表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

2.忍び寄る影






「そいつはお前、カレナ・エンジェリックといったら【漆黒の翼】のリーダーだぜ? 強くて当たり前だ」

「へぇ。あの女の子が、噂の……」


 今日の仕事もひと段落して、休憩に入ったところ。

 俺はパーティーのみんなに今朝のことを語って聞かせた。すると、いち早く反応したのはガイ。彼は二日酔いを醒ますためなのか、水で顔を洗いながら言った。

 こちらが納得すると、続いて会話に入ってきたのはリン。


「年齢はボクと同じで、十四歳だったと思います。それであの実力、アレだけ規模の大きなパーティーをまとめるんですから脱帽ですよ」


 彼はほんの少し、熱のこもったようなため息をついた。

 なにやら思うところがあるようだが、そのことは気にしないことにする。


「でも、言うほどまとまってるか? 昨日の酒場で、末端が暴れてたけど」

「おそらく、エレンが思っている以上に【漆黒の翼】は規模が大きいぞ? それなのに、ああいった程度のイザコザしか発生しないんだ。むしろ珍しいだろう」

「ふむふむ。なるほど、そんなものなのか……」


 俺が疑問を口にすると、今度はクレイスが淡々と答えた。

 そう言われると、たしかにそうなのかもしれない。昨日の今日ですでにトップに連絡が行き、処罰が下されていた。それは組織として優れている点、ということになるのかもしれない。


「そんなところから、勧誘がくるなんて! やっぱりエレンさんは凄い!!」

「リン……。もういいって、さすがに恥ずかしいよ」


 その話の流れで、またもやリンは俺のことを称えた。

 でも、正直それはもう忘れてほしいと、そのように思える。

 俺の願いはこの街、リリディアで静かに暮らすこと。『兵器』として見られていた日々からの脱却が目標なのだから、これ以上目立つのは勘弁だった。


「さて、それじゃ! そろそろ、もう一仕事しますか!」


 なので、俺はそう話題を逸らすことにする。

 するとみんなも同意して、装備を整え始めるのであった。

 そして俺たちは一路、ダンジョンをもう一つ下へと降りていくのである。



◆◇◆



 エレンたちがいなくなったのを確認して、ある一団が行動を開始した。

 その者たちが身にまとうのは、緑色をした身軽な衣服。袖や裾の丈は各々異なっているが、しかし共通しているモノがあった。

 胸に付けた、黒き翼を模したエンブレム。


 それこそは一大パーティー【漆黒の翼】の証だった。


「あの者が、エレンか……」


 その中でも先頭を行くものが、ふと確認するように口にする。

 すると後方に控えていた者の一人が、静かに進言した。


「容姿、特徴など――情報と一致しました」

「分かった。それならば、行くとしよう」

「はっ!」


 淡々としたやり取りのように思われた。

 しかし、それを打ち破るようにして先頭の人物は声を張り上げる。


「いいか! これは、カレナ・エンジェリック様直々の指令である!!」


 高い声は、女性らしいそれであった。

 風になびく緑の髪。それを手で押さえながら、彼女はこう言った。


「我々、第十一番隊の目標は――エレンを確保すること!」


 一度、そこで言葉を切り。


「そして、それ以外の三名――リン、ガイ、クレイスの抹殺である」――と。



 巨大パーティー【漆黒の翼】、その目的を。





「待っていてください、カレナ様。私がこの命に代えても……」





 第十一番隊――そのリーダーと思しき人物は、最後にそう呟いた。



 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ