第一〇話 8 詳細が絞られるタイタン航路
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
「諏訪中佐。全艦艇の気密はどうだった。」
「艦艇の気密は問題ありませんでした。現在、タイタン航行用に、微調整を行っています。」
「浅間中佐。敵がいる可能性がある。艦の対空砲火で撃退は可能だろうか。」
「理力砲で対処可能じゃな。添付された資料通りならばの。できれば、穢れ払いの曳光弾。あれを正確に当てていきたいのぉ。」
「八坂中佐。タイタンでの実弾射撃は可能か。」
「撃つこと自体は問題ねえな。ただよ。タイタンの大気が良く分からねえ。正確な射撃は試行錯誤が付きまとうぜ。」
「そうか。」
「ところでよ靖國。おめえの方の、艦隊規模の防寒の術。それは大丈夫か。」
「各艦隊の旗艦が術を展開すれば、後は個艦単位で対処できるな。今、術の巻物を作成している途中だ。」
場面は艦隊間の思考無線会議。タイタン行きの航路を、手元にある情報と手段で考察していた。
会議の流れからわかる通り、タイタン行きの航路が半ば決定している。後は起こりうる事態に対しての、対処の段階になっている。
「靖国大佐。そう言えば、今回は遭難者も救助するのじゃな。確か、トワダ湖の沿岸じゃったな。」
浅間中佐の状況確認。今回の航路変更は、遭難者の救助も目的に入る。
「二足歩行のロボットも用意して、星間列車の考えないとな。」
「あの工作用に使っておる、人型兵器じゃな。」
浅間中佐は、用途が浮いている人型兵器を思い出しながら、状況を想像している。
タイタンのトワダ湖。北緯七一・四度 西経二二四・二度。北極近くにある、直径12キロのメタンの湖だ。
その沿岸に星間列車が不時着している。乗員は全員無事なようだ。この情報は3時間前の定時連絡でも、状況は変わっていない。
そして航路の出口は、トワダ湖の北側に繋がっている。そして新たな航路の入り口は南側だ。その間はメタンの湖を航行していく手筈だ。
「ふむ。これはまた、曽根康の出番じゃな。本人達の愚痴が想像できるがの。第一探査艦隊。あれが役に立つじゃろうて。」
「諏訪中佐もそう思いますか。」
靖國大佐も諏訪中佐と同意見のようだ。
「探査性能が高い銀山に、積載能力を備える天の火。警戒を行いながら遭難者と星間列車を回収する。最小数の艦艇で事を済ますには、ちょうど良いかの。そうじゃろ。靖國大佐。」
「まったく同意見です。」
現場でぼやかれるであろう当人達の愚痴を予想しながら、靖國大佐と浅間周佐は、星間列車回収を第一探査艦隊に行わせるように手配した。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は場所が変わって、当人達の愚痴から始まります。
それではまたお会いしましょう。
追記:今後の投稿は不定期になるかもしれません。その場合、木曜日の21時に投稿になります。誠に申し訳ございません