第1章 武術大会決勝編1
「あー、抜け駆けはずるいな☆」
「悪りぃな、クジャ。ティナを頼む」
「高くつくよ♢」
そういうとクジャはティナを抱き抱えて闘技場の外へ運ぶ。
「さぁ、シルヴァ。私の領域まで貴様は来れるかな?」
ギラルーンは静かに眼を光らせる。隣で王様はひたすら祈っている。
そして、大歓声の中決勝戦が始まった。
「いいのか? お前はティナとの戦いで大分消耗したはずだぜ?」
「ハッハァ! 舐めてんのか? この程度へでもねェ。テメェと俺じゃ天と地ほどの差があることを思い知らせてやるよ」
「そうかよ。……いくぜ」
お互いのオーラが激しくぶつかる。そしてその刹那。お互いの顔面に渾身の右ストレートが頬に埋まっていた。
ラッシュラッシュラッシュ、殴り合いが続く。
「よっと」
シルヴァはひらりとかわし後ろに回り蹴りをいれる。吹っ飛びつつオーラを打ち込む。
「風龍拳」
シルヴァはそのオーラを全て流れるような身のこなしで交わし黒夢のシルヴァに連撃を加える。
「かはっ」
黒夢のシルヴァは更に吹っ飛び瓦礫の山に埋もれていた。
「認めたくないけど、流石ね。私が歯が立たない相手にここまでの戦いをしているだなんて」
「んー、だけどまだ黒夢のシルヴァは何か隠してる。そんな気がするかな♢」
「どうしてそう思うの?」
目が覚めたティナはクジャと2人の戦いの行方を観ていた。
「女の勘かな♡ あ、君はゴリラみたいだから分からないかっ☆」
「ぶん殴るわよ。あといつまでお姫様抱っこしてるのよ! 離しなさい!」
「あはは☆ たまには王子の気分を味わってみたくてね♠︎」
そういうと、クジャはティナを下ろしゆったりと闘いを見物していた。
「悪くねェ攻撃だ。流石俺の偽物♪」
「本物でも偽物でもどっちでもいいけどよ。そろそろ本気でやろうぜ」
「そうだな。そろそろ獲物使ってヤルカァ」
そういうと黒夢のシルヴァは鞘から禍々しいオーラを放った刀を再びだす。
シルヴァも刀を手にとり更にオーラを高める。次の瞬間。オーラの斬撃を打ち合い、目にも止まらぬ速さで空中で闘いを繰り広げていた。
「らっ!」
シルヴァは剣を素早く振り抜き一瞬の隙をつき詠唱する。
「空の紋章!!!」
シルヴァがそう唱えると、黒夢のシルヴァに巨大な竜巻が胸に突き刺さった。
「ガァァ!!」
黒夢のシルヴァはまたも吹っ飛んでギャラリーに沈んでいた。
「シルヴァ、一回戦の時よりもキレッキレだね☆」
「ええ、恐ろしいほどにね」
2人にそう思わせるほどにシルヴァの力は想像以上に上がっていた。
「だが、それでも黒夢のシルヴァにそれじゃあ勝てない」
ギラルーンは静かにそう呟いた。