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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第二話 初めの世界への訪問
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第二話 5 交渉は戯言

 当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。


この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。

「あの艦は泊地富士(はくちふじ)だな。という事は今入ってきているのは、輸送艦隊(ゆそうかんたい)か。」


 吾輩(わがはい)は輸送艦隊旗艦を横に、植物用傷薬を持って椿(つばき)の元に飛んでいく。椿の木の生命力が弱まっていたから、お礼の意味を込めて、少し手当てしようと考えたからだ。


 忘却の川から次々と艦艇が集まってくる。艦隊が終結している間、吾輩達は椿の実を収穫した。


 吾輩達は椿の実を摘み終えていた。椿の葉もたくさん摘んだ。沢山とは言え、全体の二割程度だ。


 実の数と葉っぱは思いのほか多く、持ってきた背負い袋五つが満杯になった。軍医殿も実を取るのを手伝おうとしたが、木登り危なっかしかった。そのため早々に銀山に戻ってもらった。


 椿の実は三三五個もあった。この数は一本の木に生る実の数としては、かなり多いと思った。


「三三五個か。半分だと一六七個だな。割れた実の種も全て回収した。」


「軍医様。質問よろしいですか。」


「なんだい。淺糟(あさかす)軍曹。」


 吾輩と淺糟軍曹は、椿の実と葉を運び終えて一息ついている。


「軍医様。何故あの時、椿の実を半分もらうと言ったのでしょうか。この椿の実、何か特別な物ですか。」


 淺糟軍曹は椿の実を一つ手に取り観察する。吾輩も見てみたがただの実だのようだ。


「それはね。ボクは無料(ただ)では仕事はしたくないからね。それなりの対価を要求するのが健全と言うものだよ。」


「それじゃあ、椿の実半分では割に合わないと思います。」


 確かに帰還のついでとはいえ、椿の実半分の輸送の対価として、椿の実とはあまりにも割に合わないだろう。


「チッチッチッ。淺糟軍曹は若いから分からないけど、これは駆け引きと言うものだよ。交渉はある意味

化かし合いだよ。相手の弱みを(つか)んで、こちらの言う通りにする事もあるよ。」


 軍医殿は椿の実を手に取って観察する。


「ヴィガージャ種は規律良く愚直(ぐちょく)な人が多いけど、黄泉軍(よもついくさ)でも人間型の場合、よからぬことを考える奴もいる。中津の国の人間どもとなれば、なおさらだ。」


 その手の話は吾輩も聞いた頃がある。黄泉軍の中でもヴィガージャ種は利己心が薄いという話だ。それで過去にヴィガージャ種が割を食う事がいくつもあった。そして耐えかねたヴィガージャ種が、相手を徹底的に追い詰めるという話だったな。


「そうだな、淺糟軍曹。今回の件は、学ぶべきところがある。軍医殿が言った頃は忘れるな。」


 淺糟軍曹は少し不満顔だ。まあ今分からずとも、いずれ理解できるだろう。吾輩は一拍置いて話を続ける。


「分かっているとは思うが、ヴィガージャ種以外の連中は利己心が強い。ヴィガージャ種と比べてだがな。それを踏まえて人付き合いをしていく事になるだろう。」


 そこまで言うと吾輩は、軍医殿に向きなおす。


「ところでこの椿の実。報酬(ほうしゅう)の半分をどうするのだ。椿の実は渋くて食べるのに向かないぞ。」


 吾輩が軍医殿に(たず)ねると、軍医殿は頭を()いて答える。


「どうしようかなぁ。」


「何も考えていなかったのだな。」


 吾輩は呆れた。用途も考えずに報酬に寄こせと言ったのか。利害を度外視した、ただの駆け引きだったのだろうか。


「まあ、吾輩がもらっても良いか。ちょっと試してみたい事がある。」


「薬の材料にでもするかな。」


「そんなところだ。」


 椿の種を(しぼ)れば椿油ができる。椿油は塗り薬の基材にもなる。果肉もろとも霊薬(れいやく)の材料になる。


 椿の葉の成分は止血効果がある。これで傷薬の霊薬の軟膏(なんこう)でも作ってみるか。


 そんなことを考えながら、吾輩は椿の実を手に取って眺めていた。



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は事態は急変します。


 それではまたお会いしましょう。 

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