婚約破棄されたら幸せになった
「俺はここにエレナ・レンドヤとの婚約を破棄する」
そう宣言した皇太子、フィリップ・レンティウス腕の中には私ではない女性。
最近皇太子と噂になっていたカノン・ファンルドがいた。
ちなみに私はカノン・ファンルドでは無い。
王太子に婚約を破棄すると言われているエレナ・レンドヤだ。
皇太子と婚約したのは12年前私が4歳の時だ。
皇王の母親つまりこの国の皇太后様が私を気に入って王太子と結婚させようとしたからだ。
この国の政治は皇王だけでなく皇后も政治に参加するため私は6歳の時から休まずに勉強してきたのに…
「お前がカノンにしてきた悪行はここに証拠がある。なぁジョージ」
「ええ、あなたがカノンに行ってきたこと全てこの書類にまとめてあります」
ジョージ・ アルマリスに渡された書類を読むと私が彼女に水をかけたり階段から突き落としたり等、まるで昔流行った恋愛小説のようないじめが書いてあった
「…それは本当に私がしたことでしょうか?」
「何だと?」
「…確かに私は彼女に注意をしたことはあります。しかしそれは当たり前のことですわ。この国の皇太子殿下に対して敬称も付けず名を呼ぶことは例え皇太子殿下の許可がありましても言語道断でございます。また、目上の者が許可するまで話しかけるのは無礼でございます。他にも…彼女は淑女としての作法が身に伴ってはおりません。私は作法について注意したことはございますが」
「そんな!私に酷いことをしたのを無かったことにするのですか!そんなの酷すぎます!」
キッと私を涙目で睨みつける彼女だが私は痛くも痒くもないのだ。
「…あなたは私がいじめたなどと仰っているみたいなのだけど…私があなたをいじめて何になるのかしら?」
「へっ?」
ポカンとした顔をする彼女だが私には関係ない。
「だっていじめるということは私があなたに何か負けているという意味でもあると思うのだけれど…あなたのどこが私に勝っているというのかしら?」
「そっそれは…」
確かに彼女は可愛らしい顔をしている。
だけど私は皇国1の美女サリーナ・レンドヤの娘なのだ。
髪の色はお母様とは違いお父様、カルア・レンドヤと同じプラチナブロンドだがそれでも美しいと思う。
それに勉強も女性の中では1番だし淑女としての勉強も皇后様から褒めていただいているほど優秀なのだ。
対して彼女は勉強も出来ず淑女としても未熟…そんな彼女に負けるなんて思っていないもの。
「あっ、あなたは私と違ってフィリップ様に愛されていないもの」
これがあった!みたいな顔でふふんと自慢げに彼女は伝えるが別にどうも思っていない
「それがどうしたのかしら?」
「っどうしたのってあなたお后様になるんでしょ?ならフィリップ様を好きに決まってるもの。なのに愛されていないから私に嫉妬して『別に王太子殿下に恋愛感情を抱いてなどいませんわ?』えっ?」
この女は何を言っているのでしょう?
私の今までの言動を見ていたらこうはならないはず
「おまっ、お前俺の后になりたがってたくせに何言って」
「…私は皇太后様そして皇后様に望まれて皇太子殿下の婚約者となりました。私はお2人が大切でしたのでこの婚約を受けさせて頂いただけです。別に皇太子殿下に恋愛感情はありませんわ。…私は先日皇太后様皇后様…そして皇王陛下に懺悔致しました。」
「それはカノンをいじめたからだろう?」
「…違います」
「私もエレナ・レンドヤと一緒に懺悔に行きました」
「ディーン!お前どういうことだ」
皇太子に全て告げるとディーン・クレナスが私の隣にきた。彼は私の後ろにいたのだ。
私の言いつけを守っていたのに私の隣に来てしまった
「…私は未来の皇后。愛するのは国民と陛下となる皇太子殿下だけ…ですが私は恋に落ちてしまいましたの。それがディーン・クレナス様です」
「私もです。私…いや、俺は将来この国の剣となる身、ですが彼女にエレナ・レンドヤに恋に落ちてしまったのです。」
そうだ、私が彼女に嫉妬するわけがないのだ。
私が恋しているのはディーン・クレナス彼のみだ。
初めてあったのは皇太子殿下がディーンに私の警護を頼んだという顔合わせの時だった。
初めは真面目な方としか思っていなかったが彼と一緒にいるうちに彼のことを随分と知ってしまった。
顔が強ばっているようにみえるがただ緊張しているだけな事。
ああ見えて甘いもの好きな事。
少しからかうとすぐ真っ赤になってしまうこと。
彼は誰にでも優しいこと。
そして
「エレナ」
私を呼ぶ声がとても甘くて…そんな彼に愛おしいとさえ思ってしまった。
「全て懺悔致しましたわ。…皆様私達のいままでのことを許して頂きましたの。この卒業パーティが終わったら私たちはもう一生会うことは出来ません。ただ、来世で結ばれる許可は頂きました…私はそれでもう思い残すことはないのです」
この国では貴族の嫁となるものは真っ白な身でなくてはならない。だから彼と身を繋げることは出来なかったがそれでも私は愛されていた。その思い出だけで十分だった…
「ですので私は彼女をいじめる意味がないのです」
「っ、だがこうしてカノンが『これは一体何事だ』っ、父上」
最初からもう一刻も経っていた。
そのため来賓である皇王陛下と皇后様、皇太后様。
そしてこの国の宰相である私の父が来てしまったのだ。
「フィリップこれは一体どういう事なの?」
「お祖母様…実は『聞いてください皆さん』っカノン?」
「私、カノン・ファンルドって言います。実は私…っエレナ・レンドヤさんに虐められていて…フィリップ様に助けて頂いたんです…ぐすん」
彼女は入ってきた来賓の皆様が席に着く前に突進して行った…何をしているのかしらあの女
「…フィリップ…誰ですかこの作法のなっていない女は」
「母上っ、これにはわけが『 国王陛下、サンドラ侯爵が娘シャーリー・サンドラが皆を代表致しまして懺悔を申したいのでございます。このようなお祝いの場ではごいますがどうかお聞き頂けないでしょうか』おいお前ら」
今まで傍観していた者が乱入して陛下に懺悔をと言っているがどうしてこの場でなのかしら?
なんて不思議に思っていると思いがけない内容だったのだ。
「許そう」
「ありがとうございます。…私たちはカノン・ファンルドをいじめておりました」
「ほぅ…それはどうしてだ?」
「私は私たちは許せなかったのです。この国の未来の皇后であるエレナ・レンドヤ様を大切にせずカノン・ファンルドを愛する王太子殿下を…そしてカノン・ファンルドを…」
シャーリー様の懺悔で私がやったと言われた内容が彼女たちが行ったということがわかった。
私自身が慕われると思っていなかったから私の味方が居てくれて嬉しかった…
「エレナ様はどんな方にもお優しい人です。学園に入った当初平民が入る事を許せなかった私は平民に優しくするエレナ様にどうして優しくするのか聞きました。エレナ様は不機嫌も隠さず嫌気をさしている私にこういいました。」
『私は愛さずに居られないのです。皇太后様や皇后様、そして皇王陛下の愛するこの国を…国民を。あなたにもきっといつかわかる時が来るわ…この国を愛していると思う時が』
「最初は分かりませんでした。あんな方が未来の皇后になるなんてとも思いました。ですが私は彼女の思いを知りたかった…エレナ様に頼んで領地の視察に着いて行きました。その時私は知ったのです。私たち貴族が作っていると思っていたこの国は国民が作っているのです。階級隔てなく接するエレナ様と彼らを見て私は確信致しました。あぁこれが彼女の見ている景色、国民を愛するということを。今までの自分を恥じた私は誓ったのですこの国の未来の皇后エレナ様に今まで以上に国を愛して貰えるよう力を尽くすと」
「シャーリー様…」
私は知らなかった。あの時彼女は確かに平民を嫌っていた。でも視察に着いてきたいという彼女は今までと違っていたから同行を許した。
まさかそんなに思ってくれていただなんて…
「私はエレナ様を大切にしないお2人が嫌いです。例え皇太子殿下への不適切な発言で処刑されたとしても私は守りたかったのです。だからカノン・ファンルドが淑女としてありえない行動をして皇太子殿下に愛想をつかされるのを待っていました。…ですがそれで皇太子殿下に婚約破棄を宣言されるとは思っては見ませんでした。『なんだと!』…以上が私の私たちの懺悔でございます。お聞き下さりありがたき幸せでございます。」
「シャーリー様…私のために…ありがとうございます」
私は皆と平等に付き合って来たけれど私自身ではなく、未来の皇后として見られているのは知っていた。
だから私のためにと発言してくれた、私自身を見てくれたのが嬉しかった…
「…そなたのお陰で色々と知ることができた。…感謝する。フィリップお前どういうことだ!エレナ嬢との婚約を破棄すると言うのは!」
「エレナはカノンをいじめていたのです!身分の差を使いいじめるのは言語道断で」
「いじめていたのはエレナでは無かったではないですか!あなたは一体彼女の何を見ていたと言うの!」
「おっお祖母様…」
「フィリップあなたは…っごめんなさいサリーナ、まさかフィリップが…あぁ」
「っ皇后様お気を確かに!」
皇后様が顔を真っ青にし倒れかけ、慌てたお母様と近くにいた下女が駆け寄ったが酷い顔色のため椅子に座らせたみたい。
「フィリップ貴様…学園の間だけのお遊びだと思っていたらっジョージお前もフィリップのお目付け役として学園の通っていたのだぞ!それがどういうことだ!エレナ嬢がいじめだと?普段の休日はほぼ皇宮に来て后としての勉強をし、空いている時間があれば領地や街に視察に行っているのだぞ?学園内にいたとしてもディーンの他にお目付け役として数名暗部のものをつけているのだ。学園内では彼女が何をしているか筒抜けだったのだぞ?お前が遊んでいる間にっっ…お前はどこを見ている!」
「ちっ父上!」
皇王様も私のことを見ていて下さった…
私の努力は無駄では無かったのね…
「…お前には失望した…この場にいるものに告げるフィリップ・レンティウスを廃嫡とし、第2皇子 ランスロット・レンティウスを我がレンティウス皇国の皇太子とする。尚、ジョージ・アルマリスを研究院に送りその他の場所に行くことを禁ずる。そしてカノン・ファンルドを国外追放とし、我が国に立ち入ることを禁ずる」
「どうして私が国外追放にならなければならないの!フィリップ様助けて」
「衛兵連れて行け」
「「はっ!」」
最後は呆気なく私の婚約破棄は終わった…
「父上俺にもう一度機会を『フィリップお前はサリマンの預かりだ』ヒィっ」
サリマンというのは皇弟殿下で皇位継承権はとっくの昔に破棄しており、現在は軍部で第1線で戦っている、武術にはとても厳しい方である。
そんなところに甘ったれな皇太子が行ったらもう帰ってくることはできないだろう。
「…エレナ嬢本当にすまなかった」
「そんな…頭をあげてください皇王陛下」
「まさかフィリップがあんなに馬鹿な子だったなんて…エレナ本当にごめんなさいね…」
「良いのです。皇后様…私は懺悔するほど悪いことを致しました。罰が当たったのです。」
私がちゃんと皇太子殿下を愛する事が出来たらこうならなかったかも知れない
「いいえ、あなたは何も悪くないわ…皇王陛下…私は皇太后としてエレナに機会を与えたいと思うのです。今世でディーン・クレナスと愛し合う権利を」
「皇太后様!」
「そうですね母上。皇王として告ぐエレナ・レンドヤそして、ディーン・クレナス2人に今世で愛し合う権利を与えよう。」
「皇王陛下!」
「エレナ嬢…今まで済まなかったね…これからは幸せになるのだよ」
「陛下!本当にっ本当にありがとうございます」
まさかディーンと愛し合う権利を頂けるなんて思っても見なかった。
「ディーン…」
嬉しさが極まってディーンの方を見るとディーンがこちらを見て膝まづいていた。
「エレナ・レンドヤ様…私の婚約者となって頂けますか?」
とても…とても真剣な顔。
きっとこんな顔を見ると子どもは怖がって泣いてしまうのでしょう。
でも、私はわかっているこちらに差し出すては少し震えていて耳は真っ赤になっているもの
「…ねぇ、ディーン私からの返事は1つしか無いのよ?…慎んでお受け致します」
「「「キャー!」」」
「っエレナ」
「きゃ、、もうみんなの前で抱き上げないでよディーン!」
「すっ、すまない嬉しさで極まって…」
「エレナ…」
「お父様!」
先程までこちらを見ていたお父様とお母様が声をかけてきた。
「…レンドヤ公爵。私はクレナス公爵が息子ディーン・クレナスと申します。私は…エレナをエレナ・レンドヤを愛しています。私が彼女の婚約者となる権利を頂けますか?」
「お父様、お母様…私もディーンを愛しているの…だから『エレナ』お父様?」
「彼に幸せにしてもらいなさい」
「っ、お父様!ありがとう!」
「エレナちゃんおめでとう。好きな人に愛されてもっともっと綺麗なって」
「お母様、私幸せになるわ!」
「そうだ、ディーンくん?君確かに一人っ子じゃ無いよね?」
「はい、家を継ぐのは兄で他に下に妹が…」
「なら君が僕の後を継ぐんだよ?」
「え?」
「いやぁ、エレナが皇后になると思ってたからさ家を継ぐのを分家から養子を取ろうと思ってたんだけどね、まさかこうなるとは思ってなかったからさ!まぁ探さなくて良くなったからラッキーだよ!」
「もう!あなたったら!」
多分この瞬間で1番幸せなのは私だろう。
皇太子から婚約破棄され愛する人にも会えないと思っていたのにまさか愛する人と婚約することが出来るなんて!
「ねぇ、ディーン?」
「どうした?エレナ?」
「愛してるわ」
「っ…俺も愛してる」
初めての口付けはとても幸せな味がした
あれから私は正式にディーンと婚約をし、1年前に結婚している今は女主人としてすべき事をお母様から教わっている。私が女主人として勉強しているその間ディーンはお父様の仕事を継ぐべく勉強をしている。
現在皇太子殿下となった第2皇子のランスロット様とそして彼の婚約者となったディーンの妹エリザベスを支えるべく頑張っているのだ。
まだ継ぐのは早いと言われるが宰相は陛下が変わる前に交代しなければならない。
また我が公爵家では当主が50となれば領地に戻ることになっているため、現在はお父様37つまり後13年の間に宰相として働けるようにならなければならないし当主としての仕事もしなければならないから大変なのである。
でもディーンだけに任せることはしたくないので書類などの仕事は私も手伝っている。
皇后の仕事に比べればまだ軽い方だ。
たまに皇太后様や皇后様そしてエリザベスとお茶をしに王宮へ行ったり、エリザベスの未来の皇后としての勉強のお手伝いもしている。
私とは違いエリザベス達は仲良くしているらしい。
ただランスロット様がエリザベスを溺愛しすぎているみたいで現在14歳の彼女は子どもが出来たらどうしようなんて皇后様に心配されているみたい。
そんなこんなで忙しい私達だが愛するのは昔とは変わらない。
むしろ前より愛しいとさえも思う。
「ねぇディーン愛しているわ」
「急にどうしたんだ?まぁ俺も愛してるが」
チュなんてリップ音を立てながら私の頬に口付けるディーン。その仕草でさえも愛おしい
「でもディーンもしかしたら私あなたと同じくらい愛してる人ができてしまったの」
「…浮気か?俺がいるのに?」
「ふふっ、違うわよ。きっとあなたも私と同じくらい愛する人よ」
「どういう意味だ?」
きっとこれからも愛するのは変わらないだろう。生まれ変わってもきっと…
「あのね…この前体調悪くてお医者様に見てもらったら…」
読んでくださりありがとうございます!
誤字報告を受け早速直させて頂きました!
報告ありがとうございました!
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読みにくいとのご指摘でしたので改行をさせて頂きました。