第一〇話 6 補給物資の面々
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
「やれやれ。結局、タイタン行きの航路に決定したのか。」
「うんにゃ。厳密に言うと、各艦の再点検待ちだにぇ。不合格の艦があると、この航路は没になるかにゃ。」
吾輩達、厳密には吾輩と軍医殿は、マフィンと紅茶を囲んで、おやつと方針確認を同時に行っている。
マフィンを一口頬張るが、上品な甘さと生地の香りが、鼻孔を刺激する。
このおやつは、厳密には戦闘糧食ではなく、今回の補給物資の面々が、個人で持ってきた、『それなりの値段』の物らしい。
高級品だと思うが、言うだけはある代物だ。吾輩の素人の舌でも分かる、上品な味わいだ。
で、肝心の持ってきた連中に、目を向ける。十人近くの人だかりができている。
吾輩の視線の先には、赤と黒の二人がいて、見物客が周りを囲んでいる。
一人は炎のような赤毛の人間型少年。赤の戦車服を着ている。
もう一人は漆黒のポニーテールの少女。パイロットスーツも、黒髪同様、光を吸収するかの黒だ。
階級は両方共少尉。確か赤毛が先任だ。
見た目が若い二人は、車長と機長だっただろうか。好奇心旺盛な吾輩の部下が取り囲んでいる。二人は赤と青の未知のゲーム機でゲームをしている。ゲーム機の実演のつもりが、対戦で熱中しているようだ。
別の席に目を向ける。年配の鬼軍曹が、新参者達に楽しそうに話をしている。
そこにいるのは、背は低いが筋肉がついている赤い砲手の少年。眼鏡をかけたおかっぱの黒い電子戦オペレータの少女だ。二人とも陽気そうな利き手上手で、鬼軍曹も上機嫌だ。
吾輩は冷めた紅茶を、一気飲みする。紅茶も香りと味が良い。
カップを置くと、すかさず紅茶が注ぎ込まれる。操縦手の若者だ。赤のオールバックで、いつの間にか執事服に着替えていた。
続けてマフィンが補充される。補充したのは大和撫子がメイド服を着た、黒の副操縦士。この子もパイロトスーツからいつの間にか着替えていた。
俗に言うイケメンとプリティだろうか。だが、中身はどうだろう。
操縦手の方は車長の自己紹介で、持ち上げようとして盛大に滑った三枚目だ。副操縦士の方は…好奇心旺盛な日本人形と言った感じだった。
…で、吾輩が先ほどから見ている、赤と黒の人物達。何を隠そう、新しい神の分霊達だ。
正確には赤い野郎共は紅い戦車の分霊。黒い女子達は黒のステルス攻撃機の分霊だ。
さらに一言付け加えると、何故か二柱共、我が艦隊…第一探査艦隊に配属された。
二柱共、正確には武装輸送艦天の火の配属だが、早速、双胴巡洋艦銀山に遊びに来ている次第だ。本体の戦車も攻撃機も、銀山の後部甲板に止めてある。
ただならぬ個性がありそうな分霊達を眺める。艦長たる吾輩は、二柱の運用を考える次第だった。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回はタイタン行きの航路について、軍医と上級大尉の話が煮詰まる…かもしれません。
それではまたお会いしましょう。
追記:今後の投稿は不定期になるかもしれません。その場合、木曜日の21時に投稿になります。誠に申し訳ございません