第一一話 3 天の火と救援部隊の面々
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
メタンの海を進む。夕焼け空に橙色の霞が立ち込める。メタンの大気だろうか。
吾輩は水面すれすれを浮遊しながら銀山に向かう。俗に言うホバー移動と言う物だろうか。
銀山を視認する。甲板には、今回貧乏くじを引かされた面々が待機している。
艦種側に三機の機動兵器。全て二脚だ。武装は右手に自動小銃、左手に近接用の光波発生装置。左肩に二連機対空用の誘導弾発射装置。そして右肩に観測用の汎用探査装置。本国から送られてきたものそのままだ。
内一機は浅糟軍曹が搭乗している。本人の志願だが、人材がいないのが本音だ。
腕の傷は治療中だが、本国にいた時に有線で操作する手術を受けたようで、耳の後ろに隠れている端子に線を直接接続している。
腰に散弾銃を取り付けた機動兵器が、銃に弾込めをしている。一瞬目を疑ったが、よく見ると機動兵器用の管打式銃だ。
そう言えば、本国の穢れ払いの銃使いの上等兵が一人いた。奴は管打式の銃を使っていた。黄泉軍の間では、黒色火薬の銃を穢れ払い用に用いている。だが、ロボット用にだれが持ってきたのだろうか。そしてタイタンの大気で発砲できるのだろうか。
ロボットの弾込めは置いておくとして、続けて戦車四両。赤い神霊車両を先頭に、重戦車一両と軽戦車二両。全て術で水上走行ができる車両だ。
…こっちは奇抜な物は無いか。いや、赤い戦車自体が奇抜だったな。
そして最後に航空機。軍医殿の分霊戦闘機を先頭に、黒い攻撃機、そして一見水上機のような軍用機。これが一〇機ならんでいる。
人間達には『晴嵐』と言った方が分かりやすいだろうか。無論、理力工学を用いて再設計された機体で、音速を超える速度を出し、航続距離は原型機の三倍ほどだ。
武装は三五粍機銃と対空誘導弾を両翼と胴体下部に計三発。機動力確保に、重量に余裕を持たせている。
◇◇◇
吾輩は面々を確認し終えると、銀山の艦首付近の甲板に乗り移る。艦種進行方向には、橙色の地平線が見える。
通信を開くと、各々が無駄話をしている。軍医殿も混ざってろくでもない事を言っている。
吾輩が定位置に着くと、頭がかき回される錯覚が発生する。軽くなった重力を引っ掻き回す、でたらめな浮遊感。世界がぐるりと回り、眩暈がぐるぐると回り続ける。
世界を渡る独特の感覚だ。土星の衛星でも変わらないようだ。
しばらくして夕焼け空が晴れ、橙色の空が視界に広がる。そしてその空に輪がついた星が浮かぶ。あれが土星だろうか。
澄み渡った橙の空とあっぱれなほどの土星。土星晴れと言った、見事な絶景が広がっていた
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は、星間列車の救助が開始されます。
それではまたお会いしましょう。
追記:今後の投稿は不定期になるかもしれません。今後投稿される場合、土曜日の21時に投稿になります。誠に申し訳ございません