第一一話 2 上級大尉の駆る四脚機動兵器
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
吾輩は銀山のエアロックから外に出る。外気はマイナス三五度でさらに寒くなる。メタンの濃度が多く、呼吸には適さない環境だ。艦は浮びあがり、氷塊を越える。
ちなみに軍医殿は、一足先に天の火に向かっている。
吾輩は艦尾に向かって歩く。途中すれ違いに整備兵とすれ違う。手筈通り機動兵器を配置してくれたのだろう。
少し歩いて艦尾の後部甲板に到着する。そこには四脚の上半身人型の機動兵器が置いてある。
六七八式四脚機動兵器。本国が開発した、宇宙用の機動兵器だ。
両手に三五粍短機関銃。艦艇用近接防空自動機銃の物を、機動兵器用に改造したものらしい。火器管制装置は、数キロ離れたドローンから自称宇宙人の円盤まで、正確に補足し追跡できる。しかし、この短機関銃で円盤場撃ち落とせるかは微妙だ。
弾道の関係で当たらないだろう。理力銃仕様なら当てられるらしいが。
左肩には二連装七六粍榴弾砲。高角砲の対空衝撃弾を発射するに連装砲。背中に配置されていて、必要に応じて展開する。
着弾すると炸裂と共に、激しい衝撃を対象に与える。飛行機の類ならグライダーだろうが輸送機だろうが、これで一発だ。
宇宙人の円盤も例外ではない。直撃すれば、の話だが。
右肩は短刀状の物体が、剣先を天に向けている。近接用の短刀に見えるかもしれないが、汎用型の理力型観測器だ。電探、音探、生命探知に質量観測に理力観測。
汎用型と言うだけの事はあるが、操縦者の理力に左右されるのが、最大の欠点だ。
そして肩部の内部に、内臓用の修理装置一式を格納させている。これは吾輩の特注だ。整備兵三名、半日の時間をかけて取り付けさせた。
動力と理力伝達の無茶振りで、苦戦したという愚痴がでた。まあ、この手の愚痴は珍しい話では無いので、適度に聞き流す。
吾輩は遠隔操作で機動兵器の入り口を開ける。胸部中央の扉が開く。四メートルほど跳躍して乗り込む。重力はまだ地球上と同じのようだ。
機動兵器の操縦席に乗り込むと、重力が変わるのを体感する。内心、早めに搭乗して良かったと思う。低重力だと、何処に跳んでいくか分かったものじゃない。
搭乗席の扉を閉めると、外気温が一気に低下する。マイナス一五〇度だろうか。
機動兵器の動力を起動させ、念力防壁を展開させる。外気を遮断して機体の温度を上げる。
火器管制装置を確認する。タイタン仕様の規格が、入力されているのを確認する。この数値は不時着した星間列車の探査記録を元にしたものだ。もっともこれが当てになるかは、別の話だ。
一通り確認を終えて、機動兵器の演算装置を標準仕様に設定する。これでいつでも活動ができる。
その直後、再び着水する。艦から理力と斥力の動きが観測できるのを見ると、液体の水と同じようには行かないようだ。
そんな事を考えながら進行方向を見る。そこには橙の夕焼け空が、広がっているように見えた。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回はいよいよ、土星衛星タイタンに進入します。
それではまたお会いしましょう。
追記:今後の投稿は不定期になるかもしれません。その場合、木曜日の21時に投稿になります。誠に申し訳ございません