第一〇話 2 厳重に保管された補給物資
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
「もへへ。補給艦と合流だねぇ。補給物資の確認は取れたかにゃ。」
「その補給物資だが、直接確認してくれと、相手さんは言っていたぞ。」
「ほへ。そりゃ機密かにゃ。厳重だと思わないかね、上級大尉。」
食料と燃料以外の補給物資の情報は不明。機密保持にしても度が過ぎると、吾輩は思う。一体どんなブツを積んできたか、こっちが警戒してしまう反応だ。
「確かに厳重だな。そこまでするブツを、拝みに来いという事だろう。」
「どんなものを積んできたか、楽しみだねぇ。そこまで言うにゃら、望み通り拝みに行くとするかにぇ。上級大尉。」
軍医殿が珍しく考え込んでいる。あるいはそのフリだろうか。いずれにせよ箱の中身も吾輩は気になる。どうせ帰還艦隊との合流には、時間がある。
問題のブツを先に拝むのも、役得という物だろう。
◇◇◇
吾輩は軍医殿の分霊戦闘機で、輸送艦に乗り移る。まず目についたのは、甲板にまで積み込んでいる、大量の食料。食料。食料。全て黄泉軍の戦闘糧食だ。
そして補給艦の後部甲板に着艦する。甲板には、艦長と思しき士官が一人。出迎えに敬礼している。
階級は少尉だ。その階級を見るにこの補給艦は、少人数で操艦しているのだろう。
人員は極力割かない方針か。あるいは単にそれだけの同胞で、事が足りるのだろうか。
それとも、帰還艦隊に編入するにあたって、あえて階級の低い人物が当てが割れたのか。
◇◇◇
「もへへ。この格納庫に問題のブツがあるんだねぇ。」
「ずいぶんな封印がしてあるじゃないか。ただ事じゃないな。」
輸送艦には所狭しと、戦闘糧食が置いてある。それこそ通路の一角も占めるほどだ。
帰還艦隊も似たようなことをやったが、糧食を一杯詰め込んできたものだ。
そして今、吾輩達は少尉の艦長に連れられ、格納庫の扉の前にいる。
注連縄にお札と、ただ事じゃない封印が施されている。それも悪魔の類ではなく、神霊に対する物だ。
「ほへ。それじゃあ封印を外して。開け、アジってかにゃ。」
軍医殿の指示に少尉は扉の封印を解く。そして重たい扉を、力いっぱい手動で開く。
封印を解除した、重い空気が破られた理力を乗せた独特な空気。それが格納庫から流れ出る。
格納庫の中には、黄金色の戦車が三両、入り口付近に鎮座していた。
以前本国が送ってきた、六〇式自走一〇六ミリ無反動砲。その車体を用いた軽戦車だ。
黄金石炭鋼製の戦車だ。そしてあまり性能が良くない。
理由は単純。黄金石炭は装甲材には向かない。鉄程度の強度があり、斥力のバリアも張れるが、それでも戦車に使うには向かない。
泊地島に送られた戦車。水陸両用車としては優秀だが、軽戦車としては頼りないのが本音だ。
二式軽戦車同等の戦闘力。それが泊地島士官の見解だ。泊地島で量産が見送られた車両が二両。もう一両は未知の重戦車だった。
軍医殿が吾輩に資料を渡そうとしているようだが、そんなものは目に入らなかった。なぜなら、吾輩は入り口にある黄金色のガラクタには、既に興味ない。
格納庫の奥は、大きな布切れで仕切られている。そしてその奥から、未知の神霊の気配を感じ取っていたからだ。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は戦車をガラクタと言わしめた、厳重に輸送された補給物資の正体に迫ります。
それではまたお会いしましょう。
追記:今後の投稿は不定期になるかもしれません。その場合、木曜日の21時に投稿になります。誠に申し訳ございません