第一一話 5 戦闘開始だが、誘導弾は飛ばず
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
「総員戦闘開始。各々の判断で、攻撃を開始てちょ。」
軍医の命令が飛ぶ。直後、一閃の穢れ払いの閃光弾が跳ぶ。閃光弾は青白く燃え上がる矢となり、一体の円盤を射抜く。
強い穢れ払いの炎の弾道。これはマスケット銃の物だと見抜いた。距離は一万だろうか。良く当てたものだ。
しかし、その後に攻撃は続かない。軍用機から誘導弾が飛んできてもよさそうだが。
吾輩は敵を直視する。推定直径一〇メートル。敵宇宙人円盤が三二体。急速に接近中。距離七千。一二秒ほどで吾輩の頭上を通り過ぎる目算だ。
吾輩は直ぐに、左右二丁の三五粍短機関銃を乱射する。狙いは同胞を信じて、初めて使用する『タイタン仕様』にしてある。
弾の弾道は良好。狙い通り円盤の群れに向かっていく。
肝心の狙いはと言うと、当然敵円盤も回避行動をとる。左右六〇発ほどの弾の内、二発まぐれ当たりをする。一体の不幸な円盤は弾かれて、タイタンの橙色の大地にぶつかり、目を回しながら豪快に跳ねる。
敵宇宙人円盤が、吾輩の頭上を通り過ぎようとする。吾輩が“氷の壁”で前面に防壁を呼び出す。
…氷の壁の氷は、メタンの水が原料か。そんな思いが浮かんだ瞬間、一体の宇宙人円盤が氷の壁に激突した。
◇◇◇
「上の連中。何で誘導弾を使わないんすかね。軍曹。」
ロボットがマスケット銃の弾込めをしている。初弾を命中させ、ロボットの手で次弾装填を走りながら行っている。
弾込めので走る赤い分霊戦車は、主砲の砲撃を円盤に命中させる。
「多分、打ちっ放し能力が使えないからだよ。軍医の懸念が当たったね。」
そう言うと、浅糟軍曹はロボットの小銃を発砲する。初弾、次弾を外すが、三発目で命中する。
「タイタンの極寒の空気。おまけに重力も小さい。多分戦闘機連中は、最適化の途中だろうね。」
上等兵のロボットが弾込めを終え、発砲する。マスケット銃の銃弾。二発目も当然のように命中させる。走りながらだ。
「誘導弾も面倒っすね。ま、航空機は天の火の直掩機をしているっすから、おいらはかまいませんがね。」
そう言うと上等兵は、マスケット銃をしまい、散弾銃を手に取る。
敵宇宙人円盤が破壊光線を放つ。浅糟軍曹を狙ったそれは、間一髪で躱す。
上等兵は回避できず破壊光線を受ける。衝撃で念力防壁の強度が落ちる。
上等兵は仕返しに、すれ違いざまに射撃を行う。2インチ散弾銃のバックショットが、円盤をハチの巣にする。
「直掩機が戦力の温存になればいいね。敵がこれだけと良いけどね。」
当然そんなことは無い。軍曹と上等兵は、腹の底で同じ答えを出した。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は、敵戦力の逐次投入です。
それではまたお会いしましょう。
追記:今後の投稿は不定期になるかもしれません。今後投稿される場合、土曜日の21時に投稿になります。誠に申し訳ございません