたい。」


「了解。通信士。旗艦との回線を繋げろ。」


「了解。旗艦との回線を繋げます。」


 吾輩は通信士に指示をする。通信士は、旗艦との思考無線の接続を開始した。軍医殿は黄金の葉巻を(くわ)えて、頭を回転させる。


「軍医殿。その火のついていない葉巻、何か意味があるのか。」


 吾輩は前々から疑問に思っていた事を尋ねる。特殊な葉巻だという事は分かっているが。


「これ。これは僕の安定剤だよ。」


「安定剤とな。」


「うん。ボクは回転が無駄に早くてね。安定させないと、空回りしてかえって思考力が落ちるんだ。」


 そんな話をしていると、通信士は希望との回線を繋げる。程なく旗艦希望の靖國大佐が出てきた。



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は、艦隊戦の前に軍医が提案をします。


 それではまたお会いしましょう。 

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