第3章 集いし暗黒1
戦闘が終わった古代遺跡はまっさらな荒野の様な地帯に成り代わり、穏やかな雪が降っていた。
「クジャのいった通りギラルーン達を安全な場所に避難させてきたぜ」
白髪の少年はそう言うと後ろから姿を現わす。
「ありがとう。ただ、戦いはついさっき終わったところよ」
「ああ。凄い少女だ。あの闘いの最中にテレパシーを送り俺たちに指示を出すなんてな」
そう。クジャはスリガーとの闘いの最中、正確に言えば地面に散らばったカードを再び飛ばしたと同時にシルヴァ、ティナ、ラースの3人にテレパスを使い指示を送っていた。
それによって全員がベストなタイミングで動けていたというわけだ。ただ、テレパシーをオーラの力を使い飛ばすというのは容易なことではない。
「さて、目的の品が姿を現したようだな」
そう話すラースの方向を見ると紋章が施された漆黒の宝玉が宙に浮かんでいた。
「あれが、第2魔王の……」
「そうだ、あの代物は魔王の力を持つ者にのみ許される。感謝するぞお前たち」
そう言いラースは宝玉の方へ向かい歩き出す。だが、その刹那。この場に残された3人を謎の爆発と爆風が突如襲いかかった。
シルヴァ、ティナは後方へ吹き飛ばされラースはぎりぎりのところで防御壁を発動していた。
「それは貴様ごときが手にして良い代物ではないんだよ、第6魔王」
「そういうことである」
空を見上げるとそこにはベルーゼとゼルシアが姿を現していた。
「っち。厄介な奴らが来たな」
「それは私達が貰い受ける。散れ、紅炎の爆弾!!」
紅に染まる髪の毛をなびかせ彼女はそう詠唱し剣を突き立てるとあたり一面に赤白い光が現れそれは次の瞬間高熱を帯びて爆散していた。
「くっ、何て破壊力だ。前がまるで見えねぇ」
「ええ、ガードが追いつかない」
かろうじて回避とガードを繰り返し致命傷を避け2人は後退していた。
「第2魔王の宝玉、私が貰い受ける!!」
ゼルシアはそういうと宝玉の方向にものすごい勢いで向かっていく。
「俺の魔王の恩恵を魅せてやろう」
ただ、この男だけは凄まじい攻撃の前に微動だにしていなかった。
「ゼルシア!下がれ!!」
ベルーゼがそう叫ぶと同時に彼の力は発動する。
「追憶の魔法陣、発動」
ラースが右手を横に振ると遺跡の跡地から突如氷の大結晶が現れゼルシアを襲った。
「くっ」
天高く遺跡一帯に氷の大結晶がそびえ立つ。
「俺は紋章を描くことで自分のオーラを好きなタイミングで呼び出すことが出来る。例え数百年前に記憶させた力であろうとな。そして、それはここら辺一帯に記憶させてある。貴様らに万に一つ勝ち目はない、というわけだ」
「流石ね、この魔王の力をここまで使いこなせるのはきっと彼ぐらいのものでしょうね」
ラースの力を後方にてひしひしとティナとシルヴァは感じ取っていた。
「くそっ。助かったぞ、ベルーゼ」
「いえいえ。だが、これでもう宝玉は諦める他ないようですねぇ」
ゼルシアを脇に抱えベルーゼは冷静に遥か天空へ避難していた。
「さあ、魔王の力を纏いし宝玉よ。俺の力の糧となれ!」
ラースはその漆黒の玉を手中におさめ取り込む。すると、身体に異変がおこり力の暴走が彼を襲っていた。
「ぐあぁぁあぁあぁああ!!!!」
そして、辺り一面に氷の刃が広がる。力が暴走しているのだ。
「ティナ、逃げるぞ!」
「ええ!」
シルヴァとティナは迫り来る刃を避けつつ危機一髪のところで約1キロ先の岩場まで脱出することに成功していた。
だが、その場から観える景色は常識を逸脱していた。
「何よ、これ……」
ティナが驚くのも無理はない。シルヴァも声が出なかった。
薔薇のように氷の刃がそびえ立つ中心にいる彼のオーラは最早この2人ですら測れるものではなくなっていたからである。
そして、その空間では高らかに当人の高笑いが響き渡っていた。




