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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第九話 決戦。ミサイル艦隊対帰還艦隊。
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第九話 6 接敵

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。

 戦艦希望の戦闘指揮所内。緊張が張り詰めている中、靖國(やすくに)大佐は艦長席で精神集中をしている。


「艦長。敵索敵に引っかかりました。艦隊の乗員が慌ただしく動いています。」


 船務長から報告が入る。精神探査装置を使って集めた情報が、思考無線越しに伝わってくる。


 戦闘準備のためか、今頃慌ただしく動き回っているのだろう。外国艦隊の乗員の心情を見て回っていると、一つだけ異質な、地獄の囚人ではない、別の神霊のような存在を発見する。


「船務長。この乗員だけ、明らかに地獄の囚人とは違うな。詳しく調べてみてくれ。」


「了解しました。」


 靖國大佐は思考無線で、一つだけ異質な反応を示す。船務長は端末を用いて、情報を精査する。そして思いのほか早く答えが出てくる。


「艦長。指摘された反応、識別が終了しました。堕天使でした。精神探査を行った結果、どうやら指示を出しているようです。」


 地獄の囚人の艦隊で、ただ一人の堕天使。当然気になるのが心理という物だ。靖国大佐は一〇秒ほど思案したのち、立ち上がる。その手には、摩訶不思議(まかふしぎ)装置の端末の錫杖が握られていた。


 恐らく堕天使が艦隊の提督だろう。靖國大佐は即座に結論付けていた。


「各員。これから外国艦隊と接触を試みる。各員はいつでも戦闘が開始できるようにしておけ。」


 そう言うと靖國大佐は“念話”の術の行使を始めた。



◇◇◇



 沈まない夕焼けを進む、三〇隻もの大艦隊。タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦に、スラヴァ級ミサイル巡洋艦。いずれも原子炉搭載型に改造してある。


 そして艦隊の中央にただ一隻だけ、四角く不釣り合いな艦橋を備えた、原子力巡洋艦が航行している。


 原子力ミサイル巡洋艦『ロングビーチ』。米国が開発した、世界で初めての原子力水上艦だ。無論、内装は大改装されている。巨大な艦橋にふさわしい、電子戦使用に変貌を遂げている。


 そして『ロングビーチ』のCICに一人の天使が、艦長席に座っている。一見すると、天使に見えるその男。神が愛情を注ぐ人間に対して、嫉妬した罪により天界を追われた、元天使だ。高圧的に地獄の囚人に指示を下していた。



◇◇◇



 靖國大佐は精神探査装置の情報を元に、“念話”の術を用いて、堕天使の思考に語りかける。


「こちらは、靖國帰還艦隊。根の国の黄泉軍の国に帰還する艦隊だ。貴艦の所属を明かされたし。」


 語りかけられた堕天使は、驚き戸惑っている。靖國大佐にはその感情を感知で来た。


 しかし帰ってきたのはそれだけで、後は雑音の入った思念だった。


 距離が遠いのか、使っている言語が違うのか。意思疎通がうまくいかない。靖國大佐は腹の中でぼやきつつ、交信を続ける。


「もう一度言う。我々は靖國帰還艦隊。根の国に帰還する、黄泉軍の艦隊である。そちらの所属を明らかにされたし。」


 戸惑っていた堕天使は、戸惑ったまま指示を飛ばす。使っている言語が異なるためか、靖國大佐には詳細は分からなかった。だが、感情は攻撃的な物に塗り替えられ、己を鼓舞しているように見えた。


 そして靖國大佐の質問に対し、『殺す』という意思が返ってくる。その感情は、獲物を見つけた狩人。その表現がぴったりと合った。


 靖國大佐は即座に舌打ちをし、“念話”の術を中断する。そして一瞬ののち、簡素で明確な指示を飛ばす。


「総員、戦闘開始。迎撃準備だ。敵誘導弾が飛来してくるぞ。」


 靖國大佐が支持を飛ばした直後。船務長がレーダーで、外国艦隊が発射した誘導弾の発射を確認した。



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は、外国艦隊と戦闘が開始されます。


 次回の投稿は、三月三〇日になります。


 それではまたお会いしましょう。


 追記:今後は多忙になるため、週一の投稿になるかと思います。もし余力があれば、過去のような、週二回の投稿にしたいと考えています。

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