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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第九話 決戦。ミサイル艦隊対帰還艦隊。
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第九話 18 堕天使一柱ご案内

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。

 軍医殿と堕天使の交渉をしているのをよそに、吾輩(わがはい)は周りを警戒する。堕天使の言葉は異国語。恐らく英語だろうが、吾輩はゲーム内の英語も理解できない。


 ふと、艦橋の扉に目を向ける。数名の地獄の亡者が、こちらをのぞき込んでいる。


「ほへへ。金の腕輪かにゃ。もへへ。こりゃ純金かにゃ。浅糟(あさかす)軍曹。奪衣婆(だつえば)の術を使ってちょ。」


「間違いなく純金です。これ、どうするのですか。」


 浅糟(あさかす)軍曹が吾輩の術を行使しながら言う。術で純金を確認したようだが、吾輩の知らない術だ。金の純度を調べる術だろうか。奪衣婆が物の価値を見定めるのに、便利そうな術だ。


「上級大尉。この金腕輪。ちょっち見てくれないかにゃ。」


 吾輩は、軍医殿の差し出した金の腕輪を見る。


 綺麗な花の細工が施してあり、紅玉、藍玉、翡翠(ひすい)、真珠に玉髄(ぎょくずい)。ところどころに華美で無駄な宝石がちりばめられている。


 悪趣味ではないが、吾輩の好みではない。これが吾輩の個人的感想だ。


 そして手に取るまでも無く、この腕輪には理力が籠っていない。無論、神の力などもだ。正真正銘の、ただの装飾品。これを売ればいくらになるか。


 少なくとも、金貨一枚では済まないだろう。金貨一枚の渡し賃に対して、十分すぎる対価だ。


「理力も神の加護も感じないな。見たまんまの、悪趣味で高価な腕輪だ。金貨百枚くらいの価値はありそうだな。」


 吾輩は、少し過大評価気味に言う。軍医殿に理力や神の加護が無い事を伝えると、軍医殿は軽く頭を()く。


 それにしても、あくまでも政治的な茶番のはずが、風向きが怪しくなってきた。


「もへ。靖國(やすくに)大佐。ちょっち面倒な事になっちゃったよ。どっすっかにゃ。」


 軍医殿が無線機を使って通信をしている。想定外の事態に、上層部の指示を仰ぐ。


 その間にも吾輩と白兵戦要員は、堕天使と地獄の囚人の双方に、睨みを利かせる。


 気のせいか、地獄の囚人の動向が不穏だ。堕天使と軍医の交渉を見て、不穏な空気を(かも)し出している。


「もへへ。プランD。」


 軍医殿が命令を下す。吾輩を含む白兵戦要員に緊張が走る。


 白兵戦要員を含む我々は、少し前に出て軍医殿達と堕天使の前に出て、各々の得物を構える。吾輩も右手に功労勲位杖(こうろうくんいじょう)。左手に宝石のような巨大な盾を構える。


「もへへ。それならしょうがないねェ。一名様ごあんなぁい。」


 その声が響いた瞬間。不穏な空気は一気に弾ける。


 地獄の囚人が憤怒(ふんぬ)の表情で、こちらに一斉に走ってくる。


 吾輩は“炎の壁”の術に(けが)れ払いの炎を乗せて、青く輝く炎の壁を発生される。


 他の白兵戦要員は後退しながら、ある者は大口径の小銃を構え、艦橋からのぞき込んでいる地獄の囚人を、的確に狙撃する。またある上等兵は、10ゲージ散弾銃のドラゴンブレス弾で、浄化の炎を面攻撃でばら撒く。


 吾輩は、無謀にも“炎の壁”を突破してきた地獄の囚人を、功労勲位杖の一振りで叩き伏せる。

そして、わずかな攻防の隙に、軍医殿は堕天使と浅糟軍曹を大発に避難させる。


 吾輩達白兵戦要員も、すぐさま大発に乗ると、軍医殿は大発を急いで発進させる。


 そして、大発が敵艦から離れると、銀山の機銃座から支援攻撃が行われ、甲板上にいた地獄の亡者を容赦なく薙ぎ払う。


 吾輩達が銀山に乗艦した時には、これらの騒ぎは収まって、地獄の囚人達は艦の中に籠って、こちらを窺うだけだった。






ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


次回は、政治的茶番を終えた後の話になります。


次回の投稿は七月十三日になる予定です。


それではまたお会いしましょう。


追記:最近忙しくなってきたため、今後の投稿は不定期になるかもしれません。その場合、木曜日の21時に投稿になります。誠に申し訳ございません。

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