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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第九話 決戦。ミサイル艦隊対帰還艦隊。
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第九話 19 堕天使搬送

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。

「堕天使さんの護送。ごくろうさん。上級大尉。」


「疲れだな。精神的にだがな。」


 あの後吾輩(わがはい)は、軍医殿の代わりに堕天使を護送していった。無論、数人の白兵戦要員と共にだ。幸か不幸か、大した力のない堕天使で、吾輩一人でもなんとでもなる堕天使だった。


 吾輩自身は終始監視をしていたが、部下の上等兵に命じて雑談をさせた。


 そこで判ったのは、この堕天使は元能天使で、正確には堕落したのではなく、人間達に失望して自ら天使の役職を放棄した、俗に言う降天使(こうてんし)という者だ。


 しかしそれに後悔して、今回の鉄砲弾役に志願したという事だ。


 本国では例外的に、堕天使の亡命を条件付きに行っている。


 その条件は、八百万の神の一柱として、黄泉軍のために働くことだ。


 そうなると当然、堕天使ですらなくなる。意外とそれに、抵抗感を示す堕天使は多い。


 その条件を軍医殿が伝えた時、堕天使は即答しなかった。恐らく、天使への回帰に未練があるのだろうか。



 捨て駒に使われた時点で、事は知れているだろうに。



 まあ、そんな心象は吾輩には関係ない。差し当たっては旗艦に送り付けて、後の事は上官達に任せるだけだ。


 旗艦希望に着いた時、靖國(やすくに)大佐じきじきの出迎えであった。


 恐らく、堕天使の戦闘力を考慮して、という訳でもなさそうだ。多分興味本位だろう。


 吾輩以上の実力を持つ白兵戦要員。旗艦希望にも三名配備されている。


 もっとも靖國大佐には護衛が必要ない。単純な戦闘能力の関係から、白兵戦要員が逆に護衛される始末だ。


 靖國大佐単騎で、著名な天使達と互角に渡り合えるとは、本国の分析結果だ。それがどこまで本当か、吾輩には分からない。


 とにかく、靖國大佐に堕天使の受け渡しを行う。これで吾輩の仕事は終わりだ。


 あとの政治的茶番などは、上官達に任せれば良い。そう思い、軽く精神的に疲れた体を伸ばし、銀山に帰還する中で残された地獄の囚人の処置を、どうするのかと思っていた。


「んで、通信士さん。泊地島(はくちとう)の座標をあっちの船に送ってちょ。」


 残った地獄の囚人の処置。それは吾輩にはいささか意外な事だった。なんと上層部は、泊地島の座標を教え、そこで住まうように伝えた。


 確かに吾輩たち自身が捨てた故郷だが、そこに地獄の囚人に住まわせる。当然少なからず反論があったが、上層部のある一言が、反対派の反論を表面上黙らせた。


 これは、地獄の囚人達に対する慈悲で、我々が行う善行だ、と。


 つまり、我々泊地島の住民が地獄に行かないための、善行と言う名の保険だ。


 そんな事を考えながら、艦外知覚装置越しに、地獄の囚人たちが乗った艦が去っていくのを観測した。


ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


次回は、上官達の会話になります。


それではまたお会いしましょう。


追記:最近忙しくなってきたため、今後の投稿は不定期になるかもしれません。その場合、木曜日の21時に投稿になります。誠に申し訳ございません。

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