第九話 14 現代艦の装甲はブリキ缶のごとく
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
戦艦『崎の岬』と『箱舟の岬』も砲撃を開始する。戦艦の四六センチと三六センチ砲弾が、ブリキ缶の装甲の現代戦の艦を襲う。
砲弾が摩訶不思議な誘導の元、正確に敵艦の着弾するために向かう。そして着弾直前に、泊式対空砲弾が爆発する。
泊式対空砲弾。徹甲弾とは違い、近接で爆発する仕組みになっている。焼夷弾と衝撃と破片を用いて敵航空機を落とすのが、本来の用途である。
特徴として破片が均等に分解する。そして衝突すると、進行方向に破片が蒸発しながら、装甲を焼き切る仕組みになっている。
理力工学による設計だが、詳しくは本国にも秘密にされている技術である。
本来、泊地島で戦艦専用に開発されたもので、噴式戦闘機を落とすために開発されそれと同時に対地攻撃するための、有効な手段と期待されていた。
しかし、いざ実戦を行うと、相手は穢れが多かった。さらに航空機には、理力砲の遠距離攻撃の方が効果的だと判明した。そして対地攻撃は、摩訶不思議発生装置でどうにかなる事が分かり、戦艦の泊式対空砲弾は無用の物となった。
そこで開戦前の短いやり取りの間で、戦艦の通常弾を温存する話になった。そして泊式対空砲弾を使用の決め手となったのは、誘導弾仕様の軍艦に、ろくな装甲が無い事が判明したからだ。
戦艦の通常弾を温存し、巡洋艦の砲撃でとどめを刺す。その方針で作戦内容の細部に、変更が加えられた。
そして上層部の思惑通り、ブリキ缶の敵艦の船体は、蜂の巣のように穴が開く。焼夷弾が船体に被弾して、焼夷弾の燃料が火災を発生させる。船体は燃え上がり、炸裂の衝撃が船体を揺らす。船体を曲げると同時に、精密機器を揺さぶり故障を続発させる。
無数の破片により、電探をオシャカにし、射撃統制システムの外付け装置を、ズタズタにする。
戦艦の泊式対空砲弾で敵戦闘艦を炎上させる。次に巡洋艦の砲弾が飛来してくると、敵艦の混乱はさらに大きくなる。巡洋艦の通常弾を用いて、確実に敵艦を仕留めていく。
ある敵艦は、垂直発射装置に艦砲を食らい、動作しなかった誘導弾に命中し、大爆発を起こす。また別の艦は消火装置が作動せず、船体に火災が広がり、軍艦包みの囚人焼きが出来上がる。
別の艦では、艦橋構造物の上から白旗を振りながら、わずかに残った非常電源で、5インチ主砲で応戦する珍事が発生する。当選そんな不届き者には、旗艦希望自ら、『副砲140ミリ三連装四基12問』の一斉射を、船体に叩きこむ。
この珍事に、靖國大佐は内心安堵する。この珍事を盾に、降伏を拒むことが出来ると判断したからだ。
「副官。旗艦を識別できるか。」
「はい。堕天使が乗っていると思われる『ロングビーチ級』が、敵旗艦と思われます。」
「そうか。旗艦以外の艦を殲滅せよ。」
そして確認するように、一言付け加える。
「白旗による偽旗作戦が確認された。各艦。白旗を無視して、敵旗艦以外を撃沈せよ。」
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は、敵艦隊を殲滅し、旗艦をどうするか。そんな話になります。
次回の投稿は六月八日なります。
それではまたお会いしましょう。