第一〇話 1 本国補給艦と合流
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
靖國上級大尉の航海日誌
六二日。我が第一探査艦隊が、本国から派遣された補給艦と合流した。そして水先案内人という役割だろうか。第一探査艦隊が護衛を兼ねて、帰還艦隊に案内をした。
さてその中で驚く事が二つあった。
一つは航路の変更。大幅な航路変更になり、とんでもない場所を経由することになった。軍医殿に問いただしたが、どうも本国は本気のようだ。後はこちらの判断だろう。
前回の餓鬼界経由も驚かされたが、驚きの大きさは同じくらいだ。
そしてもう一つ。補給物資の内容だ。食料と燃料のウラン以外は、不明の補給物資の内容。現物を見たが、度肝を抜かれるとはこの事だろう。
以前士官と下士官兵士の雑談の中で、八ヶ城様の話もあったが、帰還艦隊に対する投資は、どうやら私財だけではないようだ。
◇◇◇
「もへへ。本国からの秘密の補給物資。ちょっとしたガチャ気分だねぇ。」
「ガチャとは何かは知らんな。玉手箱か何かか。」
「ほへ。玉手箱とは、面白い表現だにぇ。それも良いねぇ。」
軍医殿の言うガチャという物は良く分からないが、とにかく補給物資の内容に不明点がある。それらの確認を含め、我々第一探査艦隊が先行して、補給艦と接触する流れになった。
吾輩は艦外知覚装置を使い、補給艦を感知する。
遥か前方…は不明確だ。正確には北北西60キロの位置に、補給艦が航行している。12ノットでこちらに向かっているようだ。
補給艦と言うには大きく、まるで戦艦の大きさだ。このような補給艦があると素直に驚く。
突如、補給艦の姿が揺らぐ。艦外知覚装置で探知されている事に、気がついたのだろうか。探知を妨害する術を行使したようだ。
「観測していたが妨害された。軍医殿。発光信号で、こちらの所属と艦名を伝えてはどうだろうか。」
「もへへ。そりゃいいかもねぇ。無線封鎖もしているようだし、日本語のモールス信号。光で打ってみようかにゃ。」
「了解。船務長。発光器でモールス信号を打電。内容は所属と艦名だ。何度か繰り返して打ってみてくれ。」
吾輩は部下に指示をして、その結果を待つ。大体一分くらいだろうか。船務長から報告が届く。
「艦長。補給艦から返信。『我、113号補給艦。帰還艦隊との接触を望む。』返答はいかがしますか。」
「返答はこうだ。『了解した。我が艦隊と合流して、我が艦隊の護衛の下、帰還艦隊と接触する。』とだ。」
「了解。」
船務長の仕事を横に、吾輩は仕事の本番に備え、艦長席に深く座り込み、軽く目を閉じて休息した。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は補給艦と合流します。
それではまたお会いしましょう。
追記:今後の投稿は不定期になるかもしれません。その場合、木曜日の21時に投稿になります。誠に申し訳ございません。