第九話 8 被弾現場。銀山第一主砲。
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
銀山の第一主砲に大きな穴が開く。二五ミリの黄金石炭鉱の斥力装甲は、求められた弾片防御の能力を超えた攻撃により、軽々と砕かれた。
対艦ミサイルの衝撃で銀山の念力防壁は四散し結界が敗れる。銀山は今、危機的状況にある。
そんな中、開いた穴を覗くと、二人の黄泉軍の影が映っていた。
◇◇◇
「痛いよぉ。」
二等兵の泣く声。左腕を押さえて痛みに耐えている。何とか立っているが、痛みで震えてよろよろと立ち上がる。
壁に穴が開き、装甲は景気よく吹き飛び、破片があちこちに散乱している。
電子装置である射撃装置の端末は、激しい衝撃で中身が飛び出て、使用不能になっているのが、一目瞭然だった。
砲弾を供給する自動装填装置は、奇跡的に無傷だ。しかし、外見上だけの見かけだけなので、これも使えるかどうかは不明だ。
そして二等兵は浅糟軍曹の姿を見て、絶句する。
浅糟軍曹の足元に、大きな血だまりが広がっていた。そして血が、一滴、また一敵と、血だまりに落ちていく
浅糟軍曹は立っていた。左腕には大きな金属片が食い込んでいる。そして応急処置と言わんばかりに、傷口に乱暴に傷直しの霊薬を塗る。
「軍曹。ご無事ですか。」
二等兵の問い。それは悲鳴に近かった。
「意識はある。多分大丈夫だよ。だから心配はないよ。それよりも止血を手伝ってくれないか。医療箱はあそこにある。」
そう言って二等兵をなだめて、医療箱を指さす。
二等兵は泣きながら、医療箱の中身を取り出す。
浅糟軍曹は内心の不安を押し殺し、上官としての責務を果たそうとする。
「伍長。上等兵。一等兵。弾薬庫の方は無事か。」
「こちら弾薬庫。こちらは全員無事です。衝撃はありましたが被害はありません。」
「けが人はいないのだな。」
「はい。たんこぶはできていますが、全員健在です。」
「そうか。それならよかった。」
慣れない手つきで、はさみで左袖を切っている二等兵をよそに、浅糟軍曹はホッとする。どうやら、地獄図はここだけだと認識する。
浅糟軍曹は不器用な止血を確認すると、金属片を引き抜く。金属片は簡単に抜け、血が徐々にあふれていく。
浅糟軍曹が傷薬の霊薬を傷口に塗ってから、涙が出そうな二等兵は、不器用に止血作業を行う。
「こっちはかなりやばい。すぐに衛生兵を呼んでくれ。僕も二等兵も負傷している。」
「了解。すぐに手配します。」
連絡を終えると、浅糟軍曹は空いた穴を見る。視界に入った一隻の駆逐艦にちょうど誘導弾が命中する。
◇◇◇
爆炎が遠くから確認できた。恐らく現場は、ここより地獄図になっていると、浅糟軍曹は思った。
「軍曹。味方の艦が。」
「大丈夫だ。我が艦隊は、簡単に沈みはしない。」
浅糟軍曹が断言したが、ここからでは様子が分からない。だが、念力防壁が剥がれるのが見えた。恐らく次は無いだろう。
浅糟軍曹はそんなことを考えながら、片手で二等兵の止血作業を手伝った。
◇◇◇
戦場では無数の閃光と、それに射抜かれる誘導弾の演劇が続いていた。そしてそんな中、もう一本の対艦誘導弾が忍び寄っていた。
そして再び味方の駆逐艦に対艦誘導弾が命中し、再び爆炎をあげた。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は、誘導弾が命中した駆逐艦の現場になります。
次回の投稿は、四月十三日になります。
それではまたお会いしましょう。