表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第九話 決戦。ミサイル艦隊対帰還艦隊。
116/134

第九話 21 泊地島の拒絶反応

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。

 場所は銀山の戦闘指揮所。靖國(やすくに)上級大尉は艦長席に腰を掛ける。先ほどまで自室で、自家製薬草や霊薬(れいやく)を用いて、艦隊戦と護衛時の疲れを癒していた。


 靖國上級大尉が席に着いた直後、押し殺したような独特の気配を感じる。間違いなく軍医の物だろうと確信し、背後に顔を向ける。


「もへへ。地獄の囚人の艦。航路は順調かにゃ。」


「船務長。地獄の囚人の艦の現在の状況、それと念のため、泊地島の状況を教えてくれ。」


 靖國上級大尉は、定型文ともいえる台詞を言う。


「現在、泊地島に向かって順調に航行中です。泊地島(はくちとう)の動向も特に変化なく、いえ、穢れの発生を確認。囚人の艦の前方に密集。形を形成しています。」


 船務長の報告に、戦闘指揮所の空気に緊張が走る。


「第一種戦闘配備。砲雷長。各兵装発砲準備。航海長。進路変更、取舵。」


 靖國上級大尉の突然の戦闘指示。艦内に警報が鳴り響き、蜂の巣を叩いたように大騒ぎになる。


 靖國上級大尉は艦外知覚装置で艦の外を知覚するのと同時に、摩訶不思議(まかふしぎ)装置の端末の錫杖に手を伸ばす。軍医は足音も立てず、船務長の席のそばまで早足で向かい、観測装置をのぞき込む。


 靖國上級大尉は、“遠目”の術で、囚人の艦艇を観測する。穢れは複数の武装した艦艇に姿を変える。いずれも帰還艦隊の艦と酷使している、武装した艦艇だ。それらが、聖域を守護する守護者のように立ちはだかる。


 そして当然のように穢れは、囚人の艦艇に発砲する。ボロボロで武装も破壊された囚人の艦艇は、右往左往して回避行動をするが、弾幕の前にあっけなく撃沈。地獄の囚人達の断末魔も、しっかりと観測する。


 そして穢れは消滅し、忘却の川は何事も無かったように静まり返った。



◇◇◇



「以上が、銀山が観測した囚人艦の末路だ。泊地島は地獄の囚人に対して、拒絶反応を示した。」


「ふむ。泊地島は地獄の囚人を拒んだかの。良かれと思った事が、この手は使えんのぉ。」


 場は艦隊間の思考無線会議。靖國大佐の報告に浅間中佐はお茶を一啜りする。会議の場は、相も変わらずお茶会現場のようだ。


「もし同じことが起きたら、別の手を考えるか。いっその事一思いに、とどめを刺すか。一応答えを出しておかねえとな。」


 八坂中佐は半分独り言のように呟く。顎と頬につけて、考え込んでいるように見える。


「逃げの一手も考えておきましょう。話を戻しますが、本国からの輸送艦との接触は…。」


 一同は元の補給艦の話題に戻る。地獄の囚人の末路。起きてしまったことは仕方なく、善行で勧めた事の結末。これ以上思いつめる話では無い事は、会議の場にいる者達の、共通認識であった。



ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


次回は次の話に進み、本国の補給線と合流します。


それではまたお会いしましょう。


追記:最近忙しくなってきたため、今後の投稿は不定期になるかもしれません。その場合、木曜日の21時に投稿になります。誠に申し訳ございません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ