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准教授と学生

作者: リップマン

-1-


軽く握った拳で3度扉をノックする。

2度のノックはトイレなどで使うらしく、こう言った場合に使うのはマナー違反らしい。たかがノックの数が2なのか3なのかで口煩く怒る人間などとは即刻縁を切った方が良いのだが、そうは言って居られないのが今の世の中である。無常。

「どうぞ」

低く、どこか優しげな雰囲気の声が中から聞こえる。

「失礼します。」


-2-


私の朝はこの一杯から始まる。ぬるすぎず、熱すぎず。専用の機械で固体を粉状にし、お湯を注ぐ…独特な匂いが部屋へ広まる。

「おっと、今日は少し欲張りすぎたかな」

これは私の独り言。いつもは2杯分作るところを2.5杯分作ってしまった。

「少し多いがまぁいいか」

ふと、ドアの方を見ると人影が見える。磨りガラスなので輪郭はハッキリしないが背の高さから見て男性だろう。ノックの音が3度する。最近の学生にしては珍しく3度ノックだな、などと思いつつ部屋へ招き入れる。

「どうぞ」


-3-


部屋中に広がる匂いに一瞬戸惑いつつ、歩を進める。

「准教授、実は課題でわからないところがありまして」

准教授の講義はわかりやすく面白い、だが課題でどうしてもわからないところがあったので相談に来たのだ。

「わかった、話を聞こう。でも立ち話もなんだからそこに座ると良い」

准教授が指差したのは柔らかそうな茶色のソファー。実家のソファーは硬い、人の好意を無下に出来ないこともあり、お言葉に甘えることにした。

「失礼します。」


-4-


学生は最近の学生にしては礼儀正しい方だなと素直に感心した。座る時までわざわざ言うのは珍しい。彼の体格からして、何かしらのスポーツをして居たのだろう、部活で受けた教育が染みついているのだろうか?少々やり過ぎな気がするが、特に実害もないのでその事について考えるのは止める事にした。

そう言えば今日は少し多めに作ってしまったことを思い出す。わからない課題を直接聞きたのだ、折角なのだから1杯振る舞おうとコップを用意する。

「独特な匂いですね」

「わかるかね?私のオリジナルブレンドなんだ。本場まで足を運んでね、10年かけて辿り着いた味と匂いなんだよ。」

「10年ですか、長いですね…」

学生にとっての10年と私にとっての10年は恐らく少し感覚が違う。彼にとってはほぼ人生の半分だ。だが私にとっては…………


……


「年がバレるのでやめておこう。」

「はい?」


-5-


准教授は機械の方で何やらやっている。匂いから大体の察しはつく。幸い今日の講義は午後からなので時間はあるのだが、准教授の方はどうなのだろうか?

「砂糖、入れるかね?」

「あ、いえ、結構です。」

「そうかい?私は甘いのが好きでね…いつも妻からは砂糖入れ過ぎと小言を言われるんだ」

ははは、と大きなお腹を揺らしながら笑う准教授の様子には反省の色はない。糖尿病とか大丈夫なのだろうかと思いながら准教授を待つ

「どうぞ。」

目の前にカップが置かれる。

「冷めないうちに飲んだ方が良い。カレーと夫婦ほど冷めたらマズいものは無いからね」

「いただきます」

カップの中身は暖かそうに湯気を立てている。今は夏だがクーラーの効いている部屋なら丁度いいのかな、などと思いつつ、一口。







辛い。







辛い辛い辛い。








辛い!!!!!!!





舌が焼けそうな辛さ、とても人が飲むものとは思えない。

「ははは、だから砂糖を入れるかと聞いたのに」

准教授は笑いながら辛いソレを口にする。一体どれくらいの砂糖を入れているのだろう?あの腹を見る限りゾッとする量に違いない。

「…あの、准教授…これは一体?」

「うん?飲んでわからないかい?」


















「カレーだよ。」


-終-




くっだらないネタだろ?(笑)

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