第一〇話 4 航路変更は斜め上を行く
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
靖國大佐の航海日誌
六二日目。本国の補給艦と合流して、情報と物資を受領する。先に確認させた靖國上級大尉からの報告で、八ヶ城様の分霊の多さに驚かされたが、強固に封印された暗号の巻物、しかも私宛の物を受け取ったそうだ。
強固な封印のため、八坂中佐に頼んで解除を行わせている。理力工学の装置を使う方が早いと結論が出たためだ。
しかしまさか、我々の斜め上を行く内容だとは、この時は思わなかった。
◇◇◇
「秘密の物資の中身は、八ヶ城様の分霊。数は百八柱。それと新しい八百万の神が二柱。ずいぶん大盤振る舞いだぜ。」
場は思考無線会議。艦隊司令同士のいつもの佐官会議。本国の補給艦の積み荷には無かった物資。補給艦の艦長から直接手渡された巻物。暗号の巻物を解除しながら、八坂中佐は思考無線越しに会議に参加する。
「おぬしが解除しておる暗号の巻物、中身は航路の情報じゃな。別航路の情報じゃったな。」
浅間中佐は相変わらずお茶を飲んで会議に参加する。羊羹をおやつにつけて。
輸送艦艦長から渡された、別航路の情報。軍機にもあたる、機密情報と念を押されている。
「そうですね。閉じた世界を三つ省略できるほどの、近道と聞いています。しかし厳重な封印。ただの航路ではないと思いますが。」
諏訪中佐は遅めの昼食をとっている。内容は『携行食一型』。甘くないポン菓子のチョコバーを齧りながら、会議に参加する。
「別航路の情報は、その暗号の巻物の中だな。分霊達に聞いてみたが、詳細は分からずじまいだ。過剰なまでの機密管理。ろくでもない航路じゃなければ良いがな。」
靖國大佐は分霊達と直接顔合わせをした。その過程で情報収集したが、暗号の巻物の中身については、一切知らされていなかったようだ。
「ふむ。補給物資のまとめじゃが、半年分の糧食。そして悪魔機関用のウラン燃料。そして分霊と新しき神。そして中身が分からぬ暗号の巻物。別航路の情報じゃが、封印が強固なようじゃな。」
「ああ。しかも解除の手順を間違えると、中身が消える徹底ぶりだぜ。分霊をよこした件を考えると、ただ事じゃねえ航路だろうな。」
「この間、餓鬼界を通ったばかりです。今度は極楽浄土を経由するというのですか。」
「極楽浄土で済めばよいと思うのは、私だけだろうか。封印はろくなものが無い。相場でそう決まっている。」
佐官四名は各々想像を膨らませる。航路の変更に対して、情報の管理があまりにも厳重だ。
「ところで、開封は艦隊司令自身が行うのだな。八坂中佐、今からそちらに向かう。仕上げは私が行おう。」
そう言って私は、八ヶ城様の分霊を連れて、八坂中佐の所に向かった。
その中身を見た時、佐官達だけでなく、非戦闘員まで驚きを隠せなかった。
土星の衛星タイタンを経由する。そんな事、誰が信じられるというのだろうか。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は航路変更に関して、議論をぶつけ合います。
それではまたお会いしましょう。
追記:今後の投稿は不定期になるかもしれません。その場合、木曜日の21時に投稿になります。誠に申し訳ございません