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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第九話 決戦。ミサイル艦隊対帰還艦隊。
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第九話 10 戦意ある艦長と、冷静な艦長

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


 救助要請を受けた銀山。艦尾の扉が開き、一〇隻の大発が発進する。黄金石炭鋼(おうごんせきたんこう)の大発は、速力一五ノットの全速力を出して、シケのない忘却の川を進む。


 大発船団を追い越すように、一人の皮鎧の姿が船団を跳び越す。


 気密服の魔法銀の皮鎧。靖國(やすくに)上級大尉だ。銀山の艦長自らが”飛翔(ひしょう)”の術で救援に向かっている。


 無論これは、上官である軍医の指示だった。


 無線機の類が壊れているためか、こちらの通信が届かない。悪あがきで無茶をしている艦長、そしてその部下を引っ張ってこい。それが軍医の指示だった。


 大発が向かう途中、駆逐艦(ひのき)の船体前部に誘導弾が再び命中し、爆炎を上げる。船体前部だったものが一気に水没し、逃げ遅れた三名の命の炎が消えたのを、靖國上級大尉は感知する。


 大発の乗員は内心戦々恐々しつつも、一秒も早い救援に向かうため全速力を出し続ける。



◇◇◇



「こちら、靖國上級大尉。艦長に告ぐ。すぐに退艦して、安全を確保せよ。」


 吾輩は“念話”の術を行使して、駆逐艦檜の艦長に語り掛ける。細かい位置を特定できなかったためか、艦長の周囲の人員にも、この念話が頭に響く。


「靖國上級大尉。我々はまだ戦えます。我らの戦意を持って、艦隊を守る所存である。」


 艦長は“念話”の術で返答をする。その意志は強く、また部下の戦意も高揚していた。


 吾輩はため息を吐きつつ、再度勧告する。


「愚か者。この命令は靖國大佐の命令だ。その鉄くずでは、もはやろくに仕事はできない。だが、乗員が生きていれば、必ず任務を全うできるだろう。ここでの戦死は許さない。それが靖國大佐の命令だ。」


 吾輩は、伝家の宝刀の上司の命令を突き出す。その直後、主砲の砲身が暴発して、砲身の先が菊状に広がって割れる。


 砲塔の内部は混乱状態にあるのを感知する。吾輩はため息をつき、再び“念話”の術で語り掛ける。


「艦長。砲の砲身が割れたぞ。この砲はもう使えないから、とっとと撤収しろ。」


 戦えなくなったことで、ようやく残りの乗員の闘志も収まる。次々と急いで砲塔から飛び出し撤収作業が始まる。そこに到着した大発船団が乗員の回収を行う。


 手早く撤収作業を終了させ、大発の船団が帰還を始めた直後、悪魔機関が暴発して浮いていた船体が沈んでいく。


 衝撃が大発を揺らし、大発に貼られた理力(りりょく)防御壁が、衝突した放射線により淡く青く光る。


 悪魔機関の暴発は、悪魔機関そのものが損傷していた証拠。あのまま戦闘を行っていたら、おそらく脱出時に犠牲者が出ていただろう。吾輩はそんなことを考えながら、一足先に“飛翔”の術で、巡洋艦銀山に帰還した。


 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回、ようやく敵誘導弾の飛来が止みます


 次回の投稿は、五月四日なります。


 それではまたお会いしましょう。

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