第1章 北の王国編1
「今日は山のふもとまで行ったら拠点にしましょうか」
あれから数時間。私達はオーラを纏って走っていたが、あたりはすっかり真っ暗になっていた。
「そうだな。山はここより魔物の気配がつええ。ここら辺に構えるか」
「そうね」
私が頷くとシルヴァはあっという間に拠点の準備を済ませていた。流石2年間用心棒していただけのことはあるわね、と感心していた。
「日が出てきたらまた飛ばしていくからそのつもりでいなさいよ」
「へいへい。おやすみ〜」
そういうとシルヴァは速攻で眠りについていた。それを私は全力で叩き起こした。
「待ちなさいよ!」
「何だよ……」
大分だるそうにしているシルヴァをよそに私はエゴを貫く。
「私にオーラの使い方を教えてほしいの」
こいつに頼むのは悔しいけど、この非常事態に背に腹は変えられない。
「別にオーラ使えてるじゃん。俺が教えることなんてねーよ」
シルヴァはまただるそうに言う。確かに、オーラの強弱はあるにせよ私もオーラを使うことはできる。オーラというのは天性のもので人間で使えるものは10人もいないとされている。
ただ、魔物の魔力が強くなった今となっては魔王の幹部クラスにですら歯が立たないのが現状だ。
「私が知りたいのはその次のステージよ」
そう。シルヴァの風のオーラ。オーラには確かに次のステージが存在する。
「覚醒のことか。これは人によって違うらしい。自分の中にある気持ちのトリガーを引くことが条件らしいな」
覚醒というのね。悔しいけれど2年経っても少しも差を縮められた気がしない。それは、この間の戦いでも明らかで、私は何もできなかった。
「ちなみにあなたのトリガーはなんなの?」
「俺は何か勝手に出来てたな。天才なんで。じゃあ、おやすみ」
そういって、話をはぐらかし寝ようとするシルヴァに私は木刀を投げつけ、斬りかかった。
「うぉっと!」
驚きながらもシルヴァは咄嗟にかわしていた。
「寝ていいとはいってないわよ?」
「努力家っすね〜」
天才の煽りは中々にむかつく。
「魔王を倒す前にあなたを超えてみせる!」
そういうと、数時間黙々とシルヴァとの修行に打ち込んでいた。
翌日。
「おい、結局ほとんど寝れなかったじゃねえか」
ぐちぐち言っているシルヴァをよそに私は前を歩き山を登りだした。